【書評】伊藤計劃さんの「ハーモニー」を読んだ

「虐殺器官」といっしょに購入。伊藤計劃氏による”最後の”オリジナル長編。

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

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伊藤 計劃

早川書房

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エピローグで 「 etml とはそういう意味だったのか!」 と仕掛けに驚くのと同時に、ミァハが思い描いた「意識が消滅した世界」が舞台設定通りなら実現できないという矛盾に気がついてしまいました。

つまり、子どもには WatchMe が入れられていないのだから、今後「意識のある子ども」対「意識の無い大人」という対立構造が生まれる可能性がある。「意識の無い大人」になりたくない子どもによる反逆(それはミァハたちが自殺を図った動機と似ている)が、充分起こりえる素地を残しているというわけです。

もっと言えば、子どもだけでではなく、ゾーニングの外でWatchMe を入れていない人々が全人類の2割。ハーモニー・プログラムが動き出した後の世界(エピローグ)では、このことにまったく触れられていません。

もっとも、エピローグは記述者視点ですから、都合の悪い部分は省かれているのかもしれません。だけど、ミァハ達が自殺を図る動機が「WatchMe を入れられたくないから」 なのですから、この点はかなり物語の中心軸に近い所だと思うのです。

父親と出会い「意識が消滅する」 という話になった直後に「あれ?子どもたちはどうなるんだ?」 という疑問を抱いてしまい、それが結局最後まで解決されなかったため、読後非常にモヤモヤしたものが残ってしまいました。

そしてこれは、著者の死去により、永遠の謎になってしまいました。

(もしかしてボクが大切な何かを読み飛ばしているかも?)

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