「dマガジンがパソコン対応」「出版不況は終わった?」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #207(2016年2月8日~14日)

iPadのKinoppy

毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、ボクが気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「dマガジンがパソコン対応」「出版不況は終わった?」などが話題になっていました。

ASCII.jp:雑誌読み放題の「dマガジン」がWindowsやMacで利用可能になった! ※2016年2月8日

これは結構大きい改善。固定レイアウトの電子雑誌は、やはり大きいディスプレイの方が読みやすいですよね。残念ながらまだ「記事から探す」は非対応のようですが。なお、総務省の「平成27年版 情報通信白書」によれば、世帯普及率はパソコン78.0%、スマートフォン64.2%と、まだパソコンの方が上です。

[視点]EPUB 3.1のドラフト版を公開とコンテンツ側の課題 | OnDeck ※2016年2月8日

バージョンアップによって「過去のEPUBファイルとの互換性が失われる可能性を示唆」しているそうで、主にEPUBの制作に関わっているクラスタでちょっとした騒ぎになっていました。まだドラフト(下書き)ですから確定ではないのですが、日本として困る実態があるのであれば、IDPFに参加している企業・団体はしっかり注文を付けるべきでしょう。

そういえば昨年7月に、来日していたIDPFのビル・マッコイが「オープンソースとはいえ、単にメンバーになるのとコントリビュータ(貢献者)になるのとでは、扱える範囲が違うから。汗をかいた人間とお金を払った人間の意見が強くなるのは、デジュール(標準規格)の世界のスタンダード」と言っていたのを思い出しました。大丈夫なのかな?

【新文化】 – 太洋社「自主廃業に向けた説明会」、書店と出版社から質問相次ぐ ※2016年2月8日

太洋社の説明会詳報。視界の範囲では、出版社の方は比較的安堵の声。対照的に、買掛金の回収対象となる帳合書店側の影響はかなり大きいようです。すでに茨城県つくば市の友朋堂書店や、鹿児島県のコミック専門店ひょうたん書店が、閉店案内をしています。

紛糾!AI著作権の検討委員会。3つの課題を同時に解決する名案は? ※2016年2月9日

AIが生み出す作品に著作権を与えるべきか? という問題。名前が挙がっている議論の当事者以外の部分は、どうも日刊工業新聞記者の意見っぽい。例えばこの辺り。

類似創作物を排斥できるなら、AIに投資してヒットコンテンツの寡占を目指すことも不可能ではない。

いやいやそれはあまりに牧歌的過ぎでは。人工知能の分野は、既に膨大なデータを持っているGoogleが圧倒的に優位だと思いますよ?

福井健策先生が年末に「人工知能と著作権」というタイトルで寄稿したこちらこちらの記事も参考に。

出版不況は終わった? 最新データを見てわかること – CNET Japan ※2016年2月10日

出版科学研究所の2015年出版物発行・販売概況と電子出版市場規模の推計発表を読み解く、ご意見番・林智彦さんによる記事。「深刻なのは雑誌(コミックスを除く)」という結論は以前から変わらず。コミックスと電子出版を含めた「書籍」はむしろ上昇傾向で、「出版不況」ではなく「雑低書高」への変化だ、という話です。相変わらず素晴らしい。

ただ、この記事では触れられていないことで、3点気になることが。

  • これは販売の数字だが、雑誌には広告売上もある(ここはインターネット広告に奪われているはず)
  • 書籍全体の売上は伸びていても、出版点数も増えているから、1点あたりの売上は恐らく減っている
  • 電子出版は特別な事情がない限り「絶版」が起こらないため、過去の出版物もすべて含めた売上になる(新刊が厳しい)

きっと林さんのことだから、既に次の弾は用意していると思いますが。

本読まない高校生 半数 : 地域 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) ※2016年2月10日

福島県のローカルニュースですが、こういう数字には騙されやすいのであえてピックアップ。全国学校図書館協議会が毎日新聞社と共同で毎年行っている調査を参照してみると、出版市場がピークだった1997年の高校生不読者率は69.8%もあったのですよね。いまは半数なら、20年前よりマシになっているわけです。

【寄稿】グーグルはいかに作家から収奪しているか – WSJ ※2016年2月9日

Googleの書籍全文検索サービス「Googleブックス」は著作権違反なのかそうではないのか? – GIGAZINE ※2016年2月12日

Authors Guildの主張と、反論。Authors GuildとGoogleの訴訟は、Googleの「フェアユースである」という主張が地裁・高裁で認められたので、あとは最高裁の判断を待つのみという段階です。最後の攻防戦といったところ。

Authors Guildの「経歴15年以上の作家の年収は67%減少している」という指摘は、Googleがやっていることとの因果関係が説明できていないので、説得力に欠けます。

楽天、電子書籍子会社のkobo株式を減損処理 「事業計画に遅れ」 – ITmedia ニュース ※2016年2月12日

Koboの買収額は3億1500万ドル、OverDriveの買収額は4億ドルです。どちらもあっと驚く買収劇でしたが、Koboの事業計画には遅れが出ているようです。うーん、決算資料確認しておかないと。

EBook2.0 Magazine – 大手出版社はデジタル戦線で後退 (1) ※2016年2月12日

EBook2.0 Magazine – 大手出版社はデジタル戦線で後退 (2) ※2016年2月12日

Amazonをクロールして独自に調査分析している Author Aernings の最新レポートについて。私は、このデータを信用していいのかどうかいつも首を傾げているのですが、鎌田博樹氏は信頼できると思っているようです。そもそもAmazon以外は無視しているけど、それでいいのか? という気も。

著作権保護:対日「戦時加算」撤廃 豪、TPP発効後 – 毎日新聞 ※2016年2月14日

いちおう朗報と言っていいでしょう。残る問題は、アメリカ、カナダ、ニュージーランドです。


日本独立作家同盟の次回セミナーは「ラノベを制するものは文芸を制す――三木一馬編集長と学ぶ電撃流ラノベ術」です。チケットはPeatixにて、お早めに。


Weekly 見て歩く者 by 鷹野凌」というGoogleグループを作りました。登録すると、毎週この「出版業界関連の気になるニュースまとめ」がメールで届くようになります。ときどき号外を配信するかも? ブログの更新チェックが面倒な方はぜひ登録してください。無料です。

タイトルとURLをコピーしました