2013年7月7日日曜日

山田順さんによる国際電子出版EXPOセミナー「電子書籍、プラットフォームはそろった!ところで読者の本音は?」まとめ

山田順氏

「第17回国際電子出版EXPO」の3日目に、eBooks専門セミナー「電子出版の未来」が行われました。仲俣暁生さんと山田順さんの2人分をまとめた原稿を書いたのですが、山田順さんのパートはここで公開しておきます。

寄稿用に書いたので文体が「です・ます」調ではなく「だ・である」調ですし、なにより一切ボクの意見は挟んでいないので、普段のブログ記事とちょいと雰囲気が違いますがご了承下さい。




データから見る電子書籍市場の現状


後半はジャーナリスト/株式会社メディアタブレットの山田順氏から、「電子書籍、プラットフォームはそろった!ところで読者の本音は?」というテーマでプレゼンテーションが行われた。


山田氏はまず、電子出版市場の現状について、さまざまなデータを引用して解説を行った。プレイヤーは出揃ったが市場はほとんど立ち上がっておらず、儲かったのは勉強会やセミナーをやっているところだけではないかと指摘した。日本の出版市場は毎年のように縮小し続けているが、落ち込んだ理由はただ1つ「人口減社会」だという。

光文社で長年編集者をやっていた経験を生かし、2010年に退社してフリーランスになってから自身でも電子出版を試してみたが、印税は半年で数千円とかせいぜい数万円と、とてもじゃないがかけた労力に見合うものではないそうだ。例えば、電子書籍に力を入れている講談社でも、売上比率はたったの5%に過ぎないのだから、「儲かっている」といえるところはほとんどないのではないかという。

アメリカは電子の売上比率が23%程度にまで拡大しているが、そろそろ踊り場に入っているという。特に、タブレットが普及したいま、山田氏は「電子書籍専用端末の時代はもう終わった」とみなしているそうだ。電子書籍のベストセラーはライトフィクションばかりで、価格も0.99ドルだらけだと指摘する。ただ、かつて心配されていた「電子版が紙版を駆逐する」という報道は、ただの誇張に過ぎなかったという。


日本で電子書籍を読んでいる読者は?


山田氏は、電子書籍の読者に関して最も大切なことは、「偏差値」だという。さきほどの仲俣氏の話はインテリ向けの「本を買っている人」のことだが、山田氏の話は「本に興味のない人」のこと、つまり偏差値が段違いという。これまで日本の電子書籍市場を牽引してきたのは、フィーチャーフォンでエロやボーイズラブなどの漫画を読む若い読者層だと指摘する。全くアメリカの市場と異なるので、一緒には論じられないとのことだ。


もう1つ大切なことは、「電子書籍はネットコンテンツだ」という。「ウェブはバカと暇人のもの」という中川淳一郎氏の言葉や、「日本では最下層の人間が全部ネットにぶら下がっている」というドワンゴ会長川上量生氏の言葉を引用し、この現実を頭に叩きこまないと電子書籍は売れないと断定する。世の中には本を1ヶ月間で1冊も読まない人が4割もいるのだから、実際のところ人は本なんかほとんど読まないのだと指摘する。

フィーチャーフォンで売れていたのはエロやボーイズラブを中心とした電子コミックだが、スマートフォンへの移行が進む中で売れ行きに陰りが見えてきたという。アップルのコンテンツ審査基準が厳しいため、過激な表現のコミックを売るのが難しくなっているそうだ。

こういった市場や読者と今後どう向き合っていけばいいか?という結論は、スマートフォンでどう売るか?だけだと山田氏は断言する。電子書籍市場がそれほど伸びることはないし、価格はますます下がっていく。セルフパブリッシングが進展することで、コンテンツの質は確実に劣化し、玉石混淆、プロとアマが共存するような形になっていくだろうと結んだ。




山田順さんご自身のブログにも、ご自身でまとめたエントリーを載せてらっしゃいますので、よかったらそちらもご参照下さい。


出版・新聞 絶望未来
東洋経済新報社 (2013-05-02)
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山田順さんの直近の著書、セミナーを聞く前に読みました。いろいろ思うところはありますが、書評は別エントリーで。

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