「CiNiiから論文消失」「メディアドゥ好決算」など出版業界関連の気になるニュースまとめ(2017年4月3日~9日)

Nexus 7のhonto

 毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、私が気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「CiNiiから論文消失」「メディアドゥ好決算」などが話題になっていました。



日販・トーハン、都市圏で共同配送開始 出版不況に対応 ITmedia ビジネスオンライン(2017年4月3日)


 出版輸送危機への対応。日配復活への第一歩?


幻冬舎とNewsPicksが協業、月額5000円のビジネスパーソン向けサービス「NewsPicksアカデミア」 INTERNET Watch(2017年4月3日)


 NewsPicksオリジナル特集記事の閲覧に加え、毎月1冊NewsPicksオリジナル書籍の送付、テーマと連動したイベントや講演に毎月1回無料で参加できるといったサービス。先着500名。本の制作を幻冬舎が担う、ということでしょうか。なかなかうまいビジネスモデルだと思います。


英フィナンシャル・タイムズの電子版購読者が65万に ーブレグジットや米大統領選が追い風に(小林恭子) Yahoo!ニュース個人(2017年4月3日)


 電子版購読者数が65万(前年比14%増)、印刷版と合わせると85万(同8%増)とのこと。いっぽう親会社の日経は、本稿執筆時点の「媒体資料2015」によると電子版43万。そのうち朝刊と電子版の併読は19万7000、電子版単体購読が23万3000。朝刊と電子版合計購読数は316万9000です。まだ紙が圧倒的に強いのは確かですが、電子版43万というのもなかなか。


Android、ネットに接続するOSとしてWindows超え初のトップに──StatCounter調べ ITmedia Mobile(2017年4月4日)


 OSシェアの世界トレンド。中国やインド、アフリカなどで、PCより先に安価なモバイル端末が普及していることがAndroidのシェア拡大要因になっているようです。国別シェアの図を見ると、先進国ではまだWindowsが強いことがわかります。


「CiNiiから論文が消えた」 研究者に困惑広がる ITmedia NEWS(2017年4月5日)


 科学技術振興機構の「J-STAGE」に一本化するという国の方針により、「CiNii」の「電子図書館事業(NII-ELS)」が2017年3月で終了したことによる余波。一本化の方針は3年前の2014年4月に出ていたのですが、「J-STAGE」への移行作業が間に合わなかったようです。無料公開の論文とはいえ権利は著者や学会が持っているので、「CiNii」や「J-STAGE」側が勝手に移行することはできません。「CC BY」など、権利者側があらかじめ許諾しているなら話は別なんですけどね。

[追記:提供一部再開されました


TSUTAYAが不振出版社を買い続ける狙い 東洋経済オンライン(2017年4月5日)


 CCC子会社が徳間書店を買収した件についての詳報。「SPA(製造小売業)をやらなければアマゾンには勝てない」と。つまり「アマゾンにできないこと」を模索した結果、ということのようです。ただ、米アマゾンを通じたセルフパブリッシングはどんどん拡大していますし、編集者を雇って自社で出版する「Amazon Publishing」もあります。さすがに出版社の買収はなかったと思いますが、SPAが「アマゾンにできないこと」というのはちょっと違和感。


完成近づく電子ペーパー採用楽譜専用端末「GVIDO」。発売は9月に AV Watch(2017年4月5日 )


 西田宗千佳氏による、楽譜専用デジタルデバイスの続報。ワコムの専用ペンと、専用フットスイッチまで用意しているそうです。楽譜専用と言いながら、楽譜データはPDFでの提供なので、普通に自炊したデータの読書用端末として利用することもできそうです。13.3型の見開き! 20まんえん!

加Rakuten Kobo社、紙書籍→電子書籍誘導iPhoneアプリ「Shelfie」を買収 hon.jp DayWatch(2017年4月6日)


 似たようなサービスは過去にいくつもありました(そして消えていった)が、背表紙撮影で文字認識というのは若干新しいかも。とはいえサービス運営元が撤退する際に権利継承したようで、こういうサービスを定着させる難しさを感じます。


Facebook、AI採用のリベンジポルノ対策スタート ITmedia NEWS(2017年4月6日)


 [投稿を報告]から「この写真に自分が写っていることが好ましくない」を選択した結果、コミュニティ規程違反で削除された場合は、同じ写真が再投稿できなくなるという仕組み。ただ、Facebook以外への投稿は防げません。Googleと協力して、仕組みを公開して他社も利用可能にすればいいと思うのですが。


Lunascape社が電子書籍取次大手メディアドゥ社の子会社に ~新Webブラウザーのα版も公開 窓の杜(2017年4月6日)


 メディアドゥの新たな企業買収。ブラウザーでの読書インフラ環境を整える方向性とのこと。「電子書店に必要なすべての要素を1社で担える体制を整えてきた」という記述はプレスリリースにも書かれているのですが、ビューアに関しては株式会社ACCESSと組んでやってきたケースが結構多いという印象があり、少し違和感。自前主義への転換を進めている、ということなのでしょうか。

電子書籍取次メディアドゥ、大幅成長「LINEマンガ」堅調で ITmedia ビジネスオンライン(2017年4月7日)


 メディアドゥの2017年2月期決算。売上高は前期比38.2%増の155億3200万円。少し前に電子出版市場で売上高を公開している企業の情報を調べて記事にしましたが、メディアドゥが関わっている小売額はこれで200億円超えくらいになった感じでしょうか?


