2015年1月1日木曜日

一年の始まりなので、2015年に電子出版関連でどんな動きがあるか予想してみる

賀正

新年あけましておめでとうございます。
本年も「見て歩く者」をどうぞ宜しくお願い致します。

2014年も、電子出版界隈ではさまざまなことがありました。昨年年初の予測を簡単にまとめると、こんな感じです。

  • 電子図書館界隈に注目が集まる
  • タブレットの大型化と高解像度化
  • PC向けビューワのリリースと電子雑誌の盛り上がり
  • メジャーなマンガ誌が紙と電子を同時配信し始める
  • セルフパブリッシングの作家やサービスが脚光を浴びる

12月5日のJEPAセミナーで検証していますが、厳しめに判定しても6割くらいは当たっていたと言っていいでしょう。ね?

さて、では2015年はどんな年になるでしょうか?



昨年と同様、5つに絞ってみました。


あえて悪い予測は除外してます。「どこかの電子書店が閉鎖する」って予測をすれば確実に当たる(なにせ毎年どこかの電子書店が閉鎖してますから)んでしょうけど、正月早々そんなの面白くないですもんね。


今年こそタブレットの大型化と高解像度化が進む


昨年外した予測をもう1回。根拠は、10インチより大きいサイズがラインナップ的には必然だと思っているのと、12.2インチの大型 iPad という噂が再浮上しているから。ノートパソコンのフルスペック版が14インチ、「これさえあれば、何もいらない」という宣伝文句の Microsoft Surface Pro 3 が12インチです。

大型化の難点は「重さ」です。Surface Pro 3 の 800g(+タイプカバーで295g)はちょっと重すぎる。2012年の第3世代 iPad は 652g でしたが、2014年の iPad Air 2 は 437g です。大型 iPad は、12インチで 600g 切るくらいになるんじゃないかな? それくらいの重さなら「Air Pro」と名乗るのにふさわしいと思います。

ニュースメディアであまりPVが稼げなくなっているからか、ハードウェア関連(Apple系を除く)の話題はここ最近あまり重要視されていない雰囲気を感じます。国内のメーカーも元気がないから、広告費が出ない=取り上げられる機会が減るスパイラルだし。

ただ、電子出版って閲覧用のハードウェアが絶対に必要なんです。そういう意味を込めて、あえて予測の1番目にこれを持ってきました。Apple(iPad)、Amazon(Fire)、Google(Nexus)、ASUS(MeMO Pad)、Sony(Xperia)のうち、2社から12インチ級が出れば「当たり」ということにさせてください。


電子図書館サービスが助走段階から離陸段階へ移る


昨年は「注目が集まる」程度で、実態としてはまだまだこれからという状態でした。2015年は、学術系出版社コンテンツの電子化が進むことによって、まず大学図書館に電子書籍貸出サービスが普及していくと思われます。OverDrive & メディアドゥも、まず慶應義塾大学メディアセンターと実証実験を開始しています。

大学図書館には既に「電子ジャーナル」が普及していることもあり、電子書籍も比較的入り込みやすいことでしょう。問題は、コンテンツの電子化(しかも固定レイアウトではなく、利用しやすいリフローで)がどれだけ進むかです。

大学図書館とは異なり、公共図書館は『電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告2014』のアンケートを見る限り、2015年も急速な普及は望めないように思います。


先行事例である三田市立図書館や札幌市中央図書館などでの盛況ぶりが報道されるにつれ、徐々に住民の意識から先に変わっていくのではないかと。地域住民ニーズに応えるのが、公共サービスの役目ですからね。「なぜウチの県や市の図書館には、電子書籍が無いの?」という声が行政や政治家に届けば……ということになると思います。

大学・公共どちらも、普及にはコンテンツ量が重要です。よく「鶏が先か卵が先か(つまり、ニーズがあるかないかわからないから電子化を躊躇している)」などと言う人がいますが、市場が新しく生まれるときには卵が絶対に先です。「ニーズがあるから電子化する」のではなく「ニーズを作るために電子化する」姿勢が正しい。市場は勝手に生まれるのでなく、生み出すものなのです。


リアル書店やコンビニで電子書籍が入手可能な仕組みが普及する


いわゆる O2O(Offline to Online または Online to Offline)事業です。2014年年初に予測しきれなかった……というか、「もっと先になるだろう」と軽視していました。ごめんなさい。文教堂「空飛ぶ本棚」、三省堂「デジ本プラス」、TSUTAYA「Airbook」など、紙の雑誌を買うと電子版が無料で「貰える」形のサービスが、次々と登場し、受け入れられていきました。

2015年はこの動きが、コンビニ業界に波及すると思います。Tカードで提携しているファミリーマートが、真っ先に始めるんじゃないかな。あと、雑誌だけではなく、書籍でも事例が増えてくるでしょう。これはポット出版の「プラス電書」のように、版元主導じゃないと難しい、かな。

来店促進のため、GPS、Wi-Fiスポット、iBeacon連動で「来店特典で電子書籍が貰える」的なサービスももっと増えてくるでしょう。なにしろACCESSがビーコン1万個無償配布なんてこと仕掛けてますし。

