2012年8月11日土曜日

無断転載って何がいけないの?著作者はどうすればいいの?

(※写真:写真素材 足成より)

夏休みだからなのか、ここ最近タイムラインで無断転載に関する話題をよく目にします。


昔からよくある問題なので、事例を挙げていくとキリがないのですが、よくもまあ次から次へといろいろな問題が起こるものだとため息が出ます。

著作権法が複雑で難しいから、何が問題なのかを理解できていないケースもあるでしょう。親告罪なので、どういった行為が問題になるかは結局のところ著作者側の心情次第というのも、問題を複雑にしている要因でしょう。

このエントリーでは

  • そもそも無断転載って何がいけないのか?
  • どういう行為なら無断転載にはならないのか?
  • 逆に、著作者はどうすればいいのか?

という3つのテーマについて考えていきたいと思います。



まず前提となる話。アナログの時代、ネットワークの無い時代は、複製や流通には膨大なコストや時間が必要でした。近年のデジタル化によって、作品の複製が容易になりました。ネットワーク化によって、その複製物を拡散するのも容易になりました。コピーや送信は、それこそマウスのクリック1つでできてしまいます。そして、一度複製の拡散が始まったら、それを止めるのはほぼ不可能です。でも、容易になったからといって、その行為が許容されているわけではないのです。


そもそも無断転載って何がいけないのか?


簡単に言えば、著作者の権利を侵害する行為だからです。判りやすくするために、「無断」と「転載」に分解してみます。


「無断」とは?


「無断」というのは、「著作者に許可を得ていない」という意味です。

「無断」ではないので問題にならないケース
  • 著作者自身があらかじめ「使っていいですよ」と許諾をしている
  • 著作者に「使っていいですか?」と尋ねて「いいですよ」と回答をもらっている

著作者に許可が取れないけど、問題にならないケース
  • パブリック・ドメイン(著作権が消滅している)

「無断」なので問題になるケース
  • 一方的に「使わせて下さい」と依頼だけ投げて、回答をもらっていない
  • 何も言わずに勝手に使う


「転載」とは?


「転載」というのは、元々ある場所から別の場所へ移して載せることです。例えばpixivに載っている画像をダウンロードし、Twitpicやブログなどにアップロードしたら「転載」です。


何がいけないの?


著作者自身が「転載」するのであれば、もちろん問題ありません。が、他人が「無断」で「転載」すると、著作者の権利である複製権・公衆送信権といった財産権、氏名表示権などの著作者人格権を侵害することになります。

著作者には、その侵害行為を差止請求する権利と、侵害者に損害賠償請求(民事)する権利があります。また、侵害者には懲役や罰金という刑罰が与えられます。

つまり、無断転載は犯罪行為となる可能性があるのです。

ではなぜ著作者には、そういった権利が与えられているのでしょう?簡単に言えば、著作者の利益と名誉を守るためです。これが法律で定められた著作権(財産権・著作者人格権)です。

作品の複製物を販売することが著作者及びその協力者の収入になっている場合、無断転載という行為は機会損失になります。著作者及びその協力者の収入を奪ってしまうわけです。

では仮に、pixivなどに著作者自身が作品をアップロードして、誰でも無料で見られる状態にある場合はどうでしょうか? この場合、無断転載をされても財産権は侵害されませんが、著作者人格権が侵害されます。つまり、著作者に以下のような不利益があるわけです。

  • 著作者と作品が切り離されてしまい、誰の作品か判らなくなってしまう
  • 著作者の知らない所で、著作者にとって嫌な使い方をされてしまう可能性がある
  • 著作者を偽られてしまう可能性がある

こういった不利益を防ぐために、著作権法があるのです。


どういう行為なら無断転載にはならないのか?


「無断」じゃなければ問題にはならない


これは先ほども出てきた話なので、もう少し具体例を挙げてみます。

  • 著作者自身があらかじめ「使っていいですよ」と許諾をしている

例えばこちらの素敵画像。

初音ミクGraphics -kaleidoscope-

これはAmazonアソシエイト・プログラムという、著作者が事前に使用許諾した範疇で、Amazonが用意した仕組みによって貼っている画像なので、問題が無いのです。



  • 著作者に「使っていいですか?」と尋ねて「いいですよ」と回答をもらっている作品

これは判りやすいですね。

そして、あまりよくないパターンとして

  • 勝手に使われた後で、著作者が事後承諾を出す
  • 勝手に使われているのを、著作者が黙認している

が挙げられます。これがなぜ「あまりよくない」かというと、著作者が事後承諾や黙認するかどうかは、使う側が勝手に判断することではないからです。同じ作品を、Aさんには許可しても、Bさんには許可しないという場合も充分にあり得りえます。事後承諾・黙認は、たまたま運良く犯罪にならなかっただけなのです。

例えるなら、いきなり殴りつけた後に謝ったら許してもらえたというだけの話です。


自分のパソコンへダウンロードしちゃいけないの?