ダイヤモンド・ビジネス企画、企業PR用途向けに電子書籍ストア「紀伊國屋書店Kinoppy」で無料クーポン発行サービス hon.jp DayWatch(2017年4月7日)


 献本用クーポンを作家側が買い取る仕組み。自費出版ビジネスの延長上でしょうか? なお、無料で献本用クーポンが発行できるプラットフォームはすでに複数あります。また、DRMフリーのファイルならそのまま配れますが、不正コピーが怖いという心理はあるでしょう。献本用に、ソーシャルDRMだけ施してくれるサービスがあるといいかもしれませんね。誰か作ってくれないかな。


良作掘り起こし電子コミック市場活性化 ビーグリー・吉田仁平社長 SankeiBiz(2017年4月7日)


 ビーグリーは電子書店「まんが王国」の運営会社。2017年3月17日に東証マザーズ上場を果たしています。IR資料をじっくりチェックしたいところ。2016年12月期の売上高は、83億3773万3000円。2017年12月期は、91億6500万円予想。前期比10%増。


アマゾンの当日配送撤退 ヤマトが方針 日本経済新聞(2017年4月7日)


 出版輸送危機と同時に、通販輸送危機も? とはいえ「当日配達」だけの撤退です。大都市圏で行われている「1時間で届く」が売りの「Prime Now」も、配達員がアマゾンのロゴが入った車やユニフォームを使っているものの、直接雇用しているわけではないようです(「使ってみた」報告記事が複数のブログで公開されていますが、ヤマト含め複数の業者名が挙げられています)。とはいえこの記事はあくまで「方針を固めた」なので、観測気球的とも言えるでしょう。日経は、子会社が発行している「日経ビジネス」定期購読の配送をヤマトに委託しているなど、直接の利害関係者でもあることを念頭に置く必要があります。


YouTube、視聴回数1万未満のチャンネルは広告収入なしに - ITmedia NEWS(2017年4月7日)


 不適切な動画広告が表示される問題への対策の一環でしょうか。合計視聴回数とはいえ、1万回というのはそれなりにハードルが高いです。要するに、継続して運営しているチャンネルじゃないと収益化できないので、アカウント停止されると今まで以上に痛い、ということに。いろんな抑止効果がありそうです。これがうまくいくと、「Google AdSense」にも波及する可能性が……?


米Amazon、Word/PDF形式ファイルをKindle電子書籍形式に変換するWindows/Macアプリ「Kindle Create」をベータ公開 hon.jp DayWatch(2017年4月7日)


 いまのところ英語圏のWordユーザーを対象としたアプリのようで、日本では未公開。縦書き対応が難しいでしょうね。WordからEPUBを作成するなら、ボイジャー「Romancer」がオススメ。


グーグル、偽ニュース対策強化 事実検証結果を表示 日本経済新聞(2017年4月8日)


 検索結果にファクトチェックを表示。ただし、提携する第三者機関が検証した記事のみ。日本にも導入されるそうですが、まだ出てこない……提携している報道機関ってどこだろう? ファクトチェック専門組織は「GoHoo」かな?[4/22追記:GoHooから「違う」というリリースが出ていました。


あなたの電子書籍が読めなくなる日 プレジデントオンライン(2017年4月8日)


 紙が物理的に失われるのは、汚損や火事や水没や虫害くらいでしょうか。電子は経年劣化しないし、端末が壊れても多くのサービスでは再ダウンロードできます。とはいえ、サービス終了で突然死する可能性があるのは確か。だから、保存用は紙、観賞用は電子、布教用はどちらでも(ただし電子はプレゼント購入可能な書店のみ)、という形がいいのではないでしょうか。とはいえ、こういう記事は「電子書店が潰れたら読めなくなる」と不安を煽って終わりではなく、本棚共有やソーシャルDRMなど、そういう悲劇を防ごうと頑張っている動きまで触れて欲しいところです。


1万RTで復活掲載 干潟系女子の漫画「ガタガール」、連載打ち切りからの大復活かけた保全運動がアツイ ねとらぼ(2017年4月8日)


 ファンの支援活動もさることながら、講談社「月刊少年シリウス」編集部にKADOKAWAグループの電子書店「BOOK☆WALKER」が直訴して実現した企画というのがすごい。出版社直営書店でありながら、出版社の壁を越えた企画に喝采。




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