2016年4月5日火曜日

星海社が『「おたく」の精神史』で早坂未紀さんのイラストを無断利用した事例で、文化庁裁定制度が使えないかもしれない理由


星海社が「ご連絡先を探しています」と言いながら、無断でイラストを利用した本を出しました。なぜ文化庁の「著作権者不明等の場合の裁定制度」を使わないんだろう? と調べてみたら、このケースで使えるかどうかが微妙だったので、記事にしてみました。だからこの記事は、大塚英志さんや星海社を糾弾することを目的としているわけではありません。念のため。


問題の本はこちら。


無断で利用した理由はこちら。冒頭だけ引用します。

さて、表紙に早坂未紀さんのキャラクターである、「萌」のイラストを勝手に使わせてもらった。このイラストは、ぼくの仕事場に、彼に返し損ねて今も飾ってある。連絡先を探したが、今回も見つからなかった。著作権的にはアウトと知りつつ無断で使わせてもらうことにしたのは、彼が「萌」というこの文字を美少女キャラクターに付した、多分、最初の例だからだ。

正直言うと、ジセダイのこの告知を最初に読んだときは「えー?」と思ったんです。なんで文化庁の裁定制度を使わないんだろう? って。だからボクは、こんなツイートをしています。


ところが先に述べたとおり、改めて裁定制度の要件を調べてみたら、この事例で使えるかどうかが微妙だったのです。マジか。


文化庁の裁定制度は公表された著作物が対象


文化庁の「著作権者不明等の場合の裁定制度」は、使用料額相当の補償金を供託することで、著作権者不明作品オーファンを適法に利用できる制度です。ところが「裁定申請の対象となるもの」には、「権利者若しくは権利者の許諾を得た者により公表され,又は相当期間にわたり公衆に提供等されている事実が明らかである著作物」等と書かれています。

要するに、手紙やメールのような私信や、ただ描いただけで友だち程度しか見せていないイラスト、ただ書いただけでローカルストレージや非公開クラウドストレージにある文章ファイルなどは「未公表」なので、裁定制度の対象外なのです。

ジセダイの記事からの引用部分に、このイラストは大塚英志さんの仕事場に飾ってある、とあります。過去に出版物などで利用されたかどうかは不明です。「彼に返し損ねて」ともあるので、譲渡したわけでもないようです。事務所で描いてそのまま忘れていったのか、貸しただけなのか。

詳細がわからない限り、単純に「文化庁の裁定制度を使えばいいじゃん!」と決めつけることはできなさそうです。著作者人格権の「公表権」があるので、著作者が公表に同意していない可能性がある著作物まで裁定制度で踏み込むのは難しい、ということなのでしょうね。

このケースの場合「早坂さんが本書にこの絵を使われたことが不快とわかったら、カバーはつくり直します」とあります。怒られたら利用を停止する覚悟だけど、恐らく本人に連絡がついても怒られることはない、という判断をしているのかも。話題になって、一石二鳥だし。


裁定制度を使うにあたって必要な「相当な努力」


ちなみにこれは余談ですが、裁定制度を使うにあたっては「相当な努力」をして権利者が不明であることを担保しなければいけないことになっているので、面倒であることは確かです。無断で利用することは「相当な努力」ではありません。念のため。

例えば、権利者情報の提供を求める手段として「日刊新聞紙への掲載」または「CRICのウェブサイトに7日間以上掲載」という必須要件があります。CRICのウェブサイトへの掲載料は8100円なので、権利者の人数が少なければたいしたことはありません[追記:料金は枠単位なので、人数は関係ありませんでした。お詫びして訂正します。申し訳ありません。掲載されている状態を確認してから書けばよかったorz]です。



早坂未紀さんで画像検索したら、こんな本が出てきた。

この衣装、髪型、同じ娘ですよね?

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