【書評】小川一水さんの「フリーランチの時代」を読んだ

神保町ブックフェスティバルで、早川書房のブースにて購入。小川一水さんのサイン入りです。

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)

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小川 一水

早川書房

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小川一水さんの本は初めて読んだんですが、不思議な読後感ですね。短篇集だからでしょうか? 他の作品も読んでみたくなりました。表紙の可愛らしいイラストは橋本晋さんです。

「フリーランチの時代」

火星探査隊員が地球外生命体とランデブーする話。序盤からいきなり、ポール・ワイスの思考実験とか、超ドレクスラー型のナノマシンとか、重そうな題材がさらりと出てきてちょっと身構えてしまったけど、わりとポップで軽い感じの話でした。宇宙人がいろんなことを超越した悠久の存在という設定は、「涼宮ハルヒの憂鬱」の情報統合思念体を想起させられました。

「Live me Me.」

事故で脳死寸前だった主人公が、先端の医療技術と「シンセット」というラジコン式の人型ロボットによって、命ある存在として認められるようになったが……という話。人間とロボット、生と死の “境界” がテーマでしょうか。ラストはちょっと切なくなります。

「Slowlife in Starship」

太陽光の入力以外、外部から何の補給もなしで、半永久的に人間を生かしておける量産型の小型宇宙家屋が開発されて以来、人類はその版図を木星系にまで広げていた。火星や木星の衛星の開発に膨大な資金が注ぎ込まれる一方で、閉鎖環境維持システムとロボットに身を委ねて死ぬまで寝て暮らす人間もいる。主人公は1人乗の宇宙船で、ハウスキーパーロボットと共に、簡単な仕事を請け負いのんびりとした航行をする生活をしていた、という話。「カウボーイビバップ」とまではいかないけど、舞台設定はなかなか壮大なのですが、話は非常にポップです。灯台の修理ミッションで訪れた小惑星には……まさかアレが出てくるとは。思わず「わお」と声が出ました。アレが話題になってた頃に、SFマガジンか何かに寄稿した話でしょうかね?

「千歳の坂も」

発達した医療技術によって、不老不死になった社会の話。ついこないだ読んだ「ハーモニー」がオーバーラップしました。主人公の役回りも、延命措置を執行する厚生勤労省に勤める役人だし。

「アルワラの潮の音」

ポリネシアかどこかの、海洋民族の話。主人公のいる部族は高い武力で周辺の諸族を支配しているが、主人公は強くないため戦士として認められていない。反旗を翻した部族の制圧に、船匠として同乗したが……他の話とちょっと違ってエスニックな感じですが、やっぱりSFでした。

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