2017年3月6日月曜日

「メディアドゥが出版デジタル機構を買収」「合法的にマンガのコマをブログなどへ貼れるサービス」など出版業界関連の気になるニュースまとめ(2017年2月27日~3月5日)

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 毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、私が気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「メディアドゥが出版デジタル機構を買収」「合法的にマンガのコマをブログなどへ貼れるサービス」などが話題になっていました。


マンガの海賊版は「最新作の売り上げ減少」と「旧作の売り上げ促進」の2つの効果をもたらす GIGAZINE(2017年2月22日)


 1週前の記事ですが見落としていたのでピックアップ。記事の元になっているのは慶應義塾大学経済研究所の田中辰雄氏の論文……なのですが、本稿執筆時点では消えています。なにがあった。以前は「WinnyのようなP2Pソフトウェアの存在が音楽ソフトの売上に全く影響しないこと、あるいはむしろプラスの影響を与えている」とされていたのですが、「連載中の作品」に関してはマイナスの影響があるというのが今回の研究発表の内容だったようです。


著作権者の検索、簡単に 一括サイト開設へ、文化庁 共同通信47NEWS(2017年2月27日)


 過去に何回かこういう話が出ているような気がしますが、「権利情報プラットフォーム」を作るそうです。この言葉で検索してもまともな情報が見つからないので、詳細不明。ちなみに著作権登録制度そのものはすでに存在しているのですが、登録にお金がかかる(登録免許税)のでほとんど利用されていないのが現状。


Microsoft社、4月実施予定のWindows 10大幅アップグレードに向け、電子書籍ビューワ機能を改善 hon.jp DayWatch(2017年2月27日)


 4月! もうすぐですね。プレビュー版を確認した人が結構まともな表示だと言っていたので、期待できそう。


「海賊版の影響あるのに、これだけ“本物”売れるとは」――“タイ版アニメイト”は「初年度から黒字化」その理由は ITmedia NEWS(2017年2月28日)


 アニメイト、KADOKAWA、講談社、集英社、小学館がが出資するジャパンマンガアライアンスがタイで展開した店舗で成功しているという話。なんと初年度から黒字化見込みとのこと。正規版を入手しやすくするのと同時に海賊版に対処することで良い結果に繋がったようです。すばらしい。


電子書籍取次のメディアドゥ、同業を買収 80億円で 日本経済新聞(2017年2月28日)


 ビットウェイの取次事業を出版デジタル機構が吸収したとき以来の衝撃M&A。電子取次業界1位を2位が飲み込む形です。昨年7月の東洋経済には、こんな記事がありました。

電子書籍市場全体に対し、電子書籍取次の市場規模は6割程度の1200億円程度と推測される。メディアドゥは電子書籍取次で「3強」といわれる大手3社の一角を占めており、約1割のシェアを握り、業界2位。最大手は出版デジタル機構(2016年3月期の売上高146億円、営業利益6.2億円)

 改めて考えてみるとこの「電子書籍取次の市場規模は6割程度の1200億円程度と推測」というのは、大手出版社が電子書店と直接取引しているケースが多いことを考えると疑問符を付けたいところ。1位146億円、2位112億円、それ以外で900億円? 3位はモバイルブックジェーピーだと思いますが、他の電子取次かき集めてもそんなにあるとは思えない……。

 なお、産業革新機構の出資額は「最大150億円」ですが、実際の出資額は公開されていません。2015年9月には、発行済み株式の39.4%を出版デジタル機構自身に売却しています。今回、80億円でメディアドゥに売却。いい出資だった?


W3C、Webアノテーションを実現する関連3規格を勧告、電子書籍ストア各社の今後に影響も hon.jp DayWatch(2017年2月28日)


 アノテーションとは注釈のこと。コメント、ハイライト、タグ付け、ブックマーク、タイムスタンプ付きノートなどを含んでいます(カレントアウェアネス・ポータルによる、ワーキンググループ立ち上げ時の解説記事はこちら)。ユーザーがオリジナルコンテンツに対し、関連する情報を書き込むことができる、という機能です。ウェブでは「Medium」や「はてなブログ」など、電子書店が提供するビューアでもほとんどの場合で、テキストを選択するとコメントしたりハイライトしたりできます。この機能がW3C勧告になったので、今後ブラウザやビューアに標準機能として実装されることになる可能性が出てきたのです。これ、ユーザーのウェブ閲覧や読書体験を激変させる可能性がありますよ! 楽しみ。


