2011年9月21日水曜日

【書評】東浩紀さんの「思想地図β vol.2」を読んだ

思想地図β vol.2
思想地図β vol.2
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東浩紀 津田大介 和合亮一 藤村龍至 佐々木俊尚 竹熊健太郎 八代嘉美 猪瀬直樹 村上隆 鈴木謙介 福嶋亮大 浅子佳英 石垣のりこ 瀬名秀明 中川恵一 新津保建秀
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ツイッターでずいぶん評判が高かった東浩紀さんの巻頭言を最後まで読みましたが、Webで試し読みした時に感じた違和感は正直言って解消されませんでした。が、東さんが何を言いたいかは少し理解できたように思います。



「公共施設の放射線量測定を求める母親たちに対し、いかなる共感もなく、嘲笑だけを向ける自称『理系』の研究者たち」という言い方には、やはり反感を覚えます。研究者全員を揶揄することを意図した文章ではないのでしょうけど、ボランティアでガイガーカウンター・ミーティングを開催したりしている、菊池誠さんや野尻美保子さんなどに対し、失礼なのではないでしょうか。

ボクが違和感を覚えた「震災でぼくたちはばらばらになってしまった」という冒頭の一文は、読み進めたら東さん自身が後ほど訂正していました。「正確にはぼくは、震災前からぼくたちはばらばらだった、震災はそれを明らかにしただけだと記すべきだったのかもしれない」と。この文の方が、ボクの実感には近いです。

もっと言えば、そもそも日本人はかつて連帯していたという認識が幻想なのではないでしょうか? 団塊の世代の学生運動だって、実際には全員が熱狂的に参加していたわけではなく、冷淡な目を向けていた層も多かったという話を聞きます。

ボクたちは生まれながらにして平等ではない、なんてことは、震災があっても無くても、多くの人が実感していたことなのではないでしょうか。震災は、今後格差を更に広げていく要因の一つではあるけど、「震災があったから平等ではないことを知った」なんていう言説は、よほど今まで現実を見ていなかった、現実を知らなかったんだな、と言いたくなります。

でも、巻頭言の終盤にこんなことが書いてありました。「現場性もなければ専門性もないぼくのようないいかげんな立場の人間が」と。この災厄を前にして、ひとりの人間として、自分は何ができるだろうか?何に役立つだろうか?と思い悩んだに違いありません。考えに考え、震災特集号を出し、その本体価格の3分の1を被災地に義援金として送るという行動については、ボクは賞賛したいと思います。東さん自身が言うように、何もしないより、する方が、少しは可能性が広がるから。

[追記]
最後まで読むと、積極的な情報発信を行った科学者について記述されている八代嘉美氏の論文や、東大病院放射線治療部門の中川恵一氏インタビューも載っていて、バランスの取れた良書であると感じられました。編集者としての東さんは凄いな、と思います。

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