これは、著作権法第30条(私的使用のための複製)にあたるので、法的には問題ありません。ただし、「違法にアップロードされた有償の音楽・映像ファイル」をダウンロードするのは違法です。

ただ、自分のパソコンへダウンロードした時点で、アップロードされている場所に書かれていた、作品以外の付帯情報が無くなってしまうということに注意する必要があります。パソコンに保存してあるファイルが、「これ誰の作品だろう……?」と思い出せない場合ってありますよね。

例えばこういうことです。下図は、宮比のん(non)さんpixivにアップロードしている作品を、事前に許諾を頂いてスクリーンショットを撮り、キャプションを付けた後に転載しています。


作品(この場合JPEGファイル)だけを自分のパソコンにダウンロードすると、ここには表示されている著作者の名前、作品がアップされた日時、作品に使用したツール、作品のタイトル、著作者によるコメントと切り離されてしまいます。

この状態から、何も付帯情報を付けずに「転載」すると、オリジナル作品の元へ辿ることができなくなってしまうというわけです。


じゃあ、素敵な作品をどうやって友だちへ紹介すればいいの?


ブログであれば、著作者自身がアップロードした場所へのリンクを貼りましょう。先ほどの宮比のん(non)さんの「猫又さん」であれば、以下のURLです。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=29190408

または、アップロードしている場所が、オフィシャルで用意している仕組みを使いましょう。pixivであれば、作品の右下に「シェア」という欄があります。


[貼り付け]のソースコードを貼ると、下図のようにサムネイル画像が表示される形になります。これはオフィシャルで用意している仕組みなので、問題が無いのです。



また、作品の上部には、ソーシャル・ネットワークの共有ボタンがあります。Twitter、Facebook、pixivスタックフィード、mixi、はてなブックマークに対応しています。


これもオフィシャルで用意している仕組みなので、問題が無いのです。

オフィシャルでボタンが用意されていない場所(例えばpixivであれば、Google+やtumblrやPinterestなど)への共有は、先ほどの[シェア]の[この作品へのリンク]を使うのがいいでしょう。


そのやり方は、作品の紹介ではありません


自分のパソコンへダウンロードしたファイルを、別の場所へアップロードするのがダメなのは先ほど説明した通りです。

アップロードされた場所ではなく、画像へ直接リンクを貼る場合はどうでしょうか? これも実質的には転載と変わらない行為です。アップロードされた場所を辿ることができなくなる可能性が高く、作品以外に付帯する情報が判らなくなるからです。「無断転載」のように犯罪ではありませんが、著作者と作品を切り離してしまうという意味では同じです。

例えばpivixの場合、作品を右クリックして「画像URLをコピー」すると、作品がアップロードされている場所と、画像が格納されている場所が異なることが判ると思います。


宮比のん(non)さんの「猫又さん」の画像URLは以下のとおりです。
http://i1.pixiv.net/img75/img/nonsteps/29190408_m.jpg

作品がアップロードされている場所は以下の通りです。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=29190408

画像URLを/ごとに削っていっても、「This Page is Not Found :(」というエラーが表示されるだけです。つまり、画像URLを使ってブログやソーシャル・ネットワークで共有してしまうと、転載と同様「著作者と作品が切り離されてしまい、誰の作品か判らなくなってしまう」のです。


逆に、著作者はどうすればいいのか?


前述のとおり、作品を自分のパソコンにダウンロードして楽しむ行為は、私的使用のための複製として認められています。つまり、作品をインターネットにアップロードすると、作品に直接刻み込まれた情報以外は、必然的に切り離されてしまうのです。

「著作者と作品が切り離されてしまい、誰の作品か判らなくなってしまう」のを防ぐには、作品に自分の名前やウェブサイト(作品の公開場所)を直接刻み込んでおくことです。そうすれば、少なくとも「これ誰の作品だろう……?」ということは無くなります。

もちろんそれでも、作品に刻み込まれた署名などを消して悪用する行為は防げません。悪用された時のために、作品の著作者であることを証明できるようにしておきましょう。例えば、インターネットにアップロードするファイルは、オリジナルファイルより縮小(劣化)しておくというのは一つの手です。

あとは、インターネットにアップロードするとしても、オープンな場所ではなく、限られた人しか見られない場所にするというのも手です。例えばpixivの場合、公開範囲を「マイピクのみ」にするオプションなどが設けられています。友だちへ見せたくても、知らない人にTwitterやFacebookなどで紹介されることを望まないのであれば、そういう手段を使いましょう。それでも「友だちに裏切られる」可能性は残ります。

絶対に悪用されたくないのであれば、インターネットにはアップロードしないことです。



最初にも書きましたが、デジタル化・ネットワーク化によって、作品の複製や拡散が容易になりました。一度複製の拡散が始まったら、それを止めるのはほぼ不可能です。そういう時代になってしまったのだということを、ユーザーも著作者も充分に理解した上で行動をする必要があると思います。

最後に、おすすめの書籍。


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【2015.4.11追記】

本を書きました。4月24日発売。

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