「日欧EPAで著作権保護期間が70年に延長?」「無許諾の電子図書館始まる」など出版業界関連の気になるニュースまとめ(2017年11月20日~26日)

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 先週は「日欧EPAで著作権保護期間が70年に延長?」「無許諾の電子図書館始まる」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2017年11月20日~26日分です。


著作権は70年保護 日欧EPA、外務省4カ月遅れの公表 日本経済新聞(2017年11月21日)


 外務省なにやってるの! 案件。当ブログ11月13日のまとめにも書きましたが、アメリカの抜けたTPPがCPTPPに変わって著作権保護期間の延長が凍結されたのに、11月2日に公開された日欧経済連携協定(EPA)のファクトシート(PDF)には大筋合意事項の1つとして「著作権保護期間の延長(著作者の死後70年等)」と記されていたのです。あっちとこっちでやっていることがちぐはぐ。やっとマスメディアで記事になりました。


オール電子書籍の図書館 館内のみ、端末で閲覧 徳島で男性立ち上げ 朝日新聞デジタル(2017年11月21日)


 周囲で物議を醸している取り組み。無断でスキャンした電書を図書館で閲覧可能にするというもので、根拠法は著作権法第31条「国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの」は、1項2号「図書館資料の保存のため必要がある場合」は無断で著作物を複製できるというものです。
 福井健策先生は記事中でこの1項2号「図書館資料の保存のため必要がある場合」について「劣化の恐れがある場合や、絶版などで入手困難な場合に限られるという見方が一般的」と指摘。Twitterでも「著作権法31条を最大限解釈」とコメントしています。
 もう1つ、アプリの「コンプライアンス」を読むと、閲覧可能な範囲をWi-Fiで館内限定にしていることから、これは著作権法38条の非営利無償で無断「上映」ができる例外だ、という主張をしているようです。アプリでタイトルと目次までは見られるのですが、おもいっきり著作権残っている本だらけ。うーん、どうなんだろうこれ? 有料会員制図書館の館外貸出がOKなのかどうかと同じくらいグレーゾーンに踏み込んでいる感。ラインアップされてる本の著者と出版社は裁判をやって、きっちり白黒つけ判例残して欲しいところです。


電子コミック時代はマンガ・エージェントが活躍する!? マガジン航(2017年11月21日)


 中野晴行氏による〈ネオ・マンガ産業論〉第6回は、マンガのエージェントについて。日本では、出版社の編集者がエージェント的な業務も兼ねていたけど、マンガ誌の売れ行きが落ちて行くに伴い、作家より出版社の利益を優先するようになっていったという背景と、だから作家側に立つエージェントがこれからは必要なのだ、という話です。コルクや電脳マヴォなどの事例についても触れられています。


イーブック、インサイダー疑い「監視委調査には全面協力」 日本経済新聞(2017年11月24日)


 ヤフーがイーブックイニシアティブジャパンをTOB(株式公開買い付け)するとき、関係者の知人がインサイダー取引をした疑いがあるそうです。不正取引による利益は数千万円にのぼる可能性があるとのこと。ふえぇ。


新刊本、他社メディアで無料公開 一体、何のため?ウェブ戦略の狙い withnews(2017年11月24日)


 講談社の新刊『健康格差』を、講談社以外の提携ウェブメディアで無料公開する試みについての解説記事。対象ウェブメディアは「日経ビジネスオンライン」「ダイヤモンド・オンライン」「プレジデントオンライン」「東洋経済オンライン」「BUSINESS INSIDER JAPAN」「ハフポスト」。この記事を掲載している「withnews」は朝日新聞系メディアで、ハフポスト日本版は朝日新聞との合弁なのでまったくの無関係というわけではないですが、それなりに中立な立場での記事になっています。
 いっぽう、無料公開されるウェブメディアとは無関係な産経新聞「SankeiBiz)」に寄稿された、「東洋経済オンライン」編集長・山田俊浩氏の“「ネットで全文公開」に注目 出版界の新潮流 「紙」販売にも効果”には、ちょっと事実誤認が。こういうネットで全文無料公開モデルについて、“今年1月、まだまだ市販で売れている最中に、お笑いコンビ、キングコングのツッコミ担当、西野亮廣さんの絵本『えんとつ町のプペル』を全文公開したことがその端緒”と書かれていますが、ネットで全文無料公開モデルはたとえば「絵本ナビ」や「cakes」などでも以前から行われています。
 『フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略』が日本で発売されたのが2009年11月。発売と同時に電子版が無料公開されたことが話題になった本ではありますが、内容そのものもそれ以前から行われていた「無料をうまく活用したビジネスモデル」について紹介している本です。西野氏を持ち上げるのは構わないですし、西野氏の取り組みは出版業界全体から見たら比較的先駆的ではありますが、決して「端緒(物事の始まり)」ではありません。


冨田健太郎 斜めから見た海外出版トピックス 第5回 ヒラリー・クリントンの新刊騒動 DOTPLACE(2017年11月24日)


 ヒラリー・クリントンが大統領選を振り返る自伝を出版、発売翌日にはアマゾンレビューに1500件ほどの☆1つと☆5つが付き、アマゾンがそのうち900件を削除したというニュース。アマゾンも、やるときゃやるんですね。


小さな書店「Title」の奇跡 “本が売れない”時代を逆手に 店主に直撃 SankeiBiz(2017年11月25日)


 元リブロの辻山良雄氏による荻窪の本屋「Title」が、開業から10カ月で利益250万円と好調というニュース。「書店ビジネス全般に応用可能な部分」があるという指摘と、そこに焦点を当てた後半のインタビューがとても良い記事です。


出版月報 2017年11月号 全国出版協会・出版科学研究所(2017年11月25日)


 今号の特集は「海外出版市場における 紙・電子出版の動向」。アメリカAAP調べの「電子書籍市場」がなぜ低迷しているかについて、ビッグ5が小売価格の決定権を得て値上げして紙版との価格差がほとんどなくなった現状について言及しています。ちゃんとここに触れている記事って、私は初めて読んだかもしれません。非常に良い。



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