いっぽう、リアル書店で電子書籍が「買える」サービスは、三省堂「デジ本」、JPO「BooCa」などがありますが、正直あまりうまくいっているようには見えません。カードそのものにコレクター魂をくすぐる付加価値があったり、中身が多少読めたりといった工夫が必要なのではないかと思われます。

そういう意味で、アニメイトブックストアが、本がシュリンクされ店頭では立ち読みできない状態になっている代わりに、バーコードリーダー&電子版のお試し機能を提供したのは良い事例だと思います。hontoやKinoppyにも同様の機能はありますが、積極的にアピールしてこなかったのがもったいない。

恐らくリアル店舗に対する遠慮や配慮があったと思うのです。GPS、Wi-Fiスポット、iBeaconなど、位置情報と連動して、電子書籍が売れたとしてもリアル書店にお金が入るようにできればいいのですけど。三省堂&BookLive!の「ヨミCam」がそういう仕組みだったはず。


ソーシャルDRMで直接配信する出版社が増える


2014年も、エルパカBOOKSに始まり、地球書店、ヤマダイーブック、TSUTAYA.com eBOOKsなど、いくつもの電子書店が姿を消していきました。そのたび、脊髄反射のように「だから電子書籍は信頼できないんだ」「自炊最強」「電子書籍って実態はレンタルだから」「電子書籍って所有できないんだよね」などといった意見が飛び交っていました。

dotplaceへ寄稿した2014年回顧にも書きましたが、「電子書籍は所有できない」のではありません。実際には単にDRMで会員をプラットフォームに縛り付けていることが問題なのです。だからといって、「いますぐDRMフリーにしろ!」などといった暴論を言うつもりもありません。

音楽配信だって、DRMフリーが一般化するには、相当な時間を要したわけですから。プラットフォーム主導でそういうでっかい革命的な動きが起こるには、スティーブ・ジョブズみたいなカリスマ経営者が必要でしょうし、ジェフ・ベゾスにそういう役割は期待できそうにありません。

ただ、はっきりしておきたいのは、DRMフリーやソーシャルDRMの電子書籍は、仮に購入元が閉鎖したとしてもファイルは自分のものであり、レンタルではなく明確に「購入」行為です。つまり、DRMフリーやソーシャルDRMは、電子書店サービス閉鎖問題に対する、回答の一つでもあるのです。

オライリー・ジャパン、達人出版会、技術評論社、オーム社、ディスカヴァー・トゥエンティワン、「ハリー・ポッター」のポッターモアなど、先駆的な版元は既に、DRMフリーやソーシャルDRMによって電子書籍を販売してきました。

そして、2014年には明治図書出版、JTBパブリッシングと、新たな事例が生まれました。2015年はこういった動きが、さらに加速していくのではないかという予測です。恐らくプラットフォーム側による動きではなく、出版社による直接配信+ソーシャルDRMという動きになるように思います。


出版社直営の作品投稿サイトが盛り上がる


今年はあえて「セルフパブリッシング」という言葉を予測から外しました。楽天Koboライティングライフのサービス開始で、「出版」のハードルが非常に低くなり、いままで以上に盛り上がることは間違いないとは思います。

しかしやはり、これまで著者の発掘育成機能を担ってきた出版社の力は、なんだかんだで強いと思うのです。そして、その出版社が自らCGM(Consumer Generated Media)を運営するようになってきています。集英社の「少年ジャンプルーキー」は、ほんとに衝撃的でした。

これまでは、出版社が新人賞や持ち込み原稿をチェックして、才能を発掘してきました。それが、DeNAの「マンガボックス インディーズ」やNHN PlayArtの「comico」のように、IT企業が投稿プラットフォームを用意して才能を集め、出版社へバトンを渡すスタイルが強くなってきました。「小説家になろう」や「E☆エブリスタ」も同様です。

もう一歩進めて、「アルファポリス」や、マイクロマガジン社「マンガごっちゃ」のように自社で投稿サイトを運営しつつ、発掘した才能・作品は自社で出版する企業も台頭してきました。アルファポリスはそのやり方で利益率30%超、マザーズ上場も果たすという躍進ぶりです。

そういう流れを、他の出版社が黙って見ているはずもありません。その一つが「少年ジャンプルーキー」です。KADOKAWAもBCCKSと提携して「BWインディーズ」を始めました。単なるWebマガジンではなく、出版社がプラットフォームになってユーザーからの投稿を受け付け、ユーザーがダイレクトに評価する中で才能が発掘されていくスタイルが、もっと他社にも普及していくように思います。

果たしてそれは、セルフパブリッシングなのか、出版社からの出版なのか。境界が曖昧になってくると思うのです。「取次・書店流通だけが出版」だと思い込んでいる業界関係者もいるようですし、KDPだけがセルフパブリッシングだと思っている方もいるようですが、いずれそういう考え方も変わっていくでしょう。

もちろん、個人が直接販売できる(そして購入するユーザーも多い)場としてのKindleストアや、楽天Koboも魅力的なんですけどね。

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