「無断で黒塗り『殺戮モルフ』の単行本発売中止」「CCCが主婦の友社を買収」「hon.jpサイト閉鎖」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #302(2017年12月11日~17日)

BOOK☆WALKER

 先週は「無断で黒塗り『殺戮モルフ』の単行本発売中止」「CCCが主婦の友社を買収」「hon.jpサイト閉鎖」などが話題に。毎週月曜恒例……が今回は2日遅れの、出版業界関連気になるニュースまとめ、2017年12月11日~17日分です。

日本SF作家クラブ 受賞作、世界に売り込み 一般社団法人化で新事業積極的に 毎日新聞(2017年12月11日)

 日本SF作家クラブが8月に一般社団法人化していたのですが、ようやく一般紙で記事になりました。これまでどこも報じてなかったはず。藤井太洋氏が会長になられてから、いろいろ組織改革が進んでいます。すばらしい。

桑原蔵書廃棄が問うもの 古書店主「行き場なき現状に危機」 京都新聞(2017年12月11日)

 故桑原武夫氏の蔵書を破棄した職員だけがやり玉にあげられ処分されたことへの違和感表明と、古書店の立場からの警鐘を鳴らす記事。物理的な保管場所がないのに寄贈されても受け入れることはできないわけで。ただの複製物として扱うのか、特別な人が持っていた特別なモノとして扱うのか。書き込みがある本なら別の意味で資料価値が出てくる可能性はあるのでしょうけど、一般的には書き込みがあると古書としての価値は下がってしまいます。悩ましいですね。

【お知らせ】COCORO BOOKSに改称します。 電子書籍のCOCORO BOOKS(2017年12月11日)

 既報通り「GALAPAGOS STORE」が改称して「COCORO BOOKS」になりました。イメージ一新にはいいと思うのですが、ドメイン名にはまだ残っています。

早川書房が「ネット発の官能小説」を書籍化したワケ ITmedia ビジネスオンライン(2017年12月12日)

 早川書房による「小説家になろう」発作品の書籍化について。Twitterでエゴサーチして「ハヤカワの編集者は○○を読むべき!」って言われた作品から読んでいるって、それ明かして大丈夫でしょうか? ちなみに記事の反響を見てると「性描写はあるけど、官能小説ではない」と言われています。ハヤカワの作品紹介を見ると「官能小説」なんて一言も書いてないので、これはアイティメディアが勝手にそう言ってるのかなという感じが。

日本出版販売がARアプリ「COCOAR2」を採用、書店の販促にAR活用 VR Inside(2017年12月12日)

 無料配布のコミックガイドブック「B+LIBRARY vol.3」の表紙にARマーカーが設定されており、GPSとも連動で、来店しガイドブックを手に取らないと限定ARコンテンツが見られない仕組みになっているそうです。来店促進に繋がるでしょうか。「試し読み」ができるだけでは、あまり魅力が感じられないような気もするのですが。

【重要】hon.jpサイト閉鎖について hon.jp DayWatch(2017年12月12日)

 「hon.jp DayWatch」が更新されなくなった……と思っていたら、社長の塩崎泰三氏が亡くなられていたとのこと。来年3月でサイトは閉鎖、廃業になるそうです。R.I.P.

ホラー漫画『殺戮モルフ』一部シーンが黒塗りに。原作者は呆然「全く相談無しだった」 ハフポスト(2017年12月13日)

黒塗りにされた漫画『殺戮モルフ』の原作者を直撃。“真の姿”をネット公開へ ハフポスト(2017年12月13日)

黒塗りの『殺戮モルフ』第2巻が発売中止に。「このままなら発売しないで」原作者の意向を汲む ハフポスト(2017年12月15日)

 表現規制の圧力が強まっていることを感じさせる事件。有害図書指定を恐れる編集部の「勇み足」と作者への連絡不徹底が原因だったようです。炎上商法を疑う声も散見されましたが、発売直前での発売中止が決定したことで秋田書店には大損害が出ることに。「表現の自由」は都合の悪い表現や嫌いな表現の存在を認めること。エログロは嫌う人が多いので、炭坑のカナリアのような存在とも言えます。不穏な動きを放置していると、気づいたらがんじがらめになってしまう可能性も。なお、他者の権利を侵害する「ヘイトスピーチ」を規制する話とは切り分けて考えるべきでしょう。

CCC、主婦の友社を買収 アマゾン対抗へ書店づくり急ぐ 日本経済新聞(2017年12月13日)

CCC、主婦の友社買収を発表 大日本印刷から全株取得 日本経済新聞(2017年12月15日)

CCC、主婦の友社買収 リアル書店に活路 日本経済新聞(2017年12月15日)

 老舗出版社が大日本印刷の傘下からCCCの傘下に。TSUTAYA 1400店舗のうち本を扱う店舗は約810店舗にまで増えているとのことですが、大都市圏以外だと「書店がTSUTAYAしかない」という状況は結構前から起きていた現象です。出版社を傘下に入れるのも今に始まった話ではないので、「アマゾン対抗のため」にメーカー(出版社)を傘下に入れるという日経の論調にはちょっと疑問。「出版業界は出版社、取次会社、書店がそれぞれ独立し、業界を越えた再編はほとんどなかった」という記述には大きなハテナ。取次が書店を傘下に入れている事例はいっぱいありますが? と言いたい。

ノーベル賞作家の作品送ってみたら…全出版社がボツに ファンが「実験」 AFPBB News(2017年12月13日)

 あらららら……と思ったのですが、よく考えてみるとボツになった理由として「一文一文が果てしなく長く、読者を完全に突き放している」と言っているのは1社だけ。他の18社がどういう理由で断ったかは不明なのですよね。クロード・シモンの作品だと気づいて門前払いしたところもあるんじゃないかしら?

好評だけど高すぎるKindle Oasis——電子書籍専用端末の未来はあるのか? ダ・ヴィンチニュース(2017年12月14日)

 Android OS で Google Play が使える汎用の電子ペーパー端末を、ソニーが早い時期(5年くらい前)に出せていたら違った未来があったように思うのですけどね。後の祭り。Kindle端末のバリエーションは松竹梅商法(竹が売れる)なので、アマゾン自身も最高級モデルがそんなに売れるとは思っていないのでは。

疑似著作権、所有権、肖像権…… デジタルアーカイブには著作権以外にも課題が山積 窓の杜(2017年12月15日)

 自分の書いた記事ですがピックアップ。7000字近いのに、よく読まれているみたいです。

出版業界激動の1年を振り返り、来年は“飛躍の年”になるか WWD JAPAN(2017年12月16日)

 雑誌を中心に、デジタルシフトや業界再編といった今年1年の動きをコンパクトにまとめた記事。


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