出版業界に激震!?書籍の「買い切り」制度導入で何がどうなるか

出版関連のエントリーを書いていたら、どえらいニュースが飛び込んできました。

何というタイミング。

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C889DE1EAEBEBE3E0E7E2E0E0E2E0E0E2E3E08698E0E2E2E2

日販、本「買い切り」導入へ協議 出版社・書店と:日本経済新聞

出版取次最大手の日本出版販売(日販)は書籍の取引で、書店からの返品を制限する「買い切り制」を導入する方向で大手出版社や書店と協議に入る。現在、書店は売れ残った書籍を原則として自由に返品できるが、取り分(売上総利益)が少ないうえ、返品コストは出版社や取次の収益を圧迫している。市場の縮小が続き、電子書籍の普及も始まっていることから、商習慣を改め業界全体の生き残りにつなげる。

どえらいことですよこれは。

これによって、出版関連の業界に何が起こるか、予測してみます。

まず、返本制度があることが理由で存在していた、再販価格維持制度が無くなります。つまり、書籍が定価販売されなくなります。書店でバーゲンセールをやるようなことも、珍しくなくなるでしょう。

書店は今までのように返本ができなくなるので、ラインナップを厳選するようになります。恐らく、どういう本を並べるかで、書店の特色が出るようになるでしょう。というか、特色を出さないと間違いなく生き残れません。逆に言うと、新刊がどの書店でも並んでいるような状況は無くなります。

自転車操業状態の出版社は、息の根が止まります。今は、取次店へ本を卸すと代金全額が支払われるのですが、返本があるとその分の代金を返金しなければなりません。その前に次の新しい本を発行して、それを返本返金代に充てているという話です。それができなくなります。

出版社は新刊初版の部数を、今までより抑制することになるでしょう。今まで取次任せだったのが、書店側が仕入れのイニシアチブを握ることになるからです。つまり、返本を見越した刷り部数、なんてことはできなくなります。現状、返本率は平均で4割です。

初版の刷り部数が少なくなると、著者の収入も少なくなります。今は多くの場合、原稿料とは別に、初版印税というのが収入になっているはずですが、それが少なくなります。恐らくこれを期に、電子出版同様「実売印税」という形へ移行していくのではないでしょうか。

そして、今まで遅々として進まなかった電子書籍化が、一気に進むことになるでしょう。

http://profile.allabout.co.jp/w/c-68189/

日経記事;”日販,本「買い切り」導入へ協議 出版社/書店と”考察 – コラム・事例 [All About プロファイル]

こちらのエントリーにもあるように、この動きは間違いなく Amazon 対策だからです。

怖いのは、このニュースソースが日経のみという点。これから協議に入るという段階でリークされているということは、こういう動きをよく思っていない人が話を潰そうとしているのではないかと危惧しています。

この動きは間違いなく業界全体の健全化につながりますし、消費者にとってのメリットも大きい。是非とも早期に、実現して欲しいものです。

[追記]

電子書籍化がなぜ進むか?という部分に関して補足しておきます。今までは出版社が「これは売れ筋ではない」という判断をしていても、取次店へ卸せば一旦その代金が入金されるので、発行されてきたという経緯があります。返本率が平均で4割ということは、もっと返本率が高いものもあるということです。しかし返本制度が無くなると、出版社は極力ギャンブルを避ける方向に動くため、「これは売れ筋ではない」と判断された書籍は印刷されない(=電子版だけの発行になる)可能性が高くなると思われます。電子版なら、在庫リスクはありませんからね。電子版だけ発行した段階で評判が良ければ、綺麗な装丁の書籍を完全受注生産で発行すれば、ほとんどリスクを負わなくてすむわけです。

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