2012年2月15日水曜日

Gumroad の問題点についてもう少し掘り下げてみました。

昨日のエントリーでは速報性を重視して、海賊版という形で真っ先に被害を受ける可能性のある "著作権者" の視点から危険性を挙げました。しかし、問題点はそれ以外にもたくさんあります。
  1. コンテンツを販売する立場
  2. コンテンツを購入する立場
  3. サービスを提供する Gumroad 自身

今回は、この3つの立場で考えてみることにします。






1. コンテンツを販売する立場


まずそもそも、Gumroad という会社が信用できるか?という問題があります。これはスタートアップには必ずついて回る問題ですが、この会社には実績がありません。個人情報やPayPalのアドレスを教えてしまって、悪用されないかという心配をしておく必要はあるでしょう。


次に、販売するコンテンツの問題です。ITmediaの記事では同人誌の販売を奨励していましたが、それが完全オリジナルの作品であれば著作権の問題はありません。でも、その内容は規約に違反していませんか?試しに登録した方は既に大勢いらっしゃるようですが、例えばわいせつなコンテンツは禁止されています。


  • promotes racism, bigotry, hatred or physical harm of any kind against any group or individual;
  • is intended to or tends to harass, annoy, threaten or intimidate any other Users of the Website or Service;
  • is defamatory, inaccurate, abusive, obscene, profane, child pornographic, offensive, obscene or otherwise objectionable;
  • harmful to minors in any way;
  • contains others’ copyrighted content (e.g., music, movies, videos, photographs, images, software, etc.) without obtaining permission first;
  • contains video, audio photographs, or images of another person without his or her permission (or in the case of a minor, the minor’s legal guardian);
  • promotes or enables illegal or unlawful activities, such as instructions on how to make or buy illegal weapons or drugs, violate someone’s privacy, harm or harass another person, obtain others’ identity information, create or disseminate computer viruses, or circumvent copy-protect devices;
  • intended to defraud, swindle or deceive other Users of the Service;
  • contains viruses, time bombs, Trojan horses, cancelbots, worms or other harmful, or disruptive codes, components or devices;
  • promotes or solicits involvement in or support of a political platform, religion, cult, or sect;
  • disseminates another person’s personal information without his or her permission, or collects or solicits another person’s personal information for commercial or unlawful purposes;
  • is off-topic, meaningless, or otherwise intended to annoy or interfere with others’ enjoyment of the Website or the Service;
  • impersonates, or otherwise misrepresents affiliation, connection or association with, any person or entity;
  • solicits gambling or engages in any gambling or similar activity;
  • uses scripts, bots or other automated technology to access or scrape content from the Website or Service;
  • uses the Website or Service for chain letter, junk mail or spam e-mails;
  • collects or solicits personal information about anyone under 18; or
  • is in any way used for or in connection with spamming, spimming, phishing, trolling, or similar activities.

これは規約7.の一部です。規約は18.まであります。多くの場合こういう規約は読み飛ばしてしまうだけと思いますが、他の多くのアメリカ企業が提供するサービスと同様、基本的には会社所在地の法律(カリフォルニア州)が適用され、著作権に関しては1998年のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)が適用されます。要するに、日本の法律ではありません

アメリカでは著作権侵害について、故意・過失が無くても罰せられる無過失責任制を取っています。非親告罪です。著作権者に許可を取っていない二次創作(二次的著作物)はアウトです。恐らく大半の同人誌は Gumroad での販売は規約違反・法律違反になるのではないでしょうか。

※参考記事
KLSアメリカ著作権制度の解説>二次的著作物に対する保護
ウィキメディア・コモンズ>二次的著作物

ちなみに、東方プロジェクトは著作権者の神主ことZUNさんが「二次創作ガイドライン」というのを設けていて、基本的には同人活動であればOKということになっていますが、Gumroad を利用した販売はダメという見解が出ていますのでご注意下さい。

既に、東方のアレンジ曲を無断で販売したり、「けいおん!」のフィギュアをデジカメで撮影したデータ(※三次元物体を撮影したものは二次的著作物です)を壁紙として販売するような事例を目撃しています。どちらもアウトです。海賊版を売ってやろうという悪意をもった利用者は論外ですが、本人が全く自覚がないまま犯罪を冒してしまう可能性も高いのです。

