2014年9月6日土曜日

コンテンツ産業の市場動向とクラウド時代における差別化要因 ──『デジタルコンテンツ白書2014』発刊セミナーレポート

デジタルコンテンツ白書2014

一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)は9月5日、『デジタルコンテンツ白書2014』発刊セミナーを開催しました。「クラウド化するコンテンツ」をテーマとする固めの講演やパネルディスカッションの後、アイドルグループがサプライズゲストとして登場・実演するという、なかなか面白いセミナーでした。登壇者は以下の通りです。

  • 市原健介氏(デジタルコンテンツ協会 専務理事) ※開会挨拶
  • 木下勇一氏(デジタルコンテンツ協会 調査部主幹)← この記事で紹介
  • 福冨忠和氏(デジタルコンテンツ白書 編集委員会委員長/専修大学ネットワーク情報学部教授) ※デジタルコンテンツ白書2014のポイント解説(5分)
  • まつもとあつし氏(デジタルコンテンツ白書「特集」執筆/ジャーナリスト/コンテンツプロデューサー)← この記事で紹介
  • 掛尾良夫氏(デジタルコンテンツ白書「映画」執筆/城西国際大学メディア学部教授/株式会社キネマ旬報社顧問)
  • 川口洋司氏(デジタルコンテンツ白書「オンラインゲーム」執筆/日本オンラインゲーム協会 事務局長/株式会社コラボ 代表取締役)
  • 濱野智史氏(デジタルコンテンツ白書「インターネット」執筆/日本技芸 リサーチャー/情報環境研究者
  • 山口哲一氏(デジタルコンテンツ白書「音楽」執筆/音楽プロデューサー/バグ・コーポレーション 代表取締役社長)
  • アイドルグループプロジェクト「Platonics Idol Platform(略称「PIP(ピーアイピー)

内容が盛りだくさんなので、まずは木下勇一氏とまつもとあつし氏のパートだけレポートさせて頂きます。パート2はこちら



日本のコンテンツ産業の市場規模2013


まず木下勇一氏から、2013年の日本のコンテンツ産業の市場規模についての説明が行われました。『デジタルコンテンツ白書2014』では第2章(の一部)にあたります。コンテンツ産業とは、「音楽・音声」「ゲーム」「動画(映画・アニメ・テレビ番組など)」「静止画・テキスト(出版[雑誌・書籍]・新聞・インターネット広告など)」の4ジャンルです。

木下勇一氏(デジタルコンテンツ協会 調査部主幹)

  • コンテンツ産業の市場規模は合計11兆9094億円(前年比100.4%)で、リーマン・ショック以後はほぼ横ばいで推移している
  • 「音楽・音声」が1兆3231億円(前年比-3.0%)で構成比11.1%
  • 「ゲーム」が1兆4819億円(前年比+7.6%)で構成比12.4%
  • 「動画」が4兆4804億円(+1.1%)で構成比37.6%
  • 「静止画・テキスト」が4兆6240億円(-1.4%)で構成比38.8%

この数字の切り口をジャンルからメディアに変えると、こんな感じになるそうです。

  • 「パッケージ」が4兆8628億円(前年比-4.3%)で構成比40.8%
  • 「放送」が3兆6641億円(前年比-1.0%)で構成比30.8%
  • 「ネットワーク」が1兆8976億円(前年比+11.8%)で構成比15.9%
  • 「劇場・専用スペース」が1兆4849億円(前年比+2.0%)で構成比12.5%


コンテンツ産業の市場規模メディア別順位

メディアを細分化して市場規模で順位を付けると、1位がテレビ、2位が新聞、3位が雑誌、4位が書籍と、従来メディアはまだまだ市場規模が大きく、5位にインターネット広告が来るそうです。特筆すべき点としては、6位にオンラインゲーム運営サービスが入っていること。昨年の圏外からジャンプアップしています。


コンテンツ産業のメディア別伸び率順位

対前年比(伸び率)だと、電子書籍・電子雑誌がほぼ倍増です。音楽・音声インターネット配信や、コンサート入場料収入、動画ネットワーク配信などがランクインしてます。


コンテンツ産業のメディア別増加額順位

増加額だと、オンラインゲーム運営サービスが突出しています。インターネット広告、コンサート入場料収入、電子書籍が続きます。逆に、伸び率マイナスランキングでは、1位から4位にフィーチャーフォン関連が並びます。


ジャンル別デジタル化率

「デジタル化率」をジャンル別で見ると、静止画・テキストは19.5%とまだまだ低く、デジタル化できる余地が大きく残っていると言えます。

その他のトピックスとしては、以下の様なものが挙げられていました。

  • コンテンツ産業市場のうち、デジタルコンテンツは7兆6589億円(デジタル化率64.3%で、昨対比+0.8%)
  • うち、ネットワーク流通コンテンツは1兆8976億円(ネット化率15.9%で、昨対比+1.6%)
  • パッケージからネットワークへ、メディアの置換えが進んでいる
  • ゲームのネット化率が52.3%と、年々高くなっている
  • 音楽・音声のネット化率が下がっているが、フィーチャーフォン向け配信が大きく減少しているのと、コンサートが健闘しているのが要因


