「文藝春秋が図書館に文庫貸し出しの中止を要請」「防水の新型Kindle Oasis」など出版業界関連の気になるニュースまとめ(2017年10月9日~15日)

Kindle Paperwhite

 先週は「文藝春秋が図書館に文庫貸し出しの中止を要請」「防水の新型Kindle Oasis」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2017年10月9日~15日分です。


「小説が消滅するかも」17万部作家が、いま抱いている危惧 現代ビジネス(2017年10月9日)


 「出版された後、どういう戦略で売っていくかというところにまで尽力しました」と著者が言わなきゃいけない現状にちょっと疑問。もちろん塩田氏の努力を貶すつもりはないのですが、ビジネスとして考えたら「役割分担」として正しい在り方なのだろうか? と。売り方を考えるのは従来は出版社や書店の役割だったわけで、もし出版社や書店のやってることがいままでとさほど変わらず、著者だけいろいろやるべきことが増えてるなら、著者への収益配分率をもっと増やさないといけないように思います。


デジタルで変わるマンガ家の仕事 マガジン航(2017年10月11日)


 中野晴行氏による「ネオ・マンガ産業論」第5回。コンピュータがマンガの執筆道具として使われ始めた時期(『コブラ』寺沢武一氏は1985年くらいからコンピュータを使っている)や、背景デジタル処理の草分けは果たして『GANTZ』奥浩哉氏なのか、などの疑問を感じている方も散見されますが、大枠では経緯と現状をわかりやすくまとめていただいていると思います。とくに「マンガ配信が儲かりそうだ」と考えて参入してきた企業の中には「原稿料を払うのは無駄」と考えているところさえあるというのは、なかなかシビア。


防水になった7型電子書籍リーダー、新「Kindle Oasis」 ~マンガの作品別表示が可能に PC Watch(2017年10月11日)


 ついに防水モデル登場。軽さ&薄さを捨て、7インチと大型化&高解像度化。その上、2016年モデルより少し安いという(とはいえ手軽に買えるような価格ではないですが)。本棚機能の増強などソフトウェアの改善が「Kindle Paperwhite」の2013年モデルみたいな古いモデルにまで適用されるのは素晴らしい。


文庫本「図書館貸し出し中止を」 文芸春秋社長が要請へ 朝日新聞デジタル(2017年10月12日)


「図書館で文庫本貸さないで」文芸春秋社長が訴え 「文庫は借りずに買ってください!」 ITmedia NEWS(2017年10月12日)


 全国図書館大会で、文庫貸し出しをやめてくださいと要請。2015年の、新潮社による新刊貸出猶予要請と同様、猛反発されています。「確たるデータはないが」と言ってる時点で、語るに落ちる。「それが文庫市場低迷の原因などと言うつもりは毛頭ないが」と言ったそばから「少なからぬ影響があるのではないか」と論理的整合性もない。こういう言い方をしたら反発されるということが予想できないのでしょうか。感情に訴えるなら、もっとうまいやり方があると思うのですが。
 ちなみに、文庫には「単行本発行から数年後に文庫化」するケースと、「最初から文庫として発行」するケースがあり、文藝春秋は前者のことを言っています。せっかく廉価版(普及版)を出しているんだから、借りずに買って欲しいという気持ちはわかります。図書館には、装丁が頑丈で長持ちする単行本を買って欲しいという気持ちもわかります。ただ、この言い分だと「最初から文庫として発行」するケースを無視しているように思えてしまうのですよね。


イシグロ作品人気過熱 書店原書も完売 図書館5年待ち? 電子書籍大ヒット 西日本新聞(2017年10月12日)


 10月1日から10日までのあいだに「Kindleストア」だけで『日の名残り』が1万ダウンロードとのこと。電子化されていたからこそ、突発的な話題でも売り逃さないという典型的な事例でしょう。


「離島の人、ジャンプ入手困難説」は本当か? 硫黄島まで行って聞いてみた ネタりか(2017年10月12日)


 東京から離れるほど発売日が遅くなる&入手も困難になることを知ってる地方出身者としては、当たり前すぎるネタです。ただ、「中学生にも聞いてみた」のところで出てきた「スマホアプリでマンガを読んでいた」という話が、ちょっと興味深い。中学生のスマホ普及率って50%くらい(高校生で100%近くなる)なんですよね。物理メディアはどうしても早い/遅い/届く/届かないという地域格差が生じますが、デジタルメディアは発売日の0時に全国一斉配信されるわけで。なんと素晴らしい時代なんでしょう!


書店のない自治体が2割に――本との「出会い」はネットや図書館へ ダ・ヴィンチニュース(2017年10月13日)


 「書店のない自治体2割超」という記事に対する、まつもとあつし氏による指摘。いくつか挙げられている原因のうち「人口減少の影響」の占める割合は相当に大きいように思います。引用されている総務省『情報通信白書』の65才未満人口推移グラフを見ると、ピークが1990年で以降は一貫して減り続けています。


あの「緊急事態宣言」から1年、コミックビームは生き残れたのか 編集長が語る、電子増刊『コミックビーム100』の狙い ねとらぼ(2017年10月14日)


 「史上最大の崖っぷち」とぶっちゃけた1年前に比べると、かなりデジタル施策に対し前向きになっているように思います。「(ウェブマンガメディアによっては)ページ3000円以上の作家は使うな、みたいなところもある」という、やけに具体的な話が。「ネオ・マンガ産業論」の話とも符合します。


キンコン西野亮廣、全国図書館5504館に自腹で著書寄贈 ORICON NEWS(2017年10月15日)


 絵本『えんとつ町のプペル』をウェブ上で無料公開し実売に繋げた手法を、図書館に転用。文藝春秋社長の図書館文庫本貸し出し中止要請とビジネス手法的に比較したら、西野氏のほうが圧倒的に正しいように思います。ただし、他にやる人がいない状態だからこそ成功する可能性が高い手法で、みんながこぞって寄贈するようになれば、そこで新たな場所の奪い合いが起きるでしょう。「1巻無料」で続刊を売る手法が、みんながやり始めたらあっという間に陳腐化したのと同じ原理です。また、著者購入で若干安くなるとはいえ、送料含めたらざっと800万円くらい必要なので、ちょっと真似できないギャンブルであるのは確かです(ただし定価1500円の10%印税なら5万5000部発行でいちおう元は取れる)。役割分担的に、こういう施策は版元がリスクを負ってやるものではないのか、という気もします。版元がリスクを負ってくれないから、強攻策に出ているのかもしれませんが。


メディアドゥHD、上期は売上高245%増・営業益247%増と大幅な増収増益…電子書籍流通が好調 Social Game Info(2017年10月15日)


 メディアドゥホールディングスの上半期連結決算。第1Qは販管費がかさんで減益でしたが、四半期で取り戻す勢い。



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