「記憶」しておくことは大切だけど、自信がないから「記録」する

Google+ のストリームで「こんど試験がある。嫌だなあ。」というような投稿を見かけ、ふと思い立ってこんな問いかけをしてみました。

誰もが簡単にネットに接続できて、一生かかっても絶対見きれない膨大な情報に接触できる時代における、記憶力を問うテストの意義って何だろう?

https://plus.google.com/u/0/109147348593403414073/posts/AdNa7omDRwG

リンク先を見て頂ければ判ると思いますが、びっくりするほどたくさんの反応がありました。ボクの想像では賛否両論になるかと思ったのですが、「記憶力を問われる場面は多いので意義はある」という意見が大勢を占めました。みなさんの回答が非常に興味深いので、是非リンク先を読んでみてください。

ところでこの問いかけをしようと思ったのは、実は数日前に岡田斗司夫さんのこのエントリーを読んでいたからなんですね。

日刊SPA!「現代のオトナが捨てるべきこと 『ネット、トレード、自分探し』」インタビュー・ノーカット版(岡田斗司夫公式ブログ)

http://blog.livedoor.jp/otakingex/archives/51303573.html

現代のオトナが捨てるべきこと 『ネット、トレード、自分探し』(日刊SPA!)

http://nikkan-spa.jp/117549

余談ですが、ノーカット版と要約されたSPA!の記事を見比べると面白い。岡田斗司夫さんは「FX取引は中産階級のパチスロって呼んでるんです。」と名指ししているのが、SPA!掲載時点では「短期で利ざやを狙う投機的な商品」に言い換えてるんですね。広告貰えなくなっちゃうからだろうなーとつぶやいたら、岡田斗司夫さんから「明察!」と褒められました。

本題へ戻ります。

岡田「情報で成功してる人は本を読んでますよ。ネットはおやつ、主食は本。ダメな奴ほど、それが逆転していくんです。おやつで栄養価が取れると思うんですよ。それでビタミン剤を欲しがるんです。本をうまくまとめたやつが欲しいとか。まとめサイトないのとか、それは栄養剤なんですよ。そういうのに慣れると咀嚼力が下がっていって、結局同じ情報を見ても分からないんです。これがネット中毒になっている人の特徴で、全く同じ情報を得ていても、読みが恐ろしいほど浅い」

これって、単純に「ネットで得られる情報は薄っぺらい」という話ではないと思うんですね。長い説明を見ると「三行で」と言ってしまうような習性を揶揄している。そうやって得た知識って、判ったつもりになってしまうのがタチが悪い。簡単に騙されます。ところが、長い文章を丹念に読む訓練ができている人は、それを要約することもできるし、矛盾に気づくこともできるし、知識を活用することもできる、ということだと思うんです。

つまりボクは、冒頭の投稿途中のコメントでも言ってますが、問い掛けをする前から「記憶には意義がある」と思っていました。だから、本来ならは「ボクはそう思わないけど」という前提を付け立場を明確にした上でこの問い掛けをしないと、ボクが「ネットは万能だ」と盲信しているように誤解されかねないし、問い掛け自体もフェアじゃないんですよね。わりと軽い気持ちで投稿したら存外な反応があったので、少し反省しています。

また、小飼弾さんが再共有投稿で、二つの記事を紹介してくれました。

“忘却力”で仕事する──404 Blog Not Foundの小飼さん

http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0708/09/news106.html

記憶とは、傷である。

http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51008678.html

1つ目の記事は、ここが印象的でした。

大切な予定を忘れてしまうリスクがあるようにも思えるが、逆に自分の“忘却力”に信頼を置いている。大事なことだったら忘れるはずがないし、どうでもいいことであれば忘れる。いわば、脳の力でふるいにかけるのだ。

これ、ボクもよく言うんです。「忘れてしまった要件は、大した要件じゃない」って。ただ、これを言う時は、忘れてしまって思い出せない時なんですよね。ボクの場合、ただの言い訳です。正直言ってボクは自分の記憶力にはあまり自信がないので、なるべく「記録」に残すようにしています。特に写真はいい。その景色にレンズを向けた時の気持ちや会話が蘇ってくる気がする。記録をしておくと、記憶を呼び起こすための助けになるんですよね。

2つ目の記事は「嬉しい記憶も怒りの記憶も哀しい記憶も楽しい記憶も、全て傷の中にある」という趣旨なのですが、なぜか最近読んだこの記事を思い出しました。

「トラウマを消す薬」を米軍が研究

「トラウマを消す薬」を米軍が研究
兵士たちのPTSD(心的外傷後ストレス障害)問題を抱える米国防総省が、「恐怖の消去」に役立つとされる、D-サイクロセリン(DCS)を使った曝露療法の研究に支援を開始した。

(※WIRED.jpの記事はURLに日本語が入っているので、短縮しておきます)

更に遡ると、この記事を読んだ時には伊藤計劃さんの「虐殺器官」を思い出しました。思い出した瞬間は「トラウマを消す薬」が話中に登場したような気がしていたのですが、よくよく思い出してみると、トラウマが起きないように戦地へ赴く前に薬物などで脳に細工をしておく、という話でした……あれ? この記憶、本物かなあ?

ところで、磯崎哲也さんが再共有投稿で教えてくれたのですが、こういう記憶にまつわる話で「記憶屋ジョニィ(Johnny Mnemonic=JM)」という短編小説と映画があるそうですね。映画はキアヌ・リーブスが主演で、北野武さんも出演している作品です。興行的には失敗だったようですが、磯崎さんはかなり好きな作品だそうです。Amazonの評価もそれほど低くないですね。

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ちなみに小説の方は、短編が収録されている本の在庫が Amazon にはもう中古しかないみたいですね。ポチっておきました。

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