デジタルコンテンツ白書2014特集「クラウド化するコンテンツ ~価値創出のメカニズム~」について


続いてまつもとあつし氏から、『デジタルコンテンツ白書2014』第1章の特集「クラウド化するコンテンツ ~価値創出のメカニズム~」について、概要の説明が行われました。要するに、パッケージからネットワーク(クラウド化)に変遷していく中で、どうすれば収益化 → 次の作品の制作というサイクルを回せるか? という考察です。

まつもとあつし氏(ジャーナリスト/コンテンツプロデューサー)

例えば音楽では、アナログレコードやテープが、デジタル化されCDになりました。次にオンデマンド型データ販売(着うたやiTunes Music Store)や、ストリーミング型視聴(ネットラジオやPodcast)が登場しました。そして最近では、クラウド型楽曲管理(iTunes Match)や定額視聴(SpotifyやMusic Unlimited)が登場しています。


App Storeは伸びているのにiTMSは減少

例えば最近、iTunes Storeの売上減少(前年比売上24%ダウン)が話題になりました。理由は明確になっていないのですが、定額視聴サービスのSpotifyなどに奪われているのではないか? と推測されています。ところがそのSpotifyからの収益配分を巡り、レコード会社とアーティストが対立していたり、YouTubeの有料チャンネルからインディーズレーベルが離脱するような騒ぎも起きています。


バリューチェーンの現状(アニメ)

ではこういったメディアの変遷が産業にどのような影響を与えているか? を、マーケティングの神様と呼ばれているマイケル・ポーターによる「バリューチェーン」の考え方に、アニメ産業の現状を落とし込んだものが上の図です。左下の購買・物流からの流れを抜粋すると、以下の様な流れになります。

  • 購買・物流 原作依存度の増大(マンガやラノベからのアニメ化)
  • 製造 制作予算の抑制
  • 出荷物流 ネット流通の台頭
  • 販売・マーケティング メディア「所有」ニーズの減少
  • サービス 動画共有サービスの需要増大
  • マージン ビデオグラム販売量の減少

アニメ産業の中でネット配信が占める割合

この図は、上が狭義のアニメ市場(商業アニメーション制作会社の売上から推定)、下が広義のアニメ市場(ユーザーの消費金額から推定)で、棒グラフの上にちょっぴり載ってるオレンジ色がネット配信の売上です。この図に載っていない2013年は、広義で1兆3721億円、うちネット配信は340億円です。2009年の急減を、ネット配信ではまだ補い切れていないのが現状です。


既存のウィンドウウィングモデルの課題

この図は、ひとつの映像ソースをいろいろなメディアに展開し、異なるタイミングで、価格にも差をつけて展開する「ウィンドウウィング」モデルと呼ばれているものです。縦軸が価格、横軸が時間です。

要するに「時間が経つと価値が下がっていくよね」というのがウィンドウウィングモデルで、これまでの常識として語られ方程式のように利用されてきました。ところがそのモデルは、もう崩れかけているというのです。例えば「価格」に関しては、フリーミアムが浸透しています。深夜帯TVアニメは枠を購入する形で広告収入もないため、まさにフリーミアムモデルです。いきなり無料で公開してしまうのです。

というのは、デジタル化により限界費用が限りなくゼロに近づく(サーバー代くらいしか掛からない)ため、フリーミアム+収穫逓増モデルと再定義すると、コンテンツの寿命(時間)はできるだけ長い方がいい、というのです。この辺りの話は、2007年に福冨忠和氏などによって出版された『コンテンツ学』に詳しく載っているようです。こういう本こそ電子化して欲しい……。

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まつもとあつし氏の仮説は、デジタル化 → ネット化 → クラウド化 → 定額化という変遷の中で、コンテンツの生涯価値を高める差別化要因は何か? ということを考えた時に、それはコミュニケーションとコミュニティではないだろうか? というものです。クラウド・定額制は希少性を低下させ、廉売に向かいます。

しかし、例えばニコニコ動画のコメントは、擬似的に同期され「みんなと一緒に観てる!」体験ができます。ところが動画を観ていると、古いコメントから順に過去ログへ収録されるため、面白いコメントに対する反応だけが残っている場合があります。一応、過去ログから引っ張り出して「何が起きていたのか?」を確認することは可能ですが、過去に書き込むことはできないため、一体感は薄れます。

このように、コミュニティでの体験は希少性が高いため、高付加価値に繋がるのではないか? というのがまつもとあつし氏の仮説です。KADOKAWA × DWANGO の合併も、狙いはそこではないかと推測しているそうです。


上下がリアルとバーチャル、左右が希少性高低

この図は、上下がリアルとバーチャル、左右が希少性高低のマトリックスです。そして重要なのはまだ手法が確立できていない、バーチャルかつ体験・コミットメント(希少性高)の領域(図の右上)と、さまざまな手法を組み合わせるハイブリッドな領域(図の中央)だそうです。

……というような話が、『デジタルコンテンツ白書2014』の特集では、もっと掘り下げた形で語られています。第3章は日本のコンテンツ政策、第4章はコンテンツの分野別動向、第5章はメディアの分野別動向、第6章は海外動向です。


1部1万2000円(税別)といいお値段ですが、コンテンツビジネスをやってる企業の人は、現状を俯瞰して把握する意味で目を通しておいた方がいいと思います。

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