2012年4月14日土曜日

【書評】津田大介さんの「動員の革命」を読んだ

タイムラインで見かけて4月4日にAmazonで予約、4月7日には既に書店へ並んでいたようです。結局4月10日に届いたのですが、奥付を見たら発行日は「4月10日」になっていました。Amazonが発行日まで待っていたのでしょうか?こういう配本のズレってよくあることですが、これだけ物流が発達しているのに「何でやねん」という気にさせられますね。まあこれは本書の内容とは関係無いのですが……。

動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ)
津田 大介
中央公論新社
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本書の内容を要約すると、昔はマスメディアを使わなければ困難だった「動員」が、ソーシャルメディアを使って容易にできるようになったというのを、様々な論拠を挙げて説明している本です。主に新書を読む読者層向けに書かれた内容で、ソーシャルメディアをバリバリ使っていて、津田さんの普段の言動もよく目にしている人には、既知の内容も多いかも知れません。

ただ、日本に限らず世界のあちこちで起きている様々な社会現象を、大きなことから小さなことまでこれだけ幅広く頭に入れた上で、こうして一つの本にまとめ上げるというのは並大抵のことではないな、と思います。第3章を除くそれぞれの章で、「津田さんの主張」部分と「対談」部分があるのですが、「調べながら書く」ならボクにもできるかもしれませんが、対談部分のような会話はよほど普段から勉強していないとできないだろうなーと思います。

見かけにだまされるな、奴は相当「できる」男だ。



目次の大見出しだけ引用します。
第1章 ソーシャルメディア×革命
「アラブの春」を起こした真の力とは
第1章 対話編 モーリー・ロバートソン×津田大介
ソーシャルメディアで世界は変わったか
第2章 ソーシャルメディア×情報発信
ムーブメントをおこすために必要なこと
第2章 対話編 宇川直宏×津田大介
ソーシャルメディア時代のスーパースターとは
第3章 ソーシャルメディア×震災
東北復興のためにできること
第4章 ソーシャルメディア×未来
新しいマネタイズの方法とは?
第4章 対話編 家入一真×津田大介
ソーシャルメディアの力でマネタイズする
特別鼎談 中沢新一×いとうせいこう×津田大介
「動員」で世の中を変えていこう
巻末の鼎談は主に「デモ」についての話なので、第3章の対談が無い分がこれなのかもしれません。この鼎談だけはちょっと雰囲気が違うので、途中に挟み込まれていたらかなり違和感があったかも。

さて、本書を読んでいて一つ、ボクの中で納得ができたことがあります。津田さんの自由報道協会退会理由です。

江川紹子さんのように何か大きなきっかけがあったというわけではなく、印象としてはスッと距離を置くような抜け方なんですね。応援しているとも言ってますし、寄付とか別の形でサポートしようと思うとも言っている。そんなこと言うなら、抜ける必要は無いのでは?というのが疑問だったんです。

第1章(P20)より引用。
現場で報道に携わるプロデューサーや記者と話すなかでひしひしと感じたのは「(中略)今後のわれわれの仕事は、ネットに流出した情報を二次的に検証していくということに変わっていくのかもしれない」という彼らの強烈な危機意識でした。

第2章(P128)より引用。
不確かな情報の検証はプロにしかできないということです。ネット上に上げられる不確かな情報や自ら調査しなければならない情報は、訓練を受けた新聞記者やジャーナリストや、学者、弁護士など専門知識を持った人が検証しなければいけない。それはマスメディアの仕事ということです。

つまり津田さんは、不確かな情報を垂れ流す自由報道協会の面々とは喧嘩はしないけど距離を置くことにし、不確かな情報の検証をしたり、検証された情報に新たな視点を加えたり、埋もれた重要な情報を拾い上げ再伝播させたりする側に回ろうとしているのではないか、というのがボクの理解です。勝手な想像なので、間違っていたらごめんなさい。

速報性と信ぴょう性を両立させるのは難しいことです。誰もが情報発信できるようになった今、速報性に「メディア」の価値は薄れてきていると言っていいでしょう。むしろ、その情報が本当に正しいのか、別の視点から考えたらどうなるか、少し時間が経ったことで忘れられている重要な情報はないか、大量の情報の中から必要とされるモノを拾い上げ整理分類して噛み砕いて発信するといった役割こそが、今後重要になってくるでしょう。そのためには、自由報道協会の中にいたらダメだという判断をした、ということなのでしょう。

刺激的な情報は拡散しやすいけど、それを打ち消す情報はなかなか広がりません。それはソーシャルメディアが悪いのではなく、刺激的な情報の方が人々の印象に残りやすいからです。打ち消す情報も一生懸命発信されていますが、刺激的な第一報のツイート数やブックマーク数に比べると、びっくりするくらい広がらないんですね。つまり、一度広がってしまった誤解は、打ち消すのに多大な労力を要します。

だからボクは、ジャーナリストを名乗る情報のプロが、「オレの言うことを信用するな」と断っているというのを免罪符にして、不確かな情報を拡散するやり方には賛同できないし、プロだからこそ最新の注意を払って発信しなければならないし、間違えた時は発信するときの数倍の労力を使って訂正しなければならない、と思うのです。意図的なデマなんか、もってのほかです。

津田さんが自由報道協会と距離を置いたのは、ボクは正解だと思います。自由報道協会は、震災前まではまだ、ある程度評価をしていたのですが、震災後は酷い。あまりにも酷い。あれではジャーナリストではなく、ただの運動家・扇動家です。もしくはエンターテナーです。だからボクはもう自由報道協会は無視しています。以前にも書きましたが、刺激的な行いをして耳目を集める「炎上マーケティング」への対処方法は、無視することだからです。

でも、そこから距離を置いた津田さんの今後には、注目していたいと思います。

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