次に、手数料について。
What is Gumroad's cut?
Simple. We take 5% + $0.30 of each transaction. For example: If you sell a digital video for $10, we get $0.80 and $9.20 is deposited into your account.
1回の取引につき、固定で30セントと売り上げの5%が手数料となります。

ちなみに、Gumroad を使わず、直接 PayPal で取引した場合の手数料は、国内の場合固定で40円と売り上げの3.4%(海外は3.9%)です。つまり、オーダーがあったら手作業でコンテンツをメールで送る、という手間を惜しまなければ、余分な手数料を払わずに済むということです。

ちなみに PayPal のショッピングカートは、「製品とサービス」メニューの「PayPal ショッピングカート」から作成することができます。
もし膨大なオーダーが届いて手作業での送信が追いつかないなら、手数料を払って自動ダウンロード方式のサービスを利用する意味があるかもしれません。


2. コンテンツを購入する立場


続いて、購入するユーザーの立場です。こちらも Gumroad という会社が信用できるか?という問題がありますが、販売する立場より深刻度は高いです。購入時には、メールアドレスクレジットカード情報の入力が毎回必要になります。なぜか購入時には PayPal が使えないのです。

購入画面は https になっているので傍受の心配は低いと思いますが、そもそも Gumroad が信用できなければ、クレジット番号のようなクリティカルな情報は渡せません。メールアドレスも、スパム用リストに悪用される可能性があります。

次に、Gumroad の体裁を真似たフィッシングサイトに引っかかる可能性があります。Gumroad は非常にシンプルなデザインなので、真似るのも容易でしょう。Amazon などのように一度クレジットカード情報を登録すれば次回からの入力は不要であれば危険性は低いのですが、なぜか購入するごとに入力が必要になるため、毎回そっくりな詐欺サイトではないかどうかを心配しなければなりません。

次に、販売者がいつでも即座に価格を変更できるため、他者と比較して不当に高価な価格で購入させられてしまう危険性があります。

販売する立場になるのは非常に簡単なのですが、購入する立場は心理的な障壁も高く、危険性も高いのに、正直言って「よくみんな買う気になるなー」と感心します。ボクは、こんなわけのわからない会社に、クレジットカード情報は渡したくありません。


3. サービスを提供する Gumroad 自身


Gumroad がこのまま事業を継続していけるかどうかについて考えてみましょう。ボクは無理だと思います。販売する側の期待度が非常に高いのはわかるのですが、買い手の障壁が高過ぎます。買い手がいなければ、売り手も離れます。取引が行われなければ、企業として存続できません。

また、特殊な技術やノウハウを活用しているサービスではないため、簡単に真似されます。ボクは既に何件か類似サイトを見かけました。あっという間にレッドオーシャンになるでしょう。そうなれば、資本を持っていて、他に収益部門が既にあって、多くの集客も見込める既存のサービス事業主が勝ちます。

はっきり言ってこんなサービス、やろうと思えばどこの会社もすぐできたはずなんです(実際そのように言っていた方も見かけました)。それをなぜやらなかったか? 昨日のエントリーや今回のエントリーで書いたさまざまな問題点が、簡単にはクリアできないからだと思います。

さて、かつてニフティが提供していた『@pay』はご存知でしょうか? 残念ながら2007年9月20日でサービス終了していますが、開始時には「コンテンツを個人間で直接売買(決済)できる!」と非常に期待されていた記憶があります。

なぜサービスを終了してしまったのでしょう? 過去にもこの疑問を持って調べたことがあるのですが、はっきりした理由は公開されておらず、理由の考察もあまり見当たりません。 PayPal が日本語でサービス提供を始めたのが2007年3月なので、その影響というのも考えられるのですが、ちょっとしっくりきません。恐らく当時の段階で、Gumroad のようなサービスを、もっと良い形で提供することも可能だったはずです。

これはあくまでボクの想像なんですが、前回・今回のエントリーでボクが危惧したような問題が頻出してしまったのが原因ではないでしょうか? その失敗の実例があるから、どの企業も二の足を踏んでいたというところなのではないかと推察しています。真相を知っている方は、ぜひ教えて下さい。


このエントリーの続編
Gumroad とレモン市場と9つの提案
http://wildhawkfield.blogspot.com/2012/02/gumroad-8.html

[2/21追記]
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社から、キャラクターの二次創作物デジタルデータのダウンロード販売は『ダメ』という公式見解が出ました。
デジタルデータのダウンロード販売に関しまして
http://blog.piapro.jp/2012/02/post-503.html

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