「雑協・書協・図書館協会などが組織的犯罪処罰法の改正に反対声明」「ファクトチェックの推進と普及を目的とした団体が設立」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #277(2017年6月19日~25日)

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 先週は「日本雑誌協会・日本書籍出版協会・日本図書館協会が組織的犯罪処罰法の改正に反対声明」「ファクトチェックの推進と普及を目的とした団体が設立」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2017年6月19日~25日分です。

日本雑誌協会及び日本書籍出版協会が連名で声明「強行採決に抗議し、あくまでも「共謀罪」に反対する」を発表 カレントアウェアネス・ポータル(2017年6月19日)

日本図書館協会、「「組織犯罪処罰法改正案」の成立に対する声明」を発表 カレントアウェアネス・ポータル(2017年6月19日)

 日本雑誌協会・日本書籍出版協会・日本図書館協会が、組織的犯罪処罰法の改正に反対声明を出しています。反対理由は「内心の自由」「表現の自由」の妨げになる、言論・表現への萎縮を招きかねないというものです。

米ロマンス小説系電子書籍出版社JK Publishingの代表、作家ロイヤリティ窃盗の疑いで逮捕される hon.jp DayWatch(2017年6月19日)

 私の周辺では主に著者側がザワザワしていた記事。もし、出版社や取次・書店が売上数字を誤魔化していたとしても、著者が把握する術がないという心配です。昭和40年代ごろまでは、誤魔化しできないよう著者が1冊1冊「検印紙」を貼っていたんですよね(「印税」の語源)。紙は取次が公共インフラ的になっていますが、電子の場合はどうなのか。著者の不安を解消するには、アマゾンの「Kindleダイレクト・パブリッシング」の販売レポートや「著者センター」みたいな、著者がほぼリアルタイムで販売状況を把握できる仕組みを、メディアドゥみたいな電子取次に提供してもらうのがいいのでは、と思うのですが。不安解消だけではなく、販売促進策に対しどれだけ成果が得られたかをすぐ把握してさらなる販売促進に繋げる、という意味でも。

これが電子書籍の未来!?位置情報を送ると「あなただけの物語」を生成するメルセデスベンツのキャンペーン MarkeZine(2017年6月21日)

 ユーザーの位置情報や天気・時間・季節などに基づき、ストーリーの内容が少しずつ変化するeBook。それって自動で条件分岐する「アドベンチャーゲーム」なのでは。ストーリーがどれだけ分岐するかわかりませんが、フラグ判定がわからないので同じストーリーを再度読むのは恐らく難しいはず。それって、本としてどうなんだろう? なお、「読者によって内容が変動する本」という仕掛けは、BCCKSから「パーソナライズド出版システム」として4年前にリリースされています。

『少年ジャンプ』公式のマンガ制作アプリ「ジャンプPAINT」が無償公開 窓の杜(2017年6月22日)

 「メディバンペイント」ベースの、「少年ジャンプ」公式漫画制作アプリ。掲載作品を見本に練習できる機能があるそうです。すごい。「少年ジャンプルーキー」にもすぐ投稿できます。

これ以上、“偽ニュース”を野放しにするわけにはいかない――メディアの信頼性向上を目指し任意団体が発足 ITmedia NEWS(2017年6月22日)

 ファクトチェックの推進と普及を目的とした団体「ファクトチェック・イニシアティブ」が設立。「スマートニュースがファクトチェック情報のオープンデータ化とシステム間連携を提供」するけど、団体そのものは「ファクトチェッカーにはならない」とのこと。あくまでプラットフォームだ、と。うーむ。

スマートニュースの「ファクトチェック」とは?「まとめサイト」記事配信の裏側(亀松太郎) Yahoo!ニュース個人(2017年6月22日)

 ジャーナリスト亀松太郎さんが「ファクトチェック・イニシアティブ」設立会見で、ファクトチェックを推進している企業(スマートニュース)が「まとめ」タブを提供しているのは問題ではないのか? という趣旨の質問をして記事にまとめています。スマートニュース執行役員の藤村厚夫さんの回答を要約すると「3段階の内容チェックを行っている(ただし完璧ではない)」というもの。日本報道検証機構代表の楊井人文さんも「まとめサイトがすべてダメというわけではない」という趣旨の擁護姿勢。ただ、例示している「ぶる速-VIP」の記事は、東京スポーツの記事の「全文を転載する形で作られている」わけで。著作権侵害(剽窃)じゃないの? という疑問が。そこも突いて欲しかったなあ。

CiNiiの論文データ、国会図書館が収集・保存・Web公開 ITmedia NEWS(2017年6月23日)

 「CiNii Articles」の論文データが国立国会図書館に長期保存され、「国立国会図書館デジタルコレクション」から配信されることに。「NII-ELS」の終了と「J-STAGE」への移行が間に合わないことによる「CiNiiから論文が消えた」騒動を受け、対応を行ったようです。国の機関が3カ月で対応するって、ものすごいスピード対応だと思います。大変だったろうなあ。

マイナンバーで本の貸し出し NHK 首都圏のニュース(2017年6月24日)

 「マイナンバー」ではなく、「マイナンバーカード」を図書カード代わりに使った本の貸し出しです。「記者の眼 – もう笑えないマイナンバーとマイナンバーカードの混同:ITpro」という記事が以前ありましたが、今回のこのNHKの報道でもタイトルだけを見て混同して混乱している方々が多く散見されました。本文は「マイナンバーカード」で統一されているんですけどね。タイトルに文字数制限があるのかどうかは知りませんが、誤解を招きやすいタイトルだと思います。Archiveはこちら

戦前の検閲、生々しい実態 「蟹工船」などデジタル公開 朝日新聞デジタル(2017年6月25日)

 戦前の内務省が検閲した際の書き込みが残っている本のデジタルデータが公開されました。特高警察の拷問によって殺された小林多喜二『蟹工船』の表紙には、「〈天皇陛下〉〈献上品〉などを削除するよう命じたが従わないため発禁にする」という書き込みがあるそうです。こういう資料が残っているのがスゴイと思ったら、占領軍が接収してアメリカ議会図書館に所蔵されていたものとのこと。日本はこういうの、すぐに捨てて証拠隠滅しちゃいますからねぇ……いまでも。

「誰でも本屋さんになれる」新サービス 小さな書店、街に広げる 月刊「事業構想」2017年7月号

 大阪屋栗田の少額取引サービス「Foyer(ホワイエ)」について。コンセプトは鴎来堂「ことりつぎ」と同じで、だれでも本屋をつくれる仕組みを提供するというものです。広がるといいなあ。


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