2014年12月13日土曜日

一般社団法人日本出版インフラセンター(JPO)が新設する「出版情報登録センター(JPRO)」の説明会に行ってきた

JPO代表理事 相賀昌宏氏(小学館社長)
JPO代表理事 相賀昌宏氏(小学館社長)

12月12日に日本出版会館で行われた、「出版情報登録センター(JPRO)」の説明会に行ってきました。一般社団法人日本出版インフラセンター(JPO)が新設する、出版権情報の登録を担う組織です。ボクの理解の範囲でざっくりレポートさせていただきます。なお、説明会資料(PDF)はJPOのサイトにアップロードされています。



出版情報登録センター(JPRO)ってなに?


出版物の書誌情報と、出版権設定情報の登録・管理を行うことを目的とした組織です。「近刊情報センター(書誌情報を取次・書店へ無料配信している)」や、「日本図書コード管理センター(ISBNコードの発行・管理をしている)」などと同様に、一般社団法人日本出版インフラセンター(JPO)が新しく行う事業です。年明け1月6日からデータ受付を開始し、7月から本格稼働するそうです。JPROはJapan publication Registry Officeの略で、ジェイプロと読むそうです。


JPROは何のために設立されるの?


著作権法改正により、2015年1月1日から電子書籍にも出版権が設定できるようになりました。その改正時の付帯決議で、以下のような注文が付けられました。

八 本法によって、多様な形態の出版権設定が行われる可能性があることから、著作物における出版権設定の詳細を明らかにするため、将来的な利活用の促進も視野に入れつつ、出版権の登録・管理制度等を早急に整備するため、具体的な検討に着手すること。

出版権の登録・管理を行う機関って、現状ではまだ存在しない(制度としてはあるけど形骸化している)んですよね。で、別に誰がそういう機関をつくってもいいそうです。出版業界としては「指をくわえて何もしないでいたら、巨大IT企業や外資系企業が乗り出してきてしまうかも(by 相賀代表理事)」という危機感があったそうで、出版業界が主導して基盤整備しなければ! という思いが設立の経緯のようです。紙と電子の出版権情報を1本化したいという狙いもあるとのこと。

ボクは、役に立つものであれば、別に外資だろうが何だろうが、誰がつくってもいいと思うのです。ただ、近刊情報センター(出版社約530社、書店約5000店が参加しており、新刊の68%を網羅しているそうです)の機能を活用することで、出版社の手間を増やさず、コストもあまりかけずにできる、というのはアドバンテージなんだろうな、と思いました。

ちなみに、近刊情報センターの情報は無料配信されており、誰でも利用できる形になってます。ただしコストを抑えるため、出版社が登録した情報に「何も足さない、何も引かない」形でただ配信するだけ(データベースになっておらず、「ただのデータプール」なのだそうです)という状態。

そこで「版元ドットコム」の「近刊検索β」とか、フライングラインの「「本が好き!らぼ」近刊情報サーチ」とか、光和コンピューターの「これから発売される本検索」などのサービスがサードパーティーによって運営されています。

さらに余談ですが、近刊情報センターが安価に運営できているのは、実証実験で国から予算を引っ張って作ったシステムを払い下げてもらってるから初期コストを償却する必要がないからだ、とJPOの永井専務理事が言ってました。なるほど。


文化庁の著作権登録制度とは何が違うの?


文化庁の著作権登録制度には、出版権の設定・移転などの登録制度も存在します。登録しておくと、同じ作品に対し二重に出版権が設定されてしまったときに、法的な対抗要件になります。

ただ、現状ではほとんど使われておらず、形骸化しちゃってます。出版権登録料が1件3万円かかるのと、登録しなくても著者に独占契約という認識があり、出版権が二重設定されるような事態がこれまではほとんど発生しなかったからでしょう。

ところが2015年1月1日の新著作権法施行以後は、紙と電子を別々に出版権設定可能になったのと、従来は禁止されていた出版権の再許諾が可能になったことで、「多様な形態の出版権設定が行われる可能性がある」ことから、形骸化しちゃってる国の制度ではなく、民間で用意する「権利情報の公開システム」を定着させることで、事実上の登録制度に代わりうることを「期待」しているそうです。

「期待」ってなんぞ? と思ったのですが、説明会には文化庁、総務省、経済産業省(三省デジコンのメンバー)と、国立国会図書館からも来賓が来ていたので、「期待」というか、もう国が追認しちゃってる感じなのかな、という雰囲気がありました。

あと、今後の検討事項に「著作権関係信頼性確認団体の認定取得」というのも挙げられていて、デジタル海賊版対策でもいろいろと重要な役割を果たそうとしているようです。ふむ。


じゃあ今後はJPROで、出版権設定の詳細が明らかになるの?


じゃあ、JPROができれば、付帯決議にある「著作物における出版権設定の詳細を明らかに」できるのか? というと、説明を聞いているとどうも雲行きが怪しい感じがします。そもそも出版権情報の公開が目的なのに「権利者と出版社の契約内容だから取り扱いに配慮が必要」と、公開内容、範囲、時期、閲覧手数料の有無などを、7月の本格稼働までの検討課題としているのです。

質問して確認したのですが、出版権設定ではなく「ライセンスの独占的な許諾(※電子書籍は従来、この契約形態が用いられてきた)」の場合、公開情報とはしないそうです。あと、顧問弁護士の村瀬氏が明言していたのが、照会して空欄になっていた場合、それは「出版権なし」を意味するわけではなく、「あり」か「なし」かは不明を意味するとのこと。じゃあ結局、詳細は出版社へ問い合わせするしかないじゃない。ナニソレ、と思いました。

なぜそんな曖昧な形にするんだろ? と思って出版社の立場で考えてみたのですが、「出版権が紙だけ設定されている」という情報を公開されたら、他社に電子の権利を奪われてしまうことを心配するだろうな、ということに思い至っちゃいました。あー。

まあ、まだどういう形で公開するかは確定していないとのことなので、これは想像でしかないのですが、仮に「あり」と「空欄」でしか情報が出てこないとしたら、「あり」と書いてあっても、紙だけなのか、電子だけなのか、紙と電子両方なのかは判別できないわけで。そうか、わざと曖昧にしておきたいんだな……と。

ある方に「それは考えすぎだ」とたしなめられましたが、別の方からは「まさにそれが狙いだと聞いている」という情報が。さてはて。少なくともボクが出版社の立場だったら、不利になる情報が公開されるのは嫌だから、曖昧にできるならしたいと思うのです。紙も電子も出版権設定できてるなら、堂々と公開する(その方がメリットがあるから)でしょうけどね。


利用するにはどうすれば?


とりあえず、JPROに登録できるのは出版者記号を取得(つまり日本図書コード管理センターに登録)していること、「出版情報登録料課金承諾書」を提出していることが必須条件です。取次の取引コードは必須ではないけど「あるとわたくしどもの作業が大変ラクになります」と永井専務理事が言ってました。

登録料は、紙は1000円、電子は500円で、既刊(2015年6月以前に刊行された出版物)は無料だそうです。従来、商品基本情報センターへの登録は1件500円でしたが、紙の場合それが1000円になる(+1000円ではない)そうです。

登録料の徴収方法は、紙は取次の支払金で相殺、電子は出版デジタル機構に依頼するそうです。「出版デジタル機構以外を使っている場合は?」と質問したところ、「請求書を発行します」とのことでした。他の電子取次も、同じように依頼すればいいのに。


という感じで、いろいろ考えされられた説明会でした。

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