2012年3月6日火曜日

【書評】アイザック・アシモフさんの「われはロボット[決定版]」を読んだ。

有名な「ロボット工学三原則」を生み出したアシモフの代表作。SFの古典です。最初の「ロビイ」が書かれてから、もう70年以上経っているんですね。実はいままで、ちゃんと読んだことがありませんでした。

われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)
アイザック・アシモフ
早川書房
売り上げランキング: 24099
ロボット工学の三原則

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
――『ロボット工学ハンドブック』 第五十六版 西暦2058年
この作品に登場するロボットは、この三原則を行動規範としています。DNAのように刻まれた、ロボットのアイデンティティとなる原則です。ロボットの本能と言ってもいいでしょう。

その原則(すなわちロボット)を人間が信用しないために発生する悲喜劇や、原則に逆らえないロボットが原則とは矛盾する命令に対しおかしな行動をとってしまう様などを描いた短編集です。


70年以上経っている作品だというのに、その思想は全く古くないのに驚かされます。現代においてもまだ、完全に自律して行動できるロボットが誕生していないというのもあると思いますが、ロボットが人間社会において軋轢を生むような状況というのがまだ無いからでしょうね。今読んでも充分に「ありえそうな未来の姿」として受け止めることができます。


例えば2話の「堂々巡り」は、人間の命令(第二条)が緩いものだったので、自分の身を守る第三条とちょうど釣り合ってしまい、同じ場所をグルグル回ってしまうという話です。これって、プログラムの永久ループバグを予見していると思うんですね。初出がちょうど70年前の1942年の話ですよ。非常におもしろい。


このように、前半の話はまだ未熟なロボットが、人間の命令に背いているように見えるおかしな行動をとるのはなぜかを描いています。原因を探っていくと、どれもみな三原則に行き当たるんですね。

人間の場合、マズローの欲求5段階説に従うと、本能的なものから順に「命を守ること」・「安全に暮らすこと」・「集団に帰属したい」・「愛されたい、認められたい」・「自己実現したい」というのが行動規範となります。

ところがロボット三原則は、最優先事項が「人間に危害を加えてはならない」なので、そこに背く行動ができないというところから様々なトラブルが発生します。

だんだんロボットの知性が進歩していくので、最初のうちは矛盾にぶち当たったときには壊れたような行動になっていた(実際、壊れてしまった話もある)のが、後半の話ではロボットの知性が人間を越えた世界になっています。

最終話「災厄のとき」ではついに、ロボット(というか人工知能のコンピュータ)が人類全体の幸福を考えて世の中を動かすようになっています。第一条の「人間に危害を加えてはならない」を極めると、人類全体を考えねばならないという所にまで行き着くようです。

余談ですが、コンピュータが世界をコントロールし、人間がコンピュータに従って行動する世界というと、ボクは「火の鳥未来編」を思い出します。この「災厄のとき」は初出が1950年なので、恐らく手塚治虫さんも影響を受けたんでしょうね。

ロボット工学三原則は、要約すると「安全」・「便利」・「頑丈」となり、ロボットだけではなく道具や機械全般に当てはまる設計思想になる、という指摘が昔からあったそうです。人間社会において、役に立つ道具として認められるために必要な要素だったということですよね。よく考えられた、凄い原則だと思います。

凄い原則だからこそ、実際にロボットの研究開発を行なっている人たちが、必ず念頭に置くような存在になっているのでしょうね。巻末の解説で瀬名秀明さんが「呪縛」と表現しているのが、尊敬の現れでもあり、避けて通れないという諦念にも感じられました。

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