「事業局制に組織改編した講談社のいま」「マンガ図書館Z新アプリ登場」「出版不況/危機論争」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #218(2016年4月25日~5月1日)

iPadのebiReader

毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「事業局制に組織改編した講談社のいま」「マンガ図書館Z新アプリ登場」「出版不況/危機論争」などが話題になっていました。

BiB/i | EPUB Reader on your website. — ビビ。EPUB リーダを、あなたのウェブサイトに。 ※2016年4月21日

1週前の話ですがピックアップ。ブラウザでEPUBが読める「BiB/i」が大幅アップデートしました。最後のβ版になる予定とのこと。最新版はバグ対応したv0.999.3です(4月26日)。

「ケータイ小説は終わった」なんて大間違い! 今も16万部のヒットを生み出すスターツ出版に聞く(飯田一史) – 個人 – Yahoo!ニュース ※2016年4月21日

1週前の話ですがピックアップ。『ウェブ小説の衝撃』の著者・飯田一史さんによる、スターツ出版・松島滋さんへのインタビュー。「ケータイ小説」の初期から存在するティーン向けの「野いちご」は、10代が安心して集まれる場所にするため、読者の年齢層に合わせた内容に修正してもらったり、細かく規定をして注意を喚起したりといった、細やかな運営が行われてきたとのこと。「投稿」の段階から、「編集」が結構関与しているということに。ウェブ小説に抱きがちな「上澄みをすくう」イメージとはちょっと違うようです。

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加Rakuten Kobo社「電子書籍のヘビー読書家の75%が女性。年間60冊の電子書籍、16冊の紙書籍を購入」 – hon.jp DayWatch ※2016年4月25日

1日30分以上読書しているカナダKobo会員は、77%が45歳以上、75%が女性とのこと。売れるジャンルが著しく偏りそうな。

“編集”の言葉を廃した組織改編から1年 デジタルを味方につける講談社のメディア戦略 (1/3):MarkeZine(マーケジン) ※2016年4月26日

1941年以来続いていた「編集局」の名称をなくして事業局制に組織改編した講談社の現在の状況について、ノンフィクション系のコンテンツを扱う第一事業戦略部長の瀬尾傑さんに尋ねた記事。紙かWebかというメディアの壁と、編集・広告・販売という旧事業部の垣根を超える「出版の再定義」を行った、という話が印象的。会員登録(無料)が必要な2ページ以降も、「マネタイズなくしてジャーナリズムの存続はない」「読者の数は、そんなに多くなくてもいい」など、刺激的な話が盛りだくさん。

絶版マンガを無料で読める「マンガ図書館Z」、iOS/Android専用スマホアプリをリリース -INTERNET Watch ※2016年4月26日

「絶版マンガ図書館」アプリが終了する件と、「ハートコミックス」が「マンガ図書館Z」に統合された経緯について、それぞれ記事を書きました。

IDPF, W3C Considering Merger ※2016年4月26日

Webの標準化団体「World Wide Web Consortium (W3C)」と、EPUBの標準化団体「International Digital Publishing Forum (IDPF)」が、統合を検討しているとのこと。

ASCII.jp:LINE Payがメディアドゥと連携、電子書籍市場での利用拡大へ ※2016年4月28日

「LINEマンガ」を除く電子書店系では初かな? まず「いつでも書店」「コミなび」が導入予定とのこと。LINE PayはPayPalと同様にチャージが必要な決済システムですが、ジャパンネット銀行の場合はオートチャージできるそうで。プリペイド式LINE PayカードやLINEポイントも始まっており、決済システムとポイント経済圏的な意味で注視しておきたいところ。

シャープの大学教科書電子化システム、9つの大学で採用 -INTERNET Watch ※2016年4月28日

シャープの電子教材システムがいきなり9大学で採用。電子書店「VarsityWave eBooks」は2013年5月に大日本印刷株式会社が開発(リリースを読む限りPDFビューワとDRMがセット)し、大学生協事業センターが運営していました。ところが今回のビューアーアプリ「VarsityWave eBooks」と「PDF/ePub(リフロー)からのフォーマットへの変換とDRM付与を行う電子書籍入稿システム」はシャープが開発ということで、大日本印刷の役割は……? という疑問が。「教育ITソリューションEXPO」に出展するそうなので、話を伺ってきます。なお、ついでに書くのもなんですが、大日本印刷とコープネット事業連合が2012年5月からやっていた『コープデリeフレンズ電子書店』は、2016年3月18日で販売終了、再ダウンロードも2017年3月20日で終了魚拓)しています。

出版状況クロニクル96(2016年4月1日~4月30日) – 出版・読書メモランダム ※2016年5月1日

毎月楽しみな、小田光雄さんの出版状況クロニクル。今回は、『出版ニュース』2016年4月中旬号(電子版はBookLive!のみで販売中)へ林智彦さんが寄稿した文に対する反論が、「この長たらしいタイトル文を」から始まりやたらと攻撃的。林さんの文は、小田さんの論を名指しで批判していますが、数字で具体的に根拠を示しているので納得しやすい。小田さんの反論は感情的に見えます。

「出版不況論」をめぐる議論の混乱について « マガジン航[kɔː] ※2016年5月1日

小田×林論争を、仲俣暁生さんが整理。

二人の議論における最大の裂け目は、「出版状況」のなかにウェブや電子書籍を含めるかどうか、というところにあると私は思う。

奇しくも、上記でピックアップした、講談社・瀬尾傑さんの言う「出版の再定義」と同じ話。取次・書店流通が危機であるのは間違いないけど、広い意味での「出版」には未来が広がっていると思うのですが。


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