2013年11月17日日曜日

私的録音録画補償金制度の拡大は、音楽・映像の製作・流通産業を殺す

http://www.culturefirst.jp/

JASRACを始めとする音楽・映像の権利者団体などで構成された「Culture First」は11月14日、「新たな補償制度創設の提言」を行いました。これは、私的録音録画補償金制度で指定されている機器やメディアが売れなくなり、補償金が入ってこなくなってしまったため、対象を広げようというものです。

ボクは、もしこの制度が拡大されたら、むしろ音楽・映像の製作・流通産業を殺してしまうことになると考えています。ただでさえCDやDVDなどの音楽・映像ソフトがあまり売れなくなっている状況下で、ユーザーをさらに敵に回す行為だからです。



そもそも「私的録音録画補償金制度」ってなに?


著作権法第30条により、私的利用の範囲であれば権利者の許諾をいちいち得ることなく自由に複製が行えることになっています。ところが、デジタル技術の発達でオリジナルと全く同じ品質のコピーが作れるようになったことから、権利者団体が「私的複製によって経済的利益が侵害されている」という主張をし、著作権法を改正させました。1993年から導入されている制度です。

「私的複製によって経済的利益が侵害されている」というのは、例えば音楽CDであれば「自宅と車の両方で聞きたいなら、CDを2枚購入して下さい」という考え方に基いています。デジタルでの録音・録画機器が出てきたことで、音質や画質が劣化することなく複製できるようになったので、1人が複数枚購入することがなくなってしまった、だから機器メーカーはその分を保証しろ!という大義名分になっています。


現行の私的録音録画補償金制度の対象になっているのは?


【録音機器と記録媒体】
  • DAT
  • DCC
  • MD
  • オーディオ用CD-R/CD-RW

【録画機器と記録媒体】
  • DVCR
  • D-VHS
  • MVDISC
  • DVD-R
  • DVD+R
  • DVD-RW
  • DVD+RW
  • DVD-RAM
  • Blu-ray
※光ディスクは「録画用」または「for Video」と表示されているものに限る

2001年に「iPod」が発売され大ヒットしたわけですが、ハードディスク内蔵型(いまはフラッシュメモリ)だったので補償金の対象外でした。携帯電話(フィーチャーフォン)やスマートフォンも当然対象外。カーナビも対象外。

また、東芝との訴訟で2012年に最高裁が「録画補償金制度はアナログ放送を録画源とするものであるから、デジタル放送のみ録画する当該レコーダーは特定機器等に該当せず補償金の対象とはならない」という知財高裁の判決を支持したため、アナログ放送終了とともに私的録画補償金は0円になってしまいました。私的録音補償金は、音楽用CD-Rが多少は売れているので、まだ数億円レベルで残っているようです。


「新たな補償制度」ってなに?


2つの提言がなされています。

  1. 補償の対象は私的複製に供される複製機能とする
  2. 新たな補償の支払い義務者は複製機能を提供する事業者とする

要するに、機器や媒体、サービスまで含め、私的複製機能を持っているもの全てを対象として下さい、という話です。「機能」として、サービスも含めてしまうというところが最大のポイントでしょう。


「新たな補償制度」になったら、なにがどうなるの?


自分の持っているファイルをコピーできる機器は、全て補償金制度の対象になります。上で挙げたiPodや携帯電話・スマートフォン・カーナビだけではなく、ただのハードディスクやUSBメモリ、SDカードなどありとあらゆる機器やメディアが対象となり、補償金分の額が販売価格に上乗せされます。例えばボクは、スマートフォンで音楽を聞きませんが、そんなことは無関係に補償金を徴収されてしまうわけです。

また、例えば「iTunes Music Store(iTMS)」のような、インターネットで音楽配信サービスをしているところも補償金制度の対象となります。iTMSは1アカウントにつき最大10台まで利用できる規約になっているので、もしこの「新たな補償制度」の要望が通って著作権法が改正されたら、「10台分の補償金を支払え!」ということになるのでしょう。当然、補償金はコンテンツの販売価格に上乗せされるでしょう。

「Spotify」や「Music Unlimited」みたいなストリーミング配信は、複製機能を持っていないから、たぶん対象外でしょう。「YouTube」には公式のダウンロード機能がないから対象外だけど、「ニコニコ動画」には公式のダウンロード機能が付いているから対象になるといった線引きになると思われます。


なぜそれが音楽・映像の製作・流通産業を殺すの?


