「インターネットの自由」を守るEFFの活動 ── MIAU設立6周年記念イベント「MIAU祭2014」レポート #miaujp

Maira Sutton Electronic Frontier Foundation (EFF) Global Policy Analyst

2014年3月15日に国際大学GLOCOM ホール(東京・六本木)で行われた、MIAU設立6周年記念イベント「MIAU祭2014」のレポートをパート別にお届けします。今回はElectronic Frontier Foundation(EFF:電子フロンティア財団) の Maira Sutton 氏(上写真)による基調講演です。

動画はニコニコ「MIAUチャンネル」に載っていますので、詳細を確認したい方はそちらをご覧下さい。トータルで5時間半のイベントです。

EFFは1990年に創立された、サンフランシスコに本部を置く非営利組織で、言論の自由をデジタル社会において守っていくことを使命としています。ちなみにMIAUは、EFFをモデルにしているとか。

Electronic Frontier Foundation (EFF)

Electronic Frontier Foundation | Defending your rights in the digital world

Maira Sutton 氏の基調講演は、主にこのEFFの活動についての説明でした。なお、Maira Sutton 氏の母親は日本人で、毎年千葉に里帰りで来ているそうです。日本語でのスピーチは慣れていないそうで、正直、ところどころ怪しい単語や聞き取りづらい部分があったため、ボクの理解の範疇で意訳しています。正確なところを知りたい方は、こちらの動画をご覧下さい。

冒頭、インターネットが何を人々にもたらしたか、さまざまな事例を紹介します。以前では考えもつかなかったようなことが、手のひらの中でできるようになった、と。

WikipediaやInternet Archive

WikipediaやInternet Archiveなどの事例。

ファンアート、コスプレ

ファン・フィクションやコスプレの事例。

SecureDrop

また、最近できたばかりという “SecureDrop” が紹介されました。これはオープンソースプラットフォームで、National Security Agency(NSA:アメリカ国家安全保障局)のような組織から匿名の情報源を守るための仕組みだそうです。Wikileaksと同じような役割かな?

|冫、)ジー

テクノロジーは人々に自由を与えますが、同時に醜い側面もあります。いじめ、男女差別、人種差別、ハッキングなど、社会の負の部分です。技術はただの道具ですが、使い方によって人間を映し出します。それを理由として、国家による規制や禁止の動きがあります。しかし、規制や禁止をしても根本的な解決にはならず、表面的な問題を見えなくしているに過ぎません(という趣旨のことを言っていたと思われます)。

Tor” はインターネットを匿名で利用できるツールです。警察、外交官、活動家、政治批判者などが利用しています。犯罪者だけが使っているわけではありません。しかし、政府はこれが悪の温床だとし、NSAが傍受しようとしているそうです。監視体制の強化や著作権法の強化などによって、インターネットの自由が奪われていきます。

MIAU

日本では、MIAUがこうした動きと戦っています。Maira Sutton 氏は日本の事情にあまり詳しくないので、この後の講演を楽しみにしているとのことでした。

海外に住んでいる人は、日本の問題に特に関心を持っているそうです。というのは、日本のデジタル文化はとても進んでいる、と思われているからです。また、「インターネットユーザー」は共同体意識を持っているので、日本で変な制限規定ができてしまうと困る、と。


ここからはEFFの活動について。

EFF弁護士チーム(写真撮りそこねた)は、裁判を起こすことが仕事です。というのは、アメリカではこうした規制への動きを、裁判で変えられるからです。対象は、監視法、著作権法、特許法、情報公開法などです。

技術者チームのお仕事

EFF技術者チームは、オンラインセキュリティのためのツールを作っているそうです。例えば “HTTPS Everywhere” というブラウザプラグインは、どこのウェブサイトでも自動でHTTPSにしてくれるとか。

活動チームのお仕事

EFF活動チームは、不正な法律と戦い正当な法律を支えます。ブログで施策を一般の人に説明したり、メールを送ったりしているそうです。

国際チームのお仕事

EFF国際チームは、投獄されたブロガーを開放する動きや、海外での検閲法反対を促します。著作権法強化への動きを止めたり、インターネットの自由を脅かす動きを止めるため、さまざまな活動をしています。


EFFが最近重視しているのは、世界的な監視体制との戦いだそうです。EFFはNSAが監視活動を行っていることは以前から知っていたのですが、それがどの程度まで及んでいるのか分かっていませんでした。

NSAが電話を傍受していた部屋

2006年にマーク・クラインという内部告発者が、NSAがベライゾンの全電話記録を保存している証拠をEFFに提供、EFFはユーザーを代表して裁判を起こし現在も係争中だそうです。内部告発者の情報が、裁判で証拠として認められなかったとか。

