「書協が軽減税率適用を求めるため『有害図書』を自主規制する第三者委員会を設置する方針」「海賊版リーチサイト規制法案提出へ」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #327(2018年6月11日~17日)

エビちゃん

先週は「書協が軽減税率適用を求めるため『有害図書』を自主規制する第三者委員会を設置する方針」「海賊版リーチサイト規制法案提出へ」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年6月11日~17日分です。

日経電子版、有料会員60万人に 登録会員は400万人超え〈日本経済新聞(2018年6月7日)〉 はてな

有料会員50万人突破が2017年1月。40万人から50万人までは約2年かかっており、そこから1年6カ月で60万人突破とペースが上がっています。月額税込4200円、電子版+宅配だと5509円で電子版部分は1000円というモデルなので、併読率が気になるところですが、最近の媒体資料(PDF)では公開していない模様。載っていたころのデータ(2015年7月1日時点)では、有料会員数43万人のうち19万7000人は朝刊も電子版も有料で購読と、当時すでに電子版単独契約のほうが多くなっていたようです(当ブログの過去記事より)。

軽減税率、確実に導入を 新聞協会・白石会長 書籍・雑誌にも適用求める 活字議連総会〈日本新聞協会(2018年6月11日)〉 はてな

書籍出版協会の相賀昌宏理事長が「流通コードを管理する自主管理団体の下に第三者委員会を設置し、有害図書の排除に努める」ことで書籍・雑誌への軽減税率適用を求めると述べているそうです。

以前、菅義偉官房長官が「(どの本が有害か有害ではないかを)政府で決めると表現の自由などの問題がある。有害図書は自主規制してもらい、議員立法で決めることが必要だ」などと言っていたのですが、当時参院議員だった山田太郎氏の質問によって、それは憲法87条の「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする(租税法律主義)」に反する、すなわち、自主規制で税率を決めることはできない、という答弁を引き出し決着しています。それでもなお業界団体は自主規制に突っ走り、議連もそれを評価しているようです。なに考えているんだろう?

「海賊版」誘導サイトを規制 著作権法改正へ〈NHKニュース(2018年6月12日)〉 はてな

文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会で数年にわたって議論されてきたリーチサイト規制が、いよいよ次期通常国会で法案提出される模様。今回発表された「知的財産推進計画2018(PDF)」はこちら。インターネットユーザー協会(MIAU)は2017年6月30日のヒアリングに参加し、反対意見を出しています。EU司法裁判所が「侵害コンテンツへのリンクは著作権侵害」と判断した際の解説記事を参考までに。リンク行為が営利目的であるかどうか、リンク先が侵害コンテンツと知っていたかどうかが、違法かどうかの判断材料になっています。

英国、2018年7月1日から公共貸与権の対象を電子書籍・オーディオブックに拡大〈カレントアウェアネス・ポータル(2018年6月12日)〉 はてな

既報通りですが、公共貸与権の対象範囲をデジタル資料にも拡大です。日本ではなぜ導入議論が進まないんだろう?

神戸市が楽天の「電子図書館サービス」試験導入 スマホ・PCで電子書籍を借りる〈ITmedia NEWS(2018年6月13日)〉 はてな

「Rakuten OverDrive」の新たな導入事例。2017年11月には浜松市とも同様の協定を締結しています。青空文庫のコンテンツが多いことについて批判する声をチラホラ見かけますが、日本語書籍がまだ数万点しかなかった楽天KoboやKindleストアが始まったばかりの2012年ごろを思い出します。テキストファイルやXHTMLのままではなく、表紙が付いてEPUBにパッケージ化され縦書きで読めるというだけでも大違いではないかと思うのですが。

ただ、電子書店にはいまでは数十万点がラインアップされるようになっていますが、マンガや小説などエンタメ系が中心。5月の日本図書館情報学会で発表された「日本における電子書籍化の現状:国立国会図書館所 蔵資料を対象とした電子書籍化率の調査」によると、発行形態別電子化率は、コミック64.8%、文庫44.0%、新書30.4%、ムック他15.1%、単行本11.8%、それ以外は5%以下というのが現状です。

「出版社との二人三脚、もう出来ない」 個人作家が生き残るには 漫画家・森田崇さんの場合〈ITmedia NEWS(2018年6月13日)〉 はてな

高円寺パンディットで6月8日に行われた『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』の著者・森田崇氏のトークイベント。私も聞きに行ってました。記事ではKDPでの成功話が中心になっていますが、今後マルチストア展開するため法人化した、という話も出ていました。

それ以外で印象的だったのは、MCの堀田純司氏が(いつものように)酔っぱらっていて、森田氏に「そうはいっても、やっぱ森田さんはエリートっすよお」とボヤいていたこと。要するに「無名な作家はどうすれば」という話。客席にいた私に「文字モノはどうなんですか?」といきなり話を振られ、コミックに比べると市場がまだ小さい現状を説明することに。まだ一桁足らない。その理由は、前述のとおり電子化率がまだ低いから。ずっと言い続けてますが「売っていないものは買えない」のです。

政府による海賊版サイトへの緊急対策を受けての会長声明〈第二東京弁護士会ひまわり(2018年6月14日)〉 はてな

第二東京弁護士会からも反対声明。ブロッキングをやるなら「立法措置を検討すべき」という結論は私と同じ。


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