#本屋とデモクラシー in LOFT 9 イベントレポート

渋谷LOFT9

9月6日、渋谷で「本屋とデモクラシー」をテーマとしたトークイベントが行われました。現地から可能な限り記事にしてみます。

登壇者

(写真左から)

【司会進行】

・仲俣暁生(「マガジン航」編集人)

【出演】

・松井祐輔(小屋BOOKS、H.A.Bookstore)

・伊勢桃李 (元SEALDs)

・碇雪恵 (日販リノベーショングループ)

・梶原麻衣子 (月刊『Hanada』編集部員)

・辻山良雄 (「本屋Title」店長)

・藤谷治 (小説家、元フィクショネス店主)

発端は福嶋聡さんの『書店と民主主義』とのこと。

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なんで会社をやめて本屋を始めた?

辻山氏は新卒で18年間、リブロに勤務していた。サラリーマンだと「本を売る」というより、数字を追いかけている感じで、あまりこの先しあわせな感じではなかったという。そこで、自分で書店を「やってみたい」と思ったそうだ。

辻山氏

松井氏は、「やったほうがいい」と思ったから書店をやっているという。客観的に見たら大変そう。

松井氏

藤谷氏は、最初の就職先が丸善。その後別の仕事をしたのち、サラリーマン(上司・部下の関係とか)が嫌になってやめ、1998年ごろから下北沢で書店をやることにした。取次通して仕入れしようと思ったら保証金積まなきゃいけないと言われ、神保町の小さい取次から直接仕入れてきた。16年間「自分を売る」本屋をやってたが、本の売上で家賃が賄えることはなかったという。作家専業に。

藤谷氏

取次の体質は公務員

碇氏は「取次の体質は公務員」だという。なにが面白くて取次で働いているかよくわからない、とよく言われるそうだ。文化通信星野氏によると、戦中の日配の反省から、なるべく透明かつ中立な立場になろうという方向性が定められたらしい。取次はパブリックアクセスを担っているのだ。

碇氏

梶原氏が編集している『HANADA』は、だいたいいま6万部くらい。まだ図書館に入れてもらってないという。『WiLL』のころはページ数の変動があると、取次から「そういう場合は、はやく知らせてください」とよく怒られていたという。ちなみに『WiLL』のころは10万部。

梶原氏

伊勢氏は学生で、SEALDsではデザイン関係のことをやっていたという。

伊勢氏

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すべての本を並べられる書店はない

福嶋氏はジュンク堂なので、あらゆる本を並べるのが基本。しかし、辻山氏の書店は20坪なので、自ずとラインアップは限られる。個性やキャラクター性を押し出したほうがいい。リブロのころは1000坪あったので、ラインアップは多かったが、どちらかというとリベラル寄り。

ちゃんとした考えがないと、「売れるか売れないか」という物差しになってしまう。そうなると、なにか外部から言われたらシュンとしてしまう。物差しを持っている店がいまは少ないのではないか、と辻山氏は言う。

松井氏の店は7坪。在庫も1000冊くらい。あまりキャラクターを立てたくない、と思っている。蔵前には競合がないので、むしろなるべく総合的に並べたいと思っている。文芸から生活実用くらし系、文具系、ビジネスやちょっと弱いけど「働き方」をテーマに。他に店がないから、土日だけとはいえ、なるべく地域のニーズに寄りたいと思っているという。

辻山氏も、学参書以外はなるべく一通り揃えているそうだ。医学書も、一通りの病気について揃えていたりするという。

碇氏は、高円寺と荻窪のあゆみブックス『文禄堂』プロデュースに関わっている。あゆみブックスは人文書やデザイン書にこだわりのある品揃え(MD:マーチャンダイジング)をしており、それが魅力ではあるが、必ずしもそれらがたくさん売れているかといえば難しいという。

そもそも論壇誌やオピニオン誌がどれだけ読まれている?

『WiLL』は保守雑誌と言われるが、編集長はそういうことはあまり考えていない。梶原氏はおそらく編集部員で一番右だという。朝日新聞批判が一昨年くらい多かったが、大きい相手であればエッジを効かせられるという考え方。

『HANADA』もその流れでなんとなくガチの右寄りだと思われているけど、みうらじゅん氏の連載があったり、左寄り論者の記事が載っていたりと、わりと幅広く総合的な雑誌だったりすると仲俣氏。

SEALDsに入ったきっかけ

伊勢氏は、3.11が中学3年生のとき。横浜にいて、福島原発のことはなんとなく「どうなるんだろう」と思っていた程度だったけど、人権教育でドヤ街へ行った時に「作業員募集」などのポスターが貼ってあって、急に身近なものに感じられたという。SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)から、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)に。

藤谷氏は、吉本隆明氏のことを思い出したという(吉本ばななの父親で、偉大な批評家)。たぶんいま生きていたら、SEALDsのことを応援したと思うという。しかし吉本隆明氏の最後の本は、原発賛成だったという。

そもそもヘイト本を作っていると思っていないのに

梶原氏は、そもそもヘイト本を作っていると思っていないのに、「ヘイト本を作っている編集者として来てください」みたいな言われ方をして、それじゃ対話にならないじゃないか、と感じることがあるという。

(そこへ会場から、「同じ版元だろ!」などの声)

仲俣氏は、例えば『これで必ずガンが治る!』みたいな、限りなく嘘に近いようなタイトルも世の中には出ているが、そういう本をどうするのか? と問いかける。

さすがにこの本は書店に並べたくない、というのはある?

辻山氏は、並べている本はすべて自分で選んでいる。あまり自分の本に並べたくない本、という感覚で選んでいる。あまり政治的な主張もないので、周囲の書店が並べているかどうかなど、周囲の出方を伺っているようなところがあるという。例えば『絶歌』みたいな本だと、店頭には並べないけどいちおうストックにしておく、みたいな対応をしたりする。

客注は、書店に並べるわけじゃないので、どういう本でもあまり関係がない。

ジュンク堂の炎上は、顔が見えない書店だから攻撃されやすかったのではないか? と松井氏。ネット上で、顔が見えない人との接触機会が増えた。仲俣氏は、デモクラシーとは相手のことを尊重することから始まるという。

藤谷氏は、小説は多様性だという。ともに正しく、ともに間違っているのだ、と。最低限、差別と暴力はダメだけど、多様性を認めなきゃいけないという意見に反対する人はいないと思う。ただ、総論賛成でも、各論でズレる。デモに行ってみたけど、例えば「安保法制反対」には同意できるけど「安倍やめろ」は別に⋯⋯みたいな意見だと、居場所がなくなってしまう、と。

(すいません、私の力量ではまとめることができませんでした)

第2回は、碇氏と文禄堂で、というところまでは決まっているそうです。

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