出版(紙・電子書籍)関連の気になるニュースまとめ #79(2013年8月12日~2013年8月18日)

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出版(紙・電子問わず)関連でボクが気になった先週のニュースについて、コメントをつけてまとめていきます。先週は、インターネット図書館「青空文庫」の呼びかけ人である富田倫生さんが亡くなられたことが話題になっていました。

端末競争はほぼ収束,ディジタル化ソリューションも淘汰の時代へ ―― 第17回 国際電子出版EXPO(eBooks)|Tech Village (テックビレッジ) / CQ出版株式会社 ※2013年8月9日

先々週の記事ですが、見落としていたのでピックアップ。国際電子出版EXPOで、ボクがあまりじっくり見て回れなかった部分が紹介されています。東芝の画像認識技術「スマホ de かざす UI」は、気が付かなかったなあ(ラピスに目を奪われていました)。

JEPAセミナーリポート:eBookJapanの電子書籍販売手法とは – ITmedia eBook USER ※2013年8月12日

自分の書いた記事ですがピックアップ。さすがに長年、電子書店1本で商売してきただけのことはあると思います。

漫画「GANTZ」1~6巻を限定無料配信 完結37巻は電子版も同時発売 – ねとらぼ ※2013年8月12日

完結37巻のプロモーションを兼ねてということでしょうか。「キングダム」の成功事例が効いてますね。ちょっと驚いたのが、「キングダム」は特設サイトでの無料公開だったのが、今回は各電子書店での無料配信であること。そして、Kindleストアでも他店同様無料配信されていること。集英社の主導で、きっちりプロモーションコストを払っているということなんでしょうね。

電子書籍普及に向けたアイデア募集-下北沢「B&B」でプレゼン大会 – 下北沢経済新聞 ※2013年8月13日

面白そうなイベントだと思ったのですが、帰省中につき行けませんでした。残念。イベントレポート的なものを探しているのですが、見つからないなあ……もったいない。

eBookJapanもブラウザビューワ導入――ブラウザ“楽読み”サービス – ITmedia eBook USER ※2013年8月13日

3つ上の、JEPAセミナーの際に、ブラウザビューワの質問をしたのは実はボクなのですが、「蕎麦屋の出前みたいで申し訳ないのですが、まもなくリリース予定です」という回答だったんですね。その記事が出た翌日のリリースという。まさかこんなに早く出るとは、という感じでした。ボイジャーのBinBではなく、独自開発みたいです。背表紙が見えるブラウザビューワ本棚が秀逸。これはアプリでも欲しい。

講談社、電子書籍5割増の1万7000点に 市場拡大に弾み :日本経済新聞(有料記事) ※2013年8月14日

講談社以外も、コンテンツ拡充の動きは広がっているよ、というニュース。しかし、日経はこの程度の内容で、有料会員限定記事にしないで欲しい……。

TOP BOOKSサービス終了のお知らせ|TOP BOOKS ~ポケットの中の本屋さん~ ※2013年?月?日

先週、「もも漫」終了のお知らせが出た時、おなじNECビッグローブのサービスなんだから、いっしょに確認しておけばよかった。

本サービスは、2013年9月26日(木)をもちまして終了させていただくことになりました。

ボクが気づいたのは8月14日ですが、このお知らせがいつから出ていたかわからないので日付は?です。

“本好き読者”、約7割が電子書籍の購入経験なし……シニアほど安さでストア選択 | RBB TODAY ※2013年8月14日

東京国際ブックフェアでBookLive!のブースへ立ち寄った人を対象にしたアンケートだということに留意。“本好きの読者”や業界人が中心なので、そのまま一般化はできません。電子書籍を利用しない理由として「紙の本で読むほうが好き」という理由が高いのは、東京国際ブックフェアの来場者の特徴、なのでしょうね。恐らく国際電子出版EXPOのフロア(4F)で同じアンケートをやったら、また違った傾向になるでしょう。

リコー欧州法人が技術協力:「2分でカラー製本」スウェーデンで世界初のPOD雑誌販売スタンドが稼働 – ITmedia eBook USER ※2013年8月15日

雑誌のプリント・オン・デマンドって、まだなかったんだ!? とちょっと驚いたニュース。製本が必要な書籍より、雑誌のほうが簡易で時間がかからない分、普及が早いような気がします。中綴じできるページ数の雑誌は、今後こういう方向へ進化するのでは?

