出版(紙・電子書籍)関連の気になるニュースまとめ #73(2013年7月1日~2013年7月7日)

nexus7のkobo

出版(紙・電子問わず)関連でボクが気になった先週のニュースについて、コメントをつけてまとめていきます。先週は、東京国際ブックフェアと国際電子出版EXPOが話題になっていました。

TPP交渉、著作権保護期間延長や非親告罪化を阻止するのは国民の関心 -INTERNET Watch ※2013年7月1日

thinkTPPIP(TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム)の緊急シンポジウムレポートです。「著作権」が強力になることで締め付けられるのは一般消費者なんですよね。著作権者の一部は、むしろこれを期に保護期間延長や非親告罪化を望んでいる(例えば作家の三田誠広さんは、保護期間延長賛成派)というのが難しいところです。反対なら声をあげるしかない。なお、クリエイティブ・コモンズの公式ブログにも報告があります。

【告知】出版に関する全出版社統一ルール – 岡田斗司夫なう。 ※2013年7月1日

岡田斗司夫さんの告知、とくに「オリジナル版元の優先権」と「自由出版の条件」が興味深い。要するに、「電子出版権が独占できるのは、紙の出版から6ヶ月間だけです」という宣言を行ったわけです。版元は紙の出版と同時(もしくは1ヶ月以内)に電子版を出さなければ、独占権が消滅して他の希望する出版社へ権利が移行してしまいます。紙の出版権は法律で3年間(以降、契約が自動継続になっていなければ消滅)と定められていますが、「電子版はもっと短くていいだろう」という岡田さんの主張でもあるのかな、と。

BookLive、ブラウザビューワをリリース – ITmedia eBook USER ※2013年7月1日

ボイジャーの「BinB」ビューワを導入して、ブラウザでも閲覧できるようになりました。これで、Macにも対応です。ただ、文字モノや雑誌を中心に、まだ非対応の作品が結構あります。BinBはXMDFにも対応しているはずですが、BookLive!ではまだ見られないということは、技術的な問題ではなく契約上の問題か戦略的な判断か。

[削除および修正:直接XMDFが表示できるわけではなく、電書協が主催した「電子書籍交換フォーマット標準化プロジェクト」の成果を利用して.bookに変換すれば表示可能ということだったようです。お詫びして訂正いたします。]

【山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ】PFU「ScanSnap SV600」(前編) ~本を見開きのまま読み取れるオーバーヘッド方式のスキャナ ※2013年7月2日

さすがの山口さんレビュー。最後の写真「今回試した本の一部」の山をみて、思わず吹き出しました。自動補正が効かない場合の手動補正が非常に手間みたいです。スキャンが12分、補正処理に1時間というのは辛い。

電子出版ビジネスの現状と、電子書籍の未来は? ~OnDeck編集長 井芹 昌信氏に聞く -INTERNET Watch ※2013年7月2日

OnDeck編集長のインタビュー。業界全体の流れと今後をざっくり把握するのはいい記事だと思うのですが、1点だけ非常に気になるところが。

OnDeckの調査では電子書籍のシェア1位がKindle、2位がiBookstore

いや確かにそうなんですけど、それって業界人向けメルマガ「OnDeckWeekly」読者を対象としたアンケートなので、めっちゃ母集団が偏ってるんですが。例えば、あっという間に200万ダウンロードを突破した「LINEマンガ」や、「ニコニコ静画(電子書籍)」みたいなサービスは、「OnDeckWeekly」読者の利用率は一般層に比べて極端に低いと思うのですよ。

NewsLetter Vol.11-1 AEBS 電子出版制作・流通協議会 ※2013年7月2日

2013年2月4日の講演「2013年の日本の電子出版を考える 端末とストアの比較から」の書き起こし。講師は朝日新聞社デジタル事業本部ビジネス企画開発セクションの林智彦さん。「Reader Store」がこてんぱんにされています。

BCCKS / ブックス – インポートして本をつくる ※2013年7月2日

ブラウザ上で高度な編集ツールが無料で使えるBCCKSに新機能、EPUBインポートが追加されました。同じようなサービスをやっているパブーでは、プロ版(月額525円)で提供されている機能です。

昨年度の電子書籍端末、出荷台数42%増 首位キンドルをコボ猛追 (1/2ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ) ※2013年7月3日

朝日新聞デジタル:電子書籍端末、出荷伸び悩む 昨年度47万台 – 経済・マネー ※2013年7月3日

タイトルの違いによって印象が異なる好例。MM総研の発表している「出荷台数」そのものが、正直眉唾ものだと思うのですが……。Kindle Paperwhiteとkobo touchやkobo gloの台数が拮抗してるなんて、ぶっちゃけあり得ない(断定)。

“中の人”も楽しんでいる「GALAPAGOS STORE」の今とこれから -INTERNET Watch ※2013年7月3日

特別企画枠の記事。「GALAPAGOS Labs(ガラパゴス ラボ)」って知らなかった。ブログがあるので購読しようと思ったら、RSS配信していないのね……。

東京国際ブックフェアリポート:角川会長「改善ではなくイノベーションを」――図書館向け電子書籍貸し出しサービス構想など明かす – ITmedia eBook USER ※2013年7月3日