いままでより余計にお金がかかるのであれば、利用しないという判断をする人が増えるでしょう。また、恐らくサービスの劣化を招く(例えばiTMSで利用できる端末が1アカウントにつき1台だけになるとか、ニコニコ動画の公式ダウンロード機能がなくなるとか)ことになるので、利用者離れを起こすでしょう。サービスが存続できなくなる事業者も出てくるでしょう。

音楽や映像は生活必需品ではなく文化であり娯楽ですから、他にもっと楽しいことがあればユーザーはそちらへ流れます。世の中には無料で自由に楽しむことができる音楽や映像もたくさんあるわけです。「はじめに文化ありき」ではなく、権利の主張、すなわち「はじめにお金ありき」になってしまっているから、むしろユーザーに嫌われる結果を招いていることになぜ気づかないのでしょうか。「文化」は残っても、「産業」は死んでしまうでしょう。

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さて、だれが「音楽」を殺すのでしょう? だれが「映像」を殺すのでしょう?


「Culture First」推進団体ってなに?


簡単にいえば、音楽と映像の著作権者・実演家・製作者に関連する団体です。全部で85団体あります。主なところだけ、活動内容などを調べてみました。


公益社団法人 日本文藝家協会


作家、劇作家、評論家、随筆家、翻訳家、詩人、歌人、俳人等、文芸を職業とするものの職能団体。著作権管理事業も行っている。私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


協同組合 日本脚本家連盟


放送・映画・舞台等の脚本を執筆している作家の協同組合。社会生活を擁護し、その経済的地位の向上をはかる目的で設立された。脚本家の執筆条件・著作権使用条件の改善や福利厚生制度の充実、新人作家を養成するための教育事業と、著作権等管理事業も行っている。私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


協同組合 日本シナリオ作家協会


フリーの立場で仕事をするシナリオライターを組合員とし、著作権管理、福利厚生、情報提供、株式会社シナリオ会館の運営監理を行っている。私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


一般社団法人 全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)


テレビ番組製作会社の団体。テレビ番組の著作権の確立と擁護、テレビ番組に関する国際交流、テレビ番組の顕彰を行っている。私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


一般社団法人 日本映画製作者連盟


映画製作配給大手四社(松竹、東宝、東映、KADOKAWA)の団体。映画製作事業の健全なる発展を目的とし、会員間の不公正防止、海外輸出の促進、国際映画祭の参加、国内外資料の蒐集作成及び公的機関、関連団体との折衝などを行っている。私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


一般社団法人 日本動画協会


アニプレックス、ガイナックス、サンライズといった、アニメ制作会社の団体。アニメ製作の新技術開発、マーケット情報の収集と発信、著作権保護の研究と実践、アニメーション文化を海外に紹介する国際交流事業などを行っている。私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


一般社団法人 日本映像ソフト協会


「映像ソフト」の制作または頒布事業を営む法人・個人の団体。映像ソフトに関する調査と研究、規格・基準の策定、倫理基準の策定などを行っている。私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


協同組合 日本映画製作者協会(芸団協)


日本で映画及び、ビデオの製作を行っている従業員100名以下もしくは資本金5000万円以下の企業によって構成される協同組合。独立プロダクション団体の経済的地位向上のための援助、事業、技術の改善向上などを行っている。私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会


俳優、歌手、演奏家、舞踊家、演芸家、演出家、舞台監督などのあらゆる芸能分野の実演家団体、スタッフや制作者等芸能関係67団体を正会員とする公益法人。傘下の実演家は約90,000人。実演家の著作隣接権に関わる業務を行う「実演家著作隣接権センター(CPRA)」の運営、芸能文化拠点「芸能花伝舎」の運営、研修事業、芸能に関するさまざまな調査研究、政策提言、情報収集・発信など実演芸術の振興を行っている。私的録音補償金管理協会からの配分を受ける、実演家を代表する団体かつ、私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


一般社団法人 日本音楽事業者協会(JAME)


音楽プロダクション事業者の団体。音楽事業及び周辺事業に関する調査・研究、研修会・セミナーなどの開催、著作隣接権・氏名肖像権・パブリシティ権などの知的財産権の維持管理及び保全を行っている。私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


一般社団法人 日本音楽出版社協会(MPA)


音楽出版社約300社の団体。音楽出版業界を代表する唯一の団体で、原盤制作者を代表する団体でもある。原盤使用料・放送二次使用料・複製使用料・貸与報酬・貸与使用料・私的録音録画補償金の分配事業と、音楽著作権や関連情報に関する各種講演会・セミナーなどを行っている。私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


一般社団法人 日本音楽制作者連盟


音楽の実演を企画・制作し、音楽実演家のマネージメントをするプロダクションの団体。商業用レコード二次使用料、貸レコード使用料、私的録音録画補償金などの使用料、報酬等の徴収・分配業務などを行っている。


一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)


国内の作詞者、作曲者、音楽出版者などの権利者から著作権の管理委託を受ける団体。管理音楽作品の使用料徴収と権利者への配分を行っている。私的録音補償金管理協会からの配分を受ける、著作権者を代表する団体かつ、私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


一般社団法人 日本レコード協会(FCA)