楽天、電子書籍端末を新興国に積極投入 アマゾン追う :日本経済新聞(有料記事) ※2013年8月15日

記事中にもありますが、昨年末には南アフリカとブラジルへ専用端末を投入しています。koboを足がかりにして、楽天市場も世界展開を考えているんでしょうかね?

崩れる出版の枠組み 新規参入組が新風吹かす :日本経済新聞(有料記事) ※2013年8月15日

「電子書籍の光と影」というコラムの前編。このくらいガッチリしたコラムなら、有料記事でも納得。 3ページ目にこんな記述が。

(大日本印刷は)雑誌記事を電子化してバラ売りするシステムを開発し、雑誌の原稿や写真などのデータを記事単位でデータベースに格納する手法を編み出した。このシステムを使った電子コンテンツ配信サービスを9月に始める予定だ

富士通のBooksVと同じようなことを、hontoでも始めるってことですかね?

デジタル化をいまだ渋る著名作家 普及に課題山積 :日本経済新聞(有料記事) ※2013年8月16日

「電子書籍の光と影」というコラムの後編。前後編あわせて、いまの界隈の状況を端的に記した良記事。デジタル化を渋る作家が抱いている不信感というのが、「出版社が海賊版対策のために動いてくれない」というものだとか。「とある著名な漫画家」って、誰でしょうね?

EBook2.0 Magazine — ジャンルで異なるデジタル比率を考える ※2013年8月15日

アメリカにおける現況。日本の出版市場はかなり売上構成が違うので、多少似た傾向はあっても同じにはならないと思います。まあ、売上が見込みやすいコミックから先に電子化が進んでいくんでしょうね。JEPAのeBookJapanセミナーで、現在の電子書籍市場の8割がコミックという数字が挙げられていて、なるほどなあ、と。

ASCII.jp:本と著者の契約、ホントはどうなってるの? (1/3)|前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” ※2013年8月16日

この著者が結んでいる出版契約の内容についての解説。日本書籍出版協会にひな形が用意されてたりしますが、契約は出版社と著者が個別に結ぶものなので、条件も個々に異なる可能性があるということを留意しておく必要もあるでしょう。

たびたび登場する「甲(著作者)と乙(出版社)が協議の上、決定する……」という文言は、ひとつの契約書でも7回以上登場します。出版社が知的財産法である著作権法で定められる著作権を侵害しないように気遣った契約になっているのでしょう。

とありますが、これは出版契約に限った話ではないです。契約締結時にはまだはっきりしていない点は、「後で決めましょうね」という場合の定型文です。日本的な、曖昧な解決方法といいますか。まあ、初めからガチガチに諸条件を詰めた契約書を結んでも、状況が変わってしまうような場合もありますからね。

ポイントカードは読者・消費者の利益になるのでしょうか?: 日本出版者協議会 ※2013年8月16日

STOP!! Amazon!!」に続く、日本出版者協議会による消費者の神経逆撫で事案。「再販制度が素晴らしいものだ!」というのを絶対的な前提でしか論を組み立てていないということがよくわかります。むしろ、再販制度はいまの書店の苦境や”出版不況”と呼ばれている現況の、真因ではないかと言われてるんですけどね。21世紀になる前から。

出版社と書店はいかにして消えていくか―近代出版流通システムの終焉

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いまだに激しい論争の的になる電子書籍の値付け – ITmedia eBook USER ※2013年8月16日

