2014年9月9日火曜日

コミックとコミック誌市場+電子コミック市場は? ── デジタルコンテンツ白書2014を読み解く

デジタルコンテンツ白書2014

一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)発行の『デジタルコンテンツ白書2014』を読んでいて、第4章「マンガ」の節でいろいろ引っかかりを覚えてしまったのでエントリーにしておきます。



紙のマンガ雑誌は低調だが、コミックスは堅調


第4章「マンガ」の節は、「紙のマンガ出版の市場縮小を電子コミックは救えるのか?」という見出しから始まります。そして、「マンガ雑誌の低調続く」という見出しに続けて、出版科学研究所「出版月報」2014年2月号掲載のデータを掲載しています。これがそのグラフです。

デジタルコンテンツ白書2014 第4章「マンガ」より、出版科学研究所「出版月報」2014年2月号掲載「コミック市場2013」

うわー見事な右肩下がりです。ところがよく見ると、コミック誌は2004年-2013年で1111億円の減少なのに対し、コミックスは267億円の減少と、コミック誌の落ち込みに比べればコミックスは緩やかな落ち込みなことに気づきます。コミックスの2012年-2013年は、僅かながらプラスに転じてますし! これ、グラフの積み上げ方を逆にすると、かなり印象違うんじゃなかろうか。そして何より、出版科学研究所のデータは紙だけです。


電子コミック市場は急成長


もちろんデジタルコンテンツ白書では電子コミックについても言及しています。こちらはインプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2014」の電子コミック市場データを掲載してあります。これがそのグラフです。

デジタルコンテンツ白書2014 第4章「マンガ」より、インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2014」の電子コミック市場規模

こちらは見事な右肩上がりです。フィーチャーフォン市場の急激な落ち込みを、「新プラットフォーム向け」が補ってます。ただ、「電子コミック市場規模」とあるので、この数字に「電子マンガ誌」が含まれているかどうかは不明です。今年から「電子雑誌」が別で集計されてますから、もしかしたら含まれていないかも? この辺り、インプレスの人に聞いてみたい……。


合計すると?


さて、「紙のマンガ出版の市場縮小を電子コミックは救えるのか?」という問題提起をしているなら、上と下を合計してみたいですよね? というわけで、荒っぽいのは承知の上で、合計してグラフ化してみました。ボクの好みで横棒グラフにしてあります。2008年以前の電子コミック市場のデータがないので、便宜上ゼロにしてあります。

デジタルコンテンツ白書2014 第4章「マンガ」より、出版科学研究所「出版月報」2014年2月号掲載「コミック市場2013」と、インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2014」の電子コミック市場規模

おお! 2013年は僅かながら上向きです……と、グラフを作った後で気がついたのですが、デジタルコンテンツ白書でも第5章「出版」に、合計したグラフが載っていました。グラフの積み上げ方も、第4章とは逆だし。しかも、インプレス総合研究所のデータがちゃんと2008年以前もあるし。とほほ。

デジタルコンテンツ白書2014 第5章「出版」より、出版科学研究所「出版月報」2014年2月号掲載「コミック市場2013」と、インプレス総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書2014」の電子コミック市場規模

なんで第4章には載ってないの!

……気を取り直していきましょう。仮に、この2013年の「デジタルコミック」市場の数字が全て単行本販売だとすると、コミックス市場(紙+電子)2962億円のうち、電子の占める割合は24.68%とかなり大きくなってきていることが分かります。

電子データ販売は限界費用が限りなくゼロに近いため、損益分岐点を超えると急に利益がたくさん出るようになります。びっくりするくらい儲かります。電子コミックをたくさん売ってる出版社は、結構儲かるようになってきているんじゃないかな? どうなんだろう? 実態は分かりません。


本当に苦しいのは……?


この数字の推移を見て思うのは、マンガ誌の低迷によって窮地に陥っているのは出版社よりむしろ取次と書店なんだろうな、ということ。最盛期に600万部以上売っていた『週刊少年ジャンプ』ですら、マンガ誌単体では赤字だったわけです。

定期的に刊行され一定の売上が見込める雑誌は、書店にとって貴重な収益源です。それがコンビニに奪われ、さらには雑誌全体の売上低迷で、書店はどんどん苦しくなっています。

一方、出版社も、紙のマンガ誌を維持できず、Webマンガ誌に移行するケースも増えてきています。白書もその辺りには触れていますが、広告収入に関する記述がない点が気になりました。

例えば「裏サンデー」は、立ち上げ当初「掲載期限なし」「広告掲載なし」という宣言をしていましたが


コミックス第1弾の売れ行き次第ではサービス終了の可能性が……と泣き落としに入り


結局方針変更で、作品公開を一部制限したり、バナー広告を導入したりしています。


「炎上商法だ」と批判を受けたり、方針も変わったりしたものの、立ち上げから2年以上経った現在も運営が続けられているのも事実です。なんと、月間120万UU・2700万PVに到達しているとか。


インターネット広告収入はPVに比例するので、広告掲載位置がマンガを一話読み終わった場所だけとはいえ

裏サンデーの広告掲載位置

そこそこの売上にはなっていると思うのです。じゃあ、Webマンガ誌の広告収入って、全体ではどのくらいの規模になってるんでしょう? デジタルコンテンツ白書2014はまだ全部読めてませんが、「インターネット広告」の数字は合算しか載っていない(2013年で7203億円!)ようなので、詳細は不明です。書店売上が減った分は、インターネット広告に移行していると思うんですが……この辺り、もうちょい深堀りしたいところ。

ちなみに先日こちらで書いた「雑誌社はまだインターネットであまり稼げていない」仮説ですが、


マンガの場合は、単行本で稼げればOKというモデルなんですよね。やっぱり割りを食ってるのは、取次と書店なんだろうなあ。


あれ? 「現在お取り扱いできません」になってる……。

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