「講談社×メディアドゥのじぶん書店発表」「ヤマト宅配便値上げへ」など出版業界関連の気になるニュースまとめ #262(2017年3月6日~12日)

Nexus 7のGALAPAGOS

 毎週月曜恒例。出版業界関連の先週のニュースで、私が気になったものにコメントをつけてまとめていきます。電子出版界隈が中心です。先週は「講談社×メディアドゥのじぶん書店発表」「ヤマト宅配便値上げへ」などが話題になっていました。

Author Earnings最新レポート「米国内で大手出版5社の電子書籍市場占有シェアの低下止まらず」 hon.jp DayWatch(2017年3月7日)

 毎度のレポート。昨年10月のレポートにはRAWデータが付いていたのですが、今回はなし。10月のレポートのRAWデータをチェックしてみました。アメリカのKindle Storeには480万点くらい配信されていますが、RAWデータは19万レコードくらい。代表性はどうなっているの? という感じが。ランキングが動かない本は売れていないというロジックは理解できるし、65%くらいは daily unit sales ゼロというのもなるほどなーという感じではあるのですが。

(宅配クライシス)ヤマト、全面値上げ アマゾンと交渉入り 27年ぶり、秋までに 再配達有料化に含み 日本経済新聞(2017年3月7日)

 宅配便の9割が基本契約から割引されている法人契約なのですね。それは知らなかった。値上げ交渉は、取引停止も辞さない覚悟じゃないと難しいでしょう。アマゾンは昨年4月に全品送料無料を廃止していますが、プライム会員になれば引き続き無料でした。一般会員でも書籍は無料でしたが、今後はどうなることか。アマゾンが値上げを飲む代わりに、プライム会員の料金を値上げするというのもあり得そう。アメリカに比べて日本のプライムは安すぎるんですよね。

公取委、再販弾力運用に一定の評価 新文化(2017年3月8日)

 再販売価格維持契約(メーカーによる定価販売の強制行為)は独占禁止法によって禁じられているのですが、著作物は例外的に認められています。ただ、公取委としてはできれば無くしていきたい意向で、見直しについて幾度となく議論の俎上に載せられています。弾力運用というのは、時限再販や部分再販などのこと。そういう取り組みを行っているから、まだ現状維持でいいでしょうという話に落ち着いている状況です。

 まあそれはいいとして、記事の後半に、小学館相賀社長から富士山マガジンサービスによる定期購読促進を問題視する報告があったという記述が。リアル書店への影響を鑑みたようですが、うーん。

LINEで届く“雑誌” 「LINE MOOK」正式創刊 マガジンハウスと協力 ITmedia NEWS(2017年3月8日)

 1月に週刊文春と組んでスクープがLINEに届くサービスを始めましたが、こんどは雑誌そのものの配信。プッシュ形式で届くというのが、デジタル時代の定期購読的。今回はマガジンハウスとの協力ですが、もちろん他メディアにも解放するようです。

EUの電子書籍VAT税率問題が再び混迷状態に、EU司法裁判所「紙書籍と同等にすべきではない」と判断 hon.jp DayWatch(2017年3月8日)

 昨年12月に欧州委員会が電子商取引の付加価値税(VAT)ルール見直し案を提示、紙と同様の軽減税率を電子にも認める方向に動き始めていたのですが、これに司法裁判所が待ったをかけた格好。なんだか、経済が政治と司法に右往左往させられている感じです。

16年の書店倒産は25件 太洋社破産の連鎖倒産も ITmedia ビジネスオンライン(2017年3月9日)

 東京商工リサーチの発表。倒産件数25件とともに、休廃業・解散件数41件というのが辛いところ。「家族経営の小規模事業者や、経営者が高齢化した事業者が、後継者難などで事業継続を断念するケースが目立つ」というのは、いろんな業界で聞く話ではあります。

講談社、ユーザーが本を選んで電子書店を開設・運営できる「じぶん書店」 INTERNET Watch(2017年3月9日)

 これは期待。開発・運営は、講談社とメディアドゥの共同。「Amazonインスタントストア」との類似性を挙げる人がいますが、これは実質出版社直営というのが大きな違い。同じくKADOKAWA直営のBOOK☆WALKERにも、「紹介プログラム」というのがあります(3%だけど)。いまKindle本のアフィリエイトが8%なので、10%アフィリエイトというのは狙ってる感。メディアドゥには集英社や小学館も出資しているので、横展開もあり得る気がします。

出版デジタル機構とは何だったのか EBook2.0 Magazine(2017年3月9日)

 鎌田博樹さんが、メディアドゥに買収された出版デジタル機構のことを酷評しています。“売却した親「機構」は、見込みがないと判断したと思われる”とありますが、官報の決算公告によると出版デジタル機構は第4期(2016年3月期)で黒字転換、本業の儲けである営業利益が6億2500万円あります。また、第1期時点の株主資本は71億2000万円なので、全額産業改革機構による出資だとしても80億で売却したなら、投資案件としては大成功でしょう。実際には途中で39.4%自社株買いさせてるので、もっと運用益が出ているはず。

 確かに、植村八潮さんが会長のときに言っていた「非競争領域」論はちょっとおかしいと思いますし、大手出版社は電子書店と直接取引している比率が結構高いから電子取次の存在意義が問われる状況なのも確かですが、数字を見ると「そんなに酷評することかな?」という感じです。


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