村上春樹『騎士団長殺し』の装幀が生まれるまで。 カーサ ブルータス(2017年2月28日)


 本作のカバーデザイン(とくにサブタイトルの袋文字・シャドウ)には賛否両論ありますが、こういう経緯で作られたのだというのがわかる貴重なインタビュー。「殺」の傾きは村上春樹氏のこだわりだったようです。


作家・編集・校閲が『校閲ガール』を語る!「地味にスゴイ!?校閲ナイト!」レポート【前編】 ほんのひきだし(2017年2月28日)


校閲者は、作家や編集の“仲間”なのか?「地味にスゴイ!?校閲ナイト!」レポート【後編】 ほんのひきだし(2017年3月1日)


 『校閲ガール』著者、担当編集者と、実際に校閲やドラマの監修を担当した鴎来堂の柳下恭平氏の対談イベント。柳下氏が後編で「ああ、消しゴムはありがたいなあ」と言っているのが非常に印象的。校閲者の指摘には赤字とエンピツがあって、エンピツは編集者が「この指摘は不要」と思ったら消せるように配慮されています。共同編集できるITシステムはいろいろ登場してますけど、こういう機微を再現できるシステムって少なくとも私はお目にかかったことがありません。いくら履歴が残るとはいえ、いきなり校閲者が原稿に手を入れられてしまうようになっているとか、ちょっと違うだろそれーみたいなのが多いのです。


TIBF今年は休止、来年の開催に向け準備期間 文化通信(2017年3月1日)


 2016年に一般ユーザー向けイベントに変わった「東京国際ブックフェア」が、今年の開催はなし。本の学校、どうするんだろう? ちなみに、主に企業向けイベントの「コンテンツ東京」は6月28日~30日開催です。今年は東ホール! 電子出版系は「コンテンツ 配信・管理ソリューション展」に。「クリエイターEXPO」には今年も、知人友人が何人か出展するみたい。


電子書籍で2億9000万円 漫画家・佐藤秀峰さんの収支報告 ASCII.jp(2017年3月1日)


 佐藤秀峰さんがこれまでの取組みを振り返り。2年目が『ブラックジャックによろしく』二次利用フリー化のタイミングだったんですね。数字を公開しているのが非常に興味深いです。6ページ目、勝手に値下げしたストアがその差額分を補填するという話、名前を挙げずに説明してますが、そんなことするストアは1カ所しかないはず。やり口は理解できていても、たいして売れてない個人の1作品だけで仕掛けても無視される可能性が高く、ある程度の知名度や作品数が必要だから真似ることが難しいのですよね。ぐぬぬ。


「R25」サービス終了 フリマガ時代の寵児消える ITmedia ビジネスオンライン(2017年3月1日)


 2015年に定期刊行の紙版を休刊していたのを知らなかった……そういえば確かに最近、駅などで見かけなくなっていました。紙をやめたらウェブ版のPVが激減したというのが恐ろしい。物理メディアがなくなると、存在を忘れられてしまう、ということなのでしょう。


小学館、自社の電子コミックストアを「小学館eコミックストア」にリニューアル、無料登録で1,000ポイントプレゼント hon.jp DayWatch(2017年3月1日)


 そういえば小学館も直営ストアを持っていたのでした。システムを提供しているエイト・ソーシャルウェアって会社案内を見る限り、この「小学館eコミックストア」と情報サイトの「小学館コミック」以外、電子出版関連は手掛けていないみたいなんですが、ビューアは自社開発なのかな……?


「アカギ」など人気マンガのコマ、サイトに貼れる「マンガルー」著作権処理済み ITmedia NEWS(2017年3月1日)


 ちゃんと権利処理されたマンガのコマをブログなどに貼れるサービス。マウスオーバーで作品購入へと誘導を図り、著者や出版社にしっかりメリットが返せるようにしたというところが素晴らしい。




ウェブの時代に、編集者と組んでマンガをつくる意味|『うつヌケ』著者・田中圭一さんに聞く、新しいマンガの作りかた cakes(2017年3月1日)


 編集者の存在が非常に大きかった、という田中圭一さんの声。あれだけセルフプロデュースできる人でも、そうなんですね。「できる編集者」と巡り会えるかどうかも、大きいかもしれませんが。


出版状況クロニクル106(2017年2月1日~2月28日) 出版・読書メモランダム(2017年3月1日)


