【書評】クレイグ・モドさんの『ぼくらの時代の本』を読んだ

クレイグ・モド『ぼくらの時代の本』

献本御礼。実は「dotplace」にほぼ全文公開されているし、Craig Modのサイトでも原文(英語)がほぼ全文公開されているエッセイです。

ただ、ウェブで読んだ印象と、紙の本で読んだ印象はかなり違います。ウェブは横書き、紙では縦書きになっていること。写真、図表、注釈などが、ウェブはぽんと「置かれている」感じですが、紙では「美しく配置されている」こと。

同じ素材を使っても、表現する器と技法でここまで違うのかと改めて驚かされました。電子書籍版はチラッと眺めただけなのですが、ウェブと紙の中間で、これはこれで良いと感じさせられます。

個人的には、「Kickstarter.comでの資金調達成功事例」が最も興味深かったです。支援価格帯を設定するにあたって、他の成功事例を研究するところから始めるあたり、ボクとアプローチがよく似ています。ボクは1年半ほど前にCampfireの実績(あまり多くない)を調べたのですが、クレイグの調べたKickstarterのデータとよく似た傾向でした。

低めの価格帯――25ドル未満――は統計的に有意でない(合算しても全体の5%に満たない)ため、選択肢から除外することをお勧めする。

統計的には少ないものの、25ドルを設けていたことで、この本(初版)をすでに持っている人もプロジェクトの支援のためにお金を出してくれた。ある意味、25ドルの価格帯は支援に対する見返りを提供するよりもバッカーたちのコミュニティを強化する役割を果たした。

この辺りの話は、「たぶんそうだろうな」と想定していたことが実証された形になっていて、大変参考になりました。

「これからの出版」を考える上で、読んで損はしないと思います。できれば、ウェブと、紙と、電子書籍とを比べてみて欲しい。恐らく「ウェブで全文を公開したままでも、本は売れる」というのを改めて証明することになる1冊だと思います。

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