「初の読解力調査」「iOS 11で消えるアプリ型電子書籍」「Web出版物の標準化」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #290(2017年9月18日~24日)

古いiBooks

 先週は「初の読解力調査」「iOS 11で消えるアプリ型電子書籍」「Web出版物の標準化」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2017年9月18日~24日分です。

ランサーズが脱クラウドソーシング宣言、実名制で単価上げる BUSINESS INSIDER JAPAN(2017年9月15日)

 出版に限った話ではないですが、ちょっと「お?」と思った動き。不特定多数の匿名発注者と匿名受注者をマッチングするクラウドソーシングは、安値の叩き合い地獄になるだけだと個人的には思っているのですが、同じような問題意識を中の人も持っていたのですね。「実名制で審査通過者のみ登録できる」システムが良いかどうかはまだ判断できませんし、「匿名の発注者」にもいろいろ問題があるのでなんとかして欲しいところではありますが、変えようと動いていることは評価したい。

2000年のピークから4割減、姿消す“町の本屋さん” 生き残り賭けたサービスとは? Abema TIMES(2017年9月19日)

 「書店の経営が厳しい」現状まとめ。「売り場規模別にみた書店の実態(売り場面積別1坪1日あたり売上高)」のデータが珍しい(出典が示されていない……日販『書店経営指標 2016年版』とは数字が違う)くらいであまり目新しい情報はないのですが、AbemaTV『Abema Prime』で放送された内容の記事化というのが目新しいのでピックアップしてみました。東洋経済オンライン編集長の山田俊浩氏が、出版販売額における紙の本と電子書籍の比率について「よく分からない面がある」とおっしゃってますが、出版科学研究所の公表している推計数字を紹介することくらいはできたのでは。後半では下北沢の「本屋B&B」の取り組みなどが紹介されています。

本屋をつくる人たち 「厳しい経営を承知で」のなぜ Yahoo!ニュース(2017年9月20日)

 「地域に本屋を取り戻そう」と動き出した人たちのレポート。アメリカのように、元気な独立系書店が増えていくといいですね。

html5j 電子出版部セッション「Webと本の未来どうなる?」 SlideShare(2017年9月22日)

 9月24日に行われた「HTML5 Conference」に登壇した村上真雄さんのスライド。W3C Publishing Working Groupで仕様策定が始まったWeb+出版(Web Publication:Web出版物)の標準化の動きについて解説されています。「マニフェストを介してまとめられた1つ以上のリソース(HTMLファイル など)の集合」「デフォルトの読む順番を持つ」「一意に識別可能(URLなど)」「Annotation(注釈)の標準」あたりが大きなポイントになりそうです。

読解力:「子供は読めているのか」診断テストを開発 毎日新聞(2017年9月23日)

中3の15%、短文も理解困難 教科書や新聞で読解力調査 東京新聞(2017年9月23日)

 人工知能が大学受験に挑戦したらどうなるか? というプロジェクトから、そもそも人間は読解できているのだろうか? という方向の調査に。小学6年生から社会人まで約2万4000人を対象とした「リーディング・スキル・テスト」の分析結果です。新井教授の Twitter によると、同時に行ったアンケートでは、スマートフォンの利用時間や、国語が得意かどうか、読書の好き嫌いなどは、読解力と相関関係がないとのこと。興味深いです。

iOS 11に別れを告げられた悲しき32bitアプリたち ITmedia PC USER(2017年9月24日)

 iPad が登場した2010年から数年のあいだに存在していた「アプリ形式の電子書籍」が、iOS 11へのアップデートで読めなくなっているケースが多いようです。いまさらアップデートする手間をかけられないということなのでしょうね。なお、iOS 10以前のデバイスなら動きます。iPhone 5以前、iPad 第4世代以前、iPad mini初代、iPod touch 第5世代以前あたり。「ダウンロードした端末」ではなく Apple ID に紐付いている(App Storeでダウンロード可能)ので、しばらくは大丈夫ではないでしょうか。

「ウェブから生まれたウェブ太郎で、月に10万稼げるマンガ家なんてほとんどいない」かっぴーのネットマンガの実践論02 マンガHONZ(2017年9月24日)

 『左ききのエレン』著者のかっぴーさんと、集英社の編集者・浅田貴典さん、佐渡島庸平さんによる対談2回目。1回目はこちら。かっぴーさんの「月に10万稼げるウェブマンガ家なんてほんとにいないですよ」という意見が気になって調べてみたのですが、「note」でブレイクして「cakes」連載や「Kindleストア」配信での稼ぎ、という話のようです。「comico」公式作家の毎月20万円+インセンティブというシステムや、「GANMA!」のM1~5までのステージ制で毎月10万~50万+インセンティブ(「Route M」プログラム)というシステムもあるので、やり方・選び方次第ではないかな、という気もします。ただ、対談1回目を読むと「大手の出版社だったら多分2巻で打ち切ってるんじゃないかな(笑)」といった記述もあるので、そういう文脈で考えるとわからなくもないかなという感じはします。

【イベント告知】第1回 デジタル読書ってこんなに楽しい! ライトニングトーク大会

 私が理事長をやっているNPO法人日本独立作家同盟の主催イベントです。デジタル読書ってたのしー! みんなにこの楽しさを伝えたい。そんな思いを5分間にぎゅっと圧縮してお届け。ライトニングトークの登壇参加者、聴講参加者、大募集! 9月30日(土)14時から。


 激動の出版業界2016年を振り返る! 毎週更新している「出版業界関連の気になるニュースまとめ」記事1年分52本+αが、1冊の本になりました。詳細は下記の書影をクリック!

『出版業界気になるニュースまとめ2016』

『出版業界気になるニュースまとめ2016』


 Googleグループ「Weekly 見て歩く者 by 鷹野凌」に登録すると、毎週この「出版業界関連の気になるニュースまとめ」がメールで届きます。ときどき号外を配信するかも? ブログの更新チェックが面倒な方はぜひ登録してください。無料です。

タイトルとURLをコピーしました