 毎月楽しみな、小田光雄さんの出版状況クロニクル。「ユミコミックスの漫画家いがらしゆみこの『キャンディ・キャンディ』などのアジア市場も想定する電子配信」という記述に驚いたのですが、原作者の水木杏子氏と和解したという話は聞かないので、『キャンディ・キャンディ』以外の作品のことだと思われます(恐らくこの記事のこと)。


いま本をどう売るか――ウェブ、イベント、書評 マガジン航(2017年3月1日)


 毎月恒例、仲俣暁生氏のEditor's Note。村上春樹氏『騎士団長殺し』のティザー広告や、東京創元社の新刊ラインアップ説明会、新作が事前にゲラで読める「NetGalley」などについて。個人的にも「NetGalley」には注目しているのですが、メディアドゥによる買収で方針が変わらないかがちょっとだけ心配。一部上場企業になってもベンチャー魂を忘れず攻めの姿勢を変えていない会社なので、心配無用とは思いますが。


トーハングループ/あおい書店、19店舗を他書店に移管 新文化(2017年3月1日)


 2008年に日販からトーハンに帳合変更し、2016年10月にトーハン(の子会社)が全株取得していたあおい書店19店舗が、グループ会社に事業と店舗を移管、統合されることに。トーハン傘下になったとき「支配力強化?」と思ったのですが、それどころか解体されてしまいました。うーむ。


青空文庫から.txtファイルの未来へ:パブリックドメインと電子テキストの20年 J-STAGE(2017年3月1日)


 青空文庫・大久保ゆう氏による過去20年の振り返り。論争の中で疲弊していったボランティアとか、その議論に巻き込まれ棚上げになってしまったJIS X 0213の採用、結局、シンプルなテキストファイルが最強だったという結びなど、いろいろ考えさせられます。


実用書出版、プロが後押し 編集者前にオーディション/200社に企画書 朝日新聞デジタル(2017年3月1日)


 「ビジネス著者養成スクール」受講料80万円で約190人が参加。電卓叩いてしまいます。編集者20人を前に企画書プレゼンをする出版オーディションは面白そう。NPO法人企画のたまご屋さんは知らなかった。出版を盛り上げるビジネス、いろいろありますね。


紀伊國屋書店、「Kinoppy」で研究者向け洋書電子書籍を販売開始 INTERNET Watch(2017年3月2日)


 研究者向けの洋書電子書籍。17万タイトルあるそうですが、ラインアップ的にKindleストアの洋書とかぶってはいないのかな?


オリコンの音楽配信サイト「オリコンミュージックストア」でセルシスの電子書籍ビューア「BS Reader for Browser」が採用 PR TIMES(2017年3月2日)


 ニュースメディアで記事が見つからないのでプレスリリースをピックアップ。2017年になってもまだ新しい電子書店が始まります。武器商人、恐るべし。オリコンミュージックストアの会員は、どれくらい電書を読むのでしょうね?


米、電子書籍売上が約17%減 大手出版社らの値上げが原因 Forbes JAPAN(2017年3月2日)


 2016年にAAPから発表された数字はずっと、前年同期比で大きくマイナスしていた(値上げが要因とも言われていたし、インディーズの数字が含まれていないと批判もされていた)のですが、その要因としてもう1つ、専用端末で読む比率が低下している点を挙げているのが目新しい。日本では2011年ごろ起きていた「スマホシフト」が、アメリカでは5年遅れでやってきたということなのでしょうか。スマートフォンはいろんな用途で使えるぶん、ディスプレイの奪い合いも激しくなるのですよね。字の読みやすさは、いまだに専用端末のほうが断然上だと思うのですが。


フランス語圏向け個人作家団体「AAIF」設立中止、別の個人作家団体との競合を避けるため hon.jp DayWatch(2017年3月3日)


 この件、先週のまとめでピックアップしたのですが、あっというまに設立中止とは。なんか、なんだか。うーん。


Chrome OS、米K-12教育市場でシェア58%に(iOSは14%) ITmedia NEWS(2017年3月4日)


 Chrome OSの教育市場シェアがどんどん拡大しています。日本の教育ICTも、タブレットにこだわる必要ないと思うのですけどね。


偽ニュース排除を 国内ネットメディアら、協議会設立へ 朝日新聞デジタル(2017年3月4日)


 スマートニュースの藤村厚夫氏が発起人。こういう動きがあること自体は歓迎したいのですが、スマートニュースにも「まとめ/ブログ」という釣りタイトルや煽り記事が非常に多いチャンネルがあるのをどうするつもりなのか。



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