紙の出版物はコストの積み上げで販売価格が決まりますが、本来物品の価格というのは消費者のニーズによって決まるはず。そのメカニズムが生きているのは、紙の場合は古書ということになります。そういう意味でも、「電子書籍の価格は、古書の価格との競争」という意見はわりと的を射ているのかな、と。まあ、紙と電子は確実に商品性が異なるので、単純比較もできないのですが。

宝島社が“反オンライン”を貫くワケ | 産業・業界 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト ※2013年8月16日

紙とオンラインって、敵対するものではなく、相互補完するものではないかと思うのですが。まあ、書店・コンビニ・取次という「極めてよくできた」流通システムが、今のままでこの先も続くことはないと思うので、どこまで”反オンライン”という意志が貫けるかという話になるような気が。

青空文庫の富田倫生さん 逝去: ポシブル堂書店からのお知らせ ※2013年8月16日

非常に残念なお知らせ。ボクが富田さんと初めてお会いしたのは、昨年末のthinkTPPIPシンポの時。そして6月のシンポジウムでお会いしたのが最後になってしまいました。

1時間40分頃から、富田さんの”遺言”的な問いかけが聞けます。

インタビュー:「青空文庫」呼びかけ人 富田倫生氏~日本が誇る「青空文庫」の軌跡~ | OnDeck ※2013年8月17日

富田さんが亡くなられた翌日に、インプレスのOnDeckが2010年12月17日に行ったインタビューを公開しています。

図書カード:本の未来/ 富田倫生|青空文庫 ※2013年8月17日

富田さんが亡くなられた翌日に、青空文庫で富田さんの著書が公開されました。御遺志だったのでしょう。なお、富田さんが亡くなられた後も、青空文庫はいままでと変わらず更新し続けています。一貫して「青空文庫呼びかけ人」としか名乗らなかった富田さんのことですから、自分が死んだ後のことをきっちり整えた上で旅立たれたということでしょう。どうか安らかにおやすみください。

(cache) 県立図書館:電子書籍の実証実験 PCやスマホで閲覧、モニター募集 /滋賀- 毎日jp(毎日新聞) ※2013年8月17日

毎日新聞はすぐ記事を消してしまうので魚拓にて。滋賀県立図書館での電子書籍実証実験が、ラインナップが弱いためモニターが思ったほど集まっていないようです。

“1強”アマゾン対楽天、競争激化で再編機運高まる出版業界〜苦境の出版社・書店の思惑(1/2) | ビジネスジャーナル ※2013年8月17日

ビジネスジャーナルの執筆陣は謎が多い……やけに業界通っぽいのですが、どこまで信用していいやら、という感じが。個人的には、「リアル書店へのインフラ提供が今後の大きなキー」というkobo事業1周年での話が、大阪屋買収の件とどう繋がっていくのかを気にしているのですが。

(cache) 東京新聞:橋下氏を批判 出版中止 中島氏評論「権力への過剰忖度」:社会(TOKYO Web) ※2013年8月18日

東京新聞はすぐ記事を消してしまうので魚拓にて。圧力で出版中止になってしまったとして、NTT出版以外の手段って無いんですかね? こうして話題になれば、飛びついてくる出版社があるような気が。最悪、KDPで出すという手もありますし。

[追記]

後日、新潮社から発売済みだったようです。

「リベラル保守」宣言

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二次創作の同人活動を認める意思を示す「同人マーク」のデザインが決定 | マイナビニュース ※2013年8月18日

いよいよデザイン決定。赤松健さんが「”主にTPPによる非親告罪化対策”って書いてくれないと、何か微妙なんだよね」とつぶやいていたのが印象的でした。「二次創作文化を保護および促進」だけだと、なんか権利主義・権威主義的なものだと勘違いされてしまうかも。

ただ、Twitterのタイムラインで反応を見ていたら、漫画家の方々が何人か「使いたい」という声を挙げていたのはいい兆候かな、と。まずは実証実験で、広報活動はその後とのことですが。

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