エドワード・スノーデン

2013年6月に、エドワード・スノーデンによってNSAの監視体制が暴露されました。

NSA

Google、Microsoft、Apple、Facebookなどの名だたるIT企業のサーバーが盗聴されていたり、世界中で何万件ものハッキングを行っていたことが判明しました。

著作権

「インターネットの自由」に対するもう1つの問題点は、「著作権」です。著作権を守るために、インターネットを検閲する法律があります。保護期間の延長や、刑罰も厳しくなってきました。

プロバイダ責任制限法やデジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)があるので、法的責任を逃れるために検閲したり削除したりフィルタリングしたりします。ISPはそのコンテンツが適法かどうかをあまり気にせず「とにかく削除」するので、例えばアーティスト本人がYouTubeへアップロードした動画が、謎の権利者団体からのDMCA通報で消えてしまったりします。

あとは、Digital Rights Management(DRM)の問題です。DRMの目的は著作権を守るためだったのに、いまはユーザーができることを抑制するためのものになっています。DRMを破ると犯罪になってしまう場合があるので、視覚障害者がフォーマット変換するのをためらったり、セキュリティ研究者が研究結果を公表するのが怖くなったりしています。

Trans-Pacific Partnership (TPP)

Stop Online Piracy Act(SOPA:オンライン海賊行為防止法案)と Protect Intellectual Property Act(PIPA)は反対活動によって成立が阻止され、しばらく著作権を厳しくする法案は通過しづらくなりました。ところがこんどは、Trans-Pacific Partnership(TPP:環太平洋戦略的経済連携協定)の秘密交渉によって、著作権に激しい制限が加えられようとしています。

TPP交渉が厄介なのは、対象範囲が広範な貿易協定だというところです。例えばニュージーランドは乳産業が強いため、アメリカの乳製品関税を撤廃させるための交渉材料として、著作権を代わりに差し出されてしまう、といったことが起こりえます。日本も農業を守るために、著作権など他の分野で譲歩するんじゃないかと言われてますよね。

福井健策さんも、この記事が出た時はかなり怒ってました。


では、どうすればいいのか? 何ができるのか? EFFは、3つの活動方針を提案します。

1. 意識を高める

意識を高める

まず、ネットの自由に関する問題を公表すること。説明をして、普通の人が理解できるようにすれば、キャンペーンを支持してもらえるようになります。また、立法者が理解できていないとまた妙な法案が出てきてしまうので、彼らに技術の実態を説明するのも大切な活動です。

2. フリーオープンソースソフトウェア(Free/Libre and Open Source Software:FLOSS)の使用を助長

FLOSS

ソフトウェアの使用・学習・変更・配布する自由を守るためのライセンスに基づいたソフトウェアです。スノーデンの告発により、多くのソフトはセキュリティのバックドアがあることが分かりました。FLOSSのプラットフォームやハードウェアは透明なので、そういったバックドアがないことを保証できるそうです。

3. 共同体意識を促進する

共同体意識を促進

活動を「楽しくする」ことは大切です。活動へ参加することに、誇りを持てるようになります。つまらないことだと思われるかもしれませんが、Tシャツとかシールといったものを用意するのは重要なことです。MIAUに入ることを特別だと感じてもらうことができます。

インターネットの自由を勝ち取れ!

EFFで働いていて一番嬉しいのは、みなさんのような素晴らしい人々と会えることです、と Maira Sutton 氏はいいます。世界的な共同体のメンバーの1人として光栄に思っていると。MIAUのメンバーになって、私たちをサポートして下さいと締めくくりました。

質疑応答

Q. EFFの規模は?

A. スタッフは50人。会員は世界に20万人です。バジェット(予算?経費?)は分からないです。

Q. 弁護士がたくさんいるが収入は?

A. 20万人のメンバーからのバジェットです。メンバーシップは毎月35ドル~1000ドル。「Humble Bundle」というクラウドファンディングプラットフォームからの収入もあります。

Q. どうやって一般ユーザーの意見を政策に反映している?

A. ブログを書いて、メンバーにメールで呼びかけをしています。


最後にだいじなことなのでもう1回。「MIAU祭2014」の会場では、こんな紙が配られていました。お試し版EPUBのURLは、「来場者限定」と書いてあるのでモザイクかけてあります。

MIAUメールマガジン「ネットの羅針盤」

セッションの途中で津田氏がポロッとおっしゃっていましたが、現在会員数は300人くらいだそうです。消費税率上がったので、いまは月額540円です。MIAUの活動資金としては、かなり心もとないものがありますね……お申し込みは「MIAUチャンネル」にて。

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