角川歴彦会長の基調講演レポート。講談社・紀伊國屋書店と提携して図書館向けの電子書籍貸し出しサービスを推進するという宣言が、各方面にいろいろ波紋を呼んでいます。大日本印刷グループの図書館流通センター(TRC)はどうなるんだろう。

東京国際ブックフェア動画リポート:BookLive、かざして検索できる「BookLive!カメラ(仮)」を出展 – ITmedia eBook USER ※2013年7月3日

この、かざして検索できるBookLive!カメラは、かなり興味深かったです。バーコードを撮影して検索するアプリはいろんなところから出てますけど、これは画像認識技術との組み合わせなんで根本的に意味合いが違います。しかも、書影だけではなく、ランドマークなどから関連書籍も検索できるというのが面白い。いわゆる「Serendipity(セレンディピティ=探しているものとは別の価値あるものを見つけ出す能力)」を具現化するツールだと思います。

BookLive!の電子書籍プリペイドカード、全国のセブン-イレブンで販売 -INTERNET Watch ※2013年7月3日

いままでミニストップだけだったので、取り扱い店舗が一気に増えますね。AmazonギフトカードやiTunesカードと一緒に並んでます。頑張るなあ。

凸版、精度99.99%以上で紙の文献を全文データ化するシステムを開発 | クリエイティブ | マイナビニュース ※2013年7月3日

凸版印刷のブースに出ていたのは気がついていたのですが、「なんだ、ただのOCRか」みたいな感じでスルーしちゃってました。精度99.99%って、凄い。

乾電池駆動の電子ペーパー端末「honto pocket」、ハルヒ11作品入りで書店販売? -INTERNET Watch ※2013年7月4日

東芝、凸版印刷、大日本印刷、パピレス、廣済堂ブースのレポート。東芝の「蒼姫ラピス」はテンション上がりました。大日本印刷の「honto pocket」は、”1000円以下の電子ペーパー端末”として話題になった「txtr Beagle」だったようです。

それにしても「オープン本棚プロジェクト」ェ……。

楽天、国内発売未定の高解像度電子ペーパー搭載モデル「kobo aura HD」展示 -INTERNET Watch ※2013年7月4日

楽天kobo 電子書籍端末の伸び悩みは「計画値が間違っていた」 ブックフェアで新端末展示 – 本のニュース | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト ※2013年7月5日

タイトルの違いによって印象が異なる好例その2。朝日新聞の方は容赦ない感じ。kobo aura HD や kobo arc は参考出品で、日本への投入予定については発表がなかったのがガッカリ。

東京国際ブックフェアリポート:「編集者は原点回帰せよ」――電子出版の未来のために、今必要なこと – ITmedia eBook USER ※2013年7月5日

インプレスホールディングス取締役・北川雅洋氏、アマゾンジャパンkindleコンテンツ事業部長・友田雄介氏、PHP研究所デジタル事業推進部チーフディレクター・太田智一氏、「Gene Mapper」の藤井太洋氏によるセミナーのレポート。Amazonはフェアに出展していないのと、友田氏がこうやって表舞台でしゃべることは今まであまりなかったと思うので、けっこう貴重なセミナーだったと思います。超満員。ちなみにボクの書いたレポートはこちらこちら

アマゾンが特許取得:電子書籍を「DVD特典」のように拡張 « WIRED.jp ※2013年7月4日

Amazonがどんどん先へ走っていってしまう……独占されたら面白くないので、ライバル各社様も頑張ってください。

文化庁、「デジタル化資料等を活用した著作物の流通と利用の円滑化に関する実証実験事業」の報告書2点を公開 | カレントアウェアネス・ポータル ※2013年7月4日

エロエロ草紙」で話題になった、文化庁 eBooks プロジェクトなどの報告書が公開されました。まだ中身、チェックできていない……。

BookLive(ブックライブ)売上12億円、純損失40億円の赤字。赤字だと思っていたけど、ここまでとは。。 | サイプロ ~とあるサイトプロデューサーのブログ~ ※2013年7月5日

「よくわからん」だらけの記事ですが、「売上12億円、純損失40億円」というインパクトの大きさで話題になっていました。販管費が31億だから、広告宣伝費が大きいのでしょう。国内では比較的後発組で、ゼロ基盤からスタートしてますから、会員を増やすためかなり多めに広告宣伝費をかけているということでしょう。売上原価が18億円ですから、今期売上が40億円くらいまでいけば、来期は広告宣伝費を減らして黒字化できるんじゃないかな。

なお、凸版印刷のIR情報に2013年3月期決算説明会質疑応答が載っていて、「現在BookLive!は会員数は60万人程度」という数字が出ています。ちなみに角川グループの「BOOK☆WALKER」は4月にアプリ100万ダウンロード突破、後発の「LINEマンガ」は200万ダウンロード突破しています。まあ、アプリはダウンロードしただけで使わない可能性もありますから、アクティブ会員がどれだけいるかが重要ではありますが。

電子書籍ストア BookLive!

国内の電子書店では、配信タイトル数や対応デバイスの多さなど、わりと万人におすすめしやすいところだと思っています。飛び抜けた特徴がないところが弱みなのかも。

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Lideoは母親にプレゼントしました。プリペイドカード5000円分の番号入力だけこちらでやって、宅急便で送ってあとはお任せ状態なのですが、ちゃんと問題なく使えているようです。

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