レコード製作会社の団体。レコードや音楽用CDなどの普及促進と需要拡大に関する事業や、技術調査研究、二次使用料・貸レコード報酬などの徴収・分配に関する指定団体業務、私的録音録画補償金の受領・分配などを行っている。私的録音補償金管理協会からの配分を受ける、レコード製作者を代表する団体かつ、私的録画補償金管理協会からの配分を受ける団体


日本音楽作家団体協議会


作曲家・作詩家・編曲家・訳詩家などの、音楽作家の団体。音楽著作権の擁護と発展のための活動、音楽作家活動の利益に資するための活動、関係団体との連絡及び協力など目的を達成するための活動を行っている。具体的には、「Culture First」運動や私的録音録画補償金の見直し働きかけ、著作権および著作隣接権の保護期間延長の働きかけなど。


その他の団体


詩と音楽の会、全日本音楽著作家協会、全日本児童音楽協会、日本音楽著作家連合、日本現代音楽協会公益社団法人 日本作曲家協会一般社団法人 日本作曲家協議会一般社団法人 日本作詩家協会一般社団法人 日本作編曲家協会、日本詩人連盟、一般社団法人 日本童謡協会、日本訳詩家協会、名古屋放送芸能家協議会、一般社団法人 日本映画俳優協会、一般社団法人 日本喜劇人協会、一般社団法人 日本芸能マネージメント事業者協会公益社団法人 日本劇団協議会日本新劇製作者協会日本新劇俳優協会一般社団法人 日本人形劇人協会公益社団法人 日本俳優協会協同組合 日本俳優連合一般社団法人 日本モデルエージェンシー協会、一般社団法人 人形浄瑠璃文楽座むつみ会、公益社団法人 能楽協会、大阪三曲協会、一般社団法人 関西常磐津協会一般社団法人 義太夫協会清元協会、特定非営利活動法人 筑前琵琶連合会、公益社団法人 当道音楽会常磐津協会一般社団法人 長唄協会名古屋邦楽協会公益社団法人 日本三曲協会、日本琵琶楽協会、公益社団法人 日本演奏連盟公益社団法人 日本オーケストラ連盟日本音楽家ユニオン一般社団法人 日本歌手協会一般社団法人 日本シンセサイザー・プログラマー協会特定非営利活動法人 日本青少年音楽芸能協会パブリックインサード会特定非営利活動法人 レコーディング・ミュージシャンズ・アソシエイション・オブ・ジャパン東京バレエ協議会一般社団法人 全日本児童舞踊協会公益社団法人 日本バレエ協会公益社団法人 日本舞踊協会日本フラメンコ協会公益社団法人 上方落語協会、関西演芸協会、一般社団法人 関西芸能親和会、講談協会、太神楽曲芸協会東京演芸協会公益社団法人 日本奇術協会日本司会芸能協会ボーイズバラエティ協会一般社団法人 漫才協会一般社団法人 落語協会公益社団法人 落語芸術協会公益社団法人 浪曲親友協会一般社団法人 沖縄県芸能関連協議会公益社団法人 日本照明家協会日本舞台監督協会、日本民俗芸能協会、日本浪曲協会日本ミキサー協会日本児童・青少年演劇劇団協同組合、沖縄芸能実演家の会。

……関係団体や関係者の膨大さに、頭がクラクラします。


「私的録音補償金管理協会(SARAH)」ってなに?



私的録音録画補償金制度のうち、「録音」側を担当する文化庁指定団体。ユーザーが録音機器と記録媒体を購入したら、補償金をメーカーから徴収し、管理手数料や共通目的基金を除いた分を、著作権者を代表する団体(日本音楽著作権協会:JASRAC)に36%、実演家を代表する団体(日本芸能実演家団体協議会)に32%、レコード製作者を代表する団体(日本レコード協会:RIAJ)に32%配分する役割を担っている。この3団体から先が、どういう団体にどのくらいの割合で分配されているかは不明。


「私的録画補償金管理協会(SARVH)」ってなに?


SARVH [一般社団法人 私的録画補償金管理協会]

私的録音録画補償金制度のうち、「録画」側を担当する文化庁指定団体。ユーザーが録画機器と記録媒体を購入したら、補償金をメーカーから徴収し、管理手数料や共通目的基金を除いた分を、日本レコード協会、日本音楽出版社協会、日本芸能実演家団体協議会、日本音楽事業者協会と、私的録画著作権者協議会の会員である日本民間放送連盟(※Culture First推進団体ではない)、日本放送協会(※Culture First推進団体ではない)、全日本テレビ番組製作社連盟、日本映画製作者連盟、日本動画協会、日本映像ソフト協会、日本映画製作者協会、日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会、日本文藝家協会、日本音楽著作権協会(JASRAC)に配分する役割を担っている。この15団体から先が、どういう団体にどのくらいの割合で分配されているかは不明。

私的録画補償金管理協会のウェブサイトには「全日本テレビ番組製作"者"連盟」と書かれているが、"社"が正しいものと思われる。

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