DVDリッピング規制によってレンタル業界はどうなる?

(※写真:写真素材 足成より)

DVDリッピング規制によって何が起こるか予想してみた」というエントリーで、ボクはこんなことを書きました。

さてここで問題になってくるのが、「レンタル」という業態です。DVDを借りてきて、リッピングしておいて、好きなときに観る、という行為が今回の法改正によって違法になります。

実は、今回の法改正によって、違法ダウンロード刑事罰化より、DVDリッピング規制に対して反発の声が多かったのが、ボクには意外でした。「だったら金輪際、DVDなんか借りねぇよ!」という何人かの声を目にしています。

要するに「レンタル」という業態がこの先やっていけなくなるだろう、という予測をしているわけです。それほど多くの人に読まれたエントリーではないので、恐らく無関係だと思いますが、ボクの予測とは反対の記事を見つけたので、もう少しこの件について掘り下げてみたいと思います。

マイナビニュースの牧野武文さんが書かれたレポートです。

Q:レンタル店が営業に行きづまってなくなってしまう?

今回の改正案により、近所のDVDレンタル店が消えてしまうという懸念を抱いている人も多いようだが、それは早計だ。確かにレンタルしたDVDをPCにリッピングすることは違法となるが、もともとそういった行為をしている人はきわめて限られていると思われる。多くの人は、レンタルしたDVDをプレーヤーなどで再生して楽しんで返却しており、「リッピングができないからレンタルしない」という人がDVDレンタル店の経営に大きく影響するほどの割合を占めているかは疑問だ。

※下線太字はボクが追加しました。

果たしてそうなんでしょうか?ボクも「だったら金輪際、DVDなんか借りねぇよ!」と言ってる人が周辺で何人かいたという、限られた観測範囲で目にしたことだけが根拠なので、ボクが間違っているのかもしれません。

そこで、そういう数字が無いかどうか調べてみたのですが、「レンタルをリッピング」に焦点を当てた調査というのはなかなか無いようで、古いデータ、しかも海外のものしか見つかりません。

5年前のアメリカの数字ですが、当時はかなり少なかったようです。

映画などのDVDのコピーを作成したと答えた人たちが、過去6カ月間にコピーしたタイトル数は、米国では1人当たり平均12タイトル、英国では13タイトルだった。年齢層別では英米ともに25~34歳が最も多かった。また大半の消費者は自分で購入したDVDをコピーしているが、レンタルしたり、人から借りたりしたものをコピーしている人も多い。

レンタル→コピーの数字が無いのが残念ですが、増加傾向にあることに業界関係者は危機感を覚えているようで、記事の末尾にはこんなことが書かれています。

Futuresourceは、映画会社のDVD売り上げが減少傾向にある現在、家庭でのコピーを防止することが非常に重要だと指摘している。

ところで、家庭用レコーダーの歴史を調べてみると、ブルーレイレコーダーが本格的に普及し始めたのが2007年秋頃らしいので、この「家庭でのDVDコピーが増加」という傾向は、機器の普及というのが大きな要因なのかもしれません。日本の場合、2008年には「コピーワンス」が「ダビング10」に緩和されたというのも大きいかもしれません。

ただ、恐らく今はもう「家庭でのDVDコピー」は減少傾向になっていると思われます。それは、ここ数年でハードディスクの容量が飛躍的に大きくなったからです。いちいち円盤に焼かなくても、ある程度ならハードディスクに貯めておけるわけです。

さてこういう過去を踏まえて今はどうなっているか。いろいろ調べたんですが、「レンタルをリッピング」の実態について、最新のデータが見つかりません。たぶんボクの調べ方が悪いのだと思うので、もしご存知の方は教えて頂けると嬉しいです。

ちなみにボクが「レンタル」という業態に未来が無いという予測をしたのは、DVDリッピング規制によって「レンタルをリッピング」が違法になることだけを根拠としているわけではありません。そもそもDVDやブルーレイの販売数が年々落ち込んでいること。レンタル業界の売上も年々落ち込んでいること。映像コンテンツをオンラインで簡単に視聴できる仕組みが整ってきていること。などなど、複合的な判断からです。

実は、レンタル業界の売上は年々落ち込んでいますが、貸出枚数は飛躍的に伸びています。つまり貸出単価を下げて、枚数で売上をなんとか稼いでいるというのが現状です。

貸出枚数は増えても、ユーザーの可処分時間が増えるわけではないので、貸出期間中には観られない=リッピングしてタイムシフトで観る人が多くなっているのではないか?そういう客が、リッピングを封じられることによって枚数を借りなくなるのではないか?という予測をしています。

まあ、実際のところどうなるか、未来は判りませんが。

[追記]

指摘を頂いたので補足しておきます。「家庭用レコーダーの歴史」の辺り、家庭用レコーダーは市販DVDをリップもコピーもできないことはボクも認識しています。念頭にあったのは、放送を録画したものをDVDに焼くという行為です。それが複数枚できるようになったから「友だちに配る」ことが簡単になった。TV放映したものなら「レンタルしなくてもいいじゃん」的な場面が増えていったのではないか、というようなことを考えながらこの段落を書いてました。説明不足で申し訳ありません。

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