2015年6月28日日曜日

Amazonの新刊値引き販売が再販価格維持制度に風穴を開けたわけではない


Amazonが、期間限定で新刊書籍の値引き販売を始めました。当初の日経報道や、それに対する反応など、いろいろ事実誤認が散見されるので、ちょっと整理してみることにします。



再販違反じゃないの?


これに関しては、公正取引委員会の「よくある質問コーナー」Q12.の解説が分かりやすいです。メーカーが小売店に定価販売を強制するのは「再販売価格維持行為」といい、独占禁止法(2条9項4号)によって原則禁止されている行為です。ただ、一部の著作物(書籍、雑誌、新聞、音楽用CD、音楽テープ及びレコード盤の6品目)については、例外的に独占禁止法の適用が除外されています。これを「著作物再販適用除外制度」といいます。

要するに、出版社が書店に定価販売を強制するのは、例外的に認められた行為であって、出版社が「希望小売価格」にするのは自由なのです。出版社が定価で販売することを、法的に強制されているわけではありません。出版記念パーティーなどで、「定価」と書いてあっても通常より安く販売するケースもあります。出版社がOKなら、定価販売じゃなくてもOKなのです。

今回のAmazonの新刊値引き販売は、Amazonが勝手に値引きしているわけではなく、出版社側がOKと言ってるわけですから、OKなんです。出版関係者から「再販違反だ!」という反応が散見されるのですが、何がどう違反なのか教えて欲しいくらいです。


Amazonが初めてじゃないの?


下図はポット出版発行の『アーカイブ立国宣言: 日本の文化資源を活かすために必要なこと』の裏表紙です。この本のように、「希望小売価格」で販売している本は以前から存在しています。

【非再販】と書いてある本

日経の報道に対し「時限再販契約など結んでいない」というリリースを出した主婦の友社も、ねとらぼの取材に「価格表示の本しか出していない」と回答しています。なお、日経の報道には珍しく訂正が入っています。

要するに、裏表紙に「希望小売価格」や「価格」と書いてある場合は、どこの書店であろうと定価で販売する義務はないのです。


新刊の値引き販売って、前からあるんだ?


新刊の値引き販売そのものは、今回のAmazon以前から存在します。バーゲンブック、ゾッキ本、B本、見切り本、自由価格本、読者謝恩本、非再販本など、呼び方はいろいろあります。第二出版販売(八木書店)のように、バーゲンブックの販売を主要業務にしている会社も存在します。

第二出版販売の主な業務は、新刊書店、量販店、百貨店などでのバーゲンブックの販売です。各店舗内の催事場やイベント会場などを販売スペースとして、「バーゲンブックフェア」「新本大バーゲン」と銘打ち、期間限定でイベントを行っています。
第二出版販売事業案内より引用

要するに、今回のAmazonを「再販価格維持制度に風穴を開けた!」と祭り上げている人も散見されますが、以前から普通にありますよ、という話。ただ、Amazonのような、恐らく全国の書店の中でも1番の売上を誇る規模のサービスが、値引き販売を始めたというのは結構インパクトのある話なのは間違いないでしょう。


何が問題なの?


ねとらぼによると、ダイヤモンド社や翔泳社などは「定価」表示の本もバーゲン対象になっています。仮にそれがAmazonにだけ認められ、それ以外のリアル書店の店頭在庫は定価拘束されたままだとすれば、ちょっと厳しい。

ただ、東洋経済オンラインには「再販指定を解除した書籍はアマゾンだけでなく、どの小売店でも値引き販売をできる。」という記述もあるので、恐らくリアル書店の店頭在庫も、定価拘束は外れるのではないでしょうか。

もっとも、大手書店がこの件で参加出版社に抗議しているという噂もあるので、実際のところどうなのかは続報を